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炎の獣


 ムラサメとソワンの前に現れたのは、火のオオカミとそれを操ると思われる男、サリード。サリードは下種な笑みを浮かべながら大声を発した。


「さぁ、エサの時間だぜファイアーウルフ! あの女を食い殺して、下痢便にしちまいな!」


 サリードの声を聞き、ファイアーウルフは遠吠えを発してソワンに襲い掛かった。


「私が狙いなのね」


「どうする? 手を貸すか?」


「あんなの、私の敵じゃないわ」


 と言って、ソワンはファイアーウルフが接近してくるのを待った。


「ヒャハハハハハ! 大人しくエサにされるのを選んだってか?」


 立っているだけのソワンを見て、サリードは笑いながらこう言った。ファイアーウルフがソワンに飛びかかって噛みつこうとした瞬間、あっという間にファイアーウルフの体が凍り付いた。


「な……何⁉」


「あんたバカねー。相手が何もしないで突っ立ってたら、策の一つや二つあるだろうって思わないの?」


 魔力を抑えながら、ソワンはこう言った。サリードは舌打ちをし、魔力を開放したのだが、背後に回っていたムラサメがサリードの背中にネコノテストレートを放った。


「ガアッハ!」


「雑魚の相手はしたくねーんだ。とっとと倒れてくれ」


 ムラサメがそう言った後、ネコノテストレートに押されながらサリードは壁に激突した。壁にめり込んだサリードは咳き込みながら、ムラサメとソワンを見た。


「ヘッ……たった数秒でここまで追い込むとは、結構テメーらやるじゃねーか」


「俺らが強いんじゃない。お前が弱いだけだ」


「あまり調子に乗らない方がいいわよ。素直に負けを認めなさい」


 ムラサメとソワンの言葉を聞き、サリードは高笑いを始めた。


「おいおい、脳みそが腐って爆ぜたか?」


「俺ぁそこまでバカじゃねぇ! 初めてだ! ここまでこの俺をコケにする奴はよぉ!」


「コケにされるほど弱いから仕方ないじゃない」


 サリードの言葉を聞き、ムラサメとソワンは同時にため息を吐いた。その直後、サリードは大量のファイアーウルフを召喚した。


「またあの火のオオカミ?」


 ソワンが呆れる中、ムラサメは<イビルアイ>を使ってサリードを見ていた。


「どうやらあれがあいつのスキルみたいだ。<フレイムビースト>って名前で、火を使って一部の動物の姿を作れるってさ」


 ムラサメの説明を聞き、サリードは一瞬だけ驚いた表情になった。だがすぐに元に戻り、ムラサメとソワンに向かって左手の中指を刺した。


「俺の<フレイムビースト>のことを理解したのは驚いた。だが! 簡単に攻略できるほど、俺の<フレイムビースト>は優しくないぜ!」


「弱点はある。魔力を大量に消費すること。そして、作った火の動物を操るためにも魔力を大量に消費するってこと」


 と、<イビルアイ>を使いながら、ムラサメはこう言った。その直後、<フレイムビースト>によって作られた大量の火のオオカミたちが、ムラサメとソワンに襲い掛かった。


「ヒャハハハハハ! 確かに魔力は使う! だけどな、こいつらに命令しなければ、その分の魔力を使わなくていいんだよ!」


「そりゃー言われなくても理解できるっつーの」


 そう言いながら、ムラサメは迫りくる<フレイムビースト>で作られた火のオオカミを睨んだ。




 リミスは敵を倒しつつ、先に進んでいた。そんな中、強い魔力を感じた。


「何なの、この魔力?」


「ケケケ……サリードの奴と会ったようだな」


 リミスの足元で倒れている団員が、笑いながらこう言った。


「サリードって、あんたらの仲間?」


「その通りだ。あいつは火で動物を作ることができる。魔力がある限りな……」


「それがどうしたのよ? 火でできた雑魚が増えるだけで、何の役に立つの?」


 そっけないリミスの返事を聞き、団員は驚いた。


「仲間が無事じゃないのか?」


「ソワンとムラサメがそんな奴に倒されるほど弱くないわ。耳障りだから、さっさと黙って」


 と言って、リミスは倒れている団員の頭を強く踏んだ。




 ムラサメは<イビルアイ>を発動したまま、火のオオカミの攻撃をかわしていた。ソワンはクルアを振るって火のオオカミを倒しつつ、ムラサメに近付いた。


「<イビルアイ>を使っているみたいだけど、何をするつもりなの?」


「こいつらを催眠にできないか試してる。やっぱり無理みたいだ。おっと」


 ムラサメはジャンプして目の前の火のオオカミの突進をかわし、ソワンがクルアを火のオオカミの口の中に向かって突き刺した。そんな中、サリードの鎖がソワンに向かって飛んできた。


「おっと、アブねぇ!」


 ムラサメは左手に魔力を発し、サリードの鎖を手刀で叩き落した。床の上に落ちた鎖はすぐにサリードの元に戻った。


「これが奴の戦法だ。火のバケモンを大量に作って敵に襲わせ、自分は安全地帯でチクチク攻める」


「下劣な言動だから、やることも下劣ね」


「だな。どうする? あんな野郎相手に長期戦はしたくねーぞ」


「私にいい考えがあるわ」


 ソワンの言葉を聞き、ムラサメは接近してきた火のオオカミを蹴り飛ばしつつ、ソワンの口に耳を近付けた。


「それいいな。俺が囮になる」


「頼んだわよ」


 ムラサメは話を終え、サリードに向かって走り出した。


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