アイネスのルール
異世界アイネスに転生した元男のムラサメは、近くの町のリミスと言う少女の剣士によって町のギルドセンターと言う場所に連れて行かれる。事情を知った取調員によって解放されたムラサメは、すぐにリミスにナンパをした。だが、ナンパは失敗して機嫌を損ねたリミスはムラサメを斬ろうと剣を抜いた。だが、ムラサメは剣を目にしても動揺しなかった。
「あんた、斬られるかもしれないってのにどうして平気な顔をしてるの?」
リミスは思わずこう聞いた。過去、リミスは不審な転生者を見て、同じように捕まえたことがあり、その転生者が何かをしようとしたため、急いで剣を抜いた。その時の転生者は腰を抜かすほど驚いたのだ。だが、ムラサメは多少驚いたが、腰を抜かしてはいなかった。ムラサメは笑みを浮かべ、リミスに近付いた。
「目の前にとびっきりの美女がいるんだ。腰を抜かすなんて間抜けな姿を見せてたまるかよ」
「美女って……あんたもそれなりにかわいいじゃないの。だけど男には目もくれないって……あんた確か、元男だったわね」
リミスは端末で見たムラサメのデータを思い出しつつ、ため息を吐いた。そんな中、ギルドの役員がリミスにこう言った。
「リミスさん、ついでなのでそこの人にこのウターンの説明を任せてもいいでしょうか? それと、転生者ならアイネスの世界のことも教えておいてください」
その言葉を聞いたリミスは嫌そうな声を上げた。だが、役員は仕事があると言って足早に去って行った。
「あーもう、どうして厄介な仕事を私に押し付けるのよー!」
「いいじゃないか。頼むぜリミスちゃーん」
ムラサメは項垂れるリミスの肩に手を回そうとしたが、そのことを察したリミスは素早くムラサメの手を弾いた。
その後、嫌々ながらもリミスはウターンの町のこと、そしてアイネスのことをムラサメに話をしていていた。だが、ムラサメはすでにそのことを知っていた。その理由は、エリラが転生時にアイネスの情報をこっそりとムラサメの記憶に入れていたからだ。
エリラのおかげだな。この世界のことが理解できる。
そう思いながら、ムラサメはリミスの話を聞いていた。
「とりあえず話は終わり。それじゃ、これで」
話を終わらせたリミスは、すぐにその場から去ろうとした。だが、ムラサメはリミスの肩を掴んだ。
「おいおい、もうちょっと一緒にいようぜー。ギルドの人には町の説明をしてたから仕事が遅くなりましたーって言えばいいんだし」
「バカ言ってんじゃないわよ。あんたみたいなナンパする猫女の相手をするんだったら、犯罪者を相手に戦った方がまだましよ」
「真面目だねー」
「お金をもらって働いているんだから、真面目にやらないと」
会話をする中、リミスはあることを考え、ムラサメにこう聞いた。
「で、あんたはどうやって生活するのよ?」
「生活?」
質問を聞き、ムラサメは思った。日本にいたころは何でも屋を経営し、トラブルを解決し、その報酬金を得て生活をしていたのだ。だが今は違う。転生一日目、金もなければ住む家もない。
「うーん。スキルもあるし、猫の力もあるから、何でも屋を経営すれば何とかなるかなー。そっちの方が俺の性格的にはぴったりだし」
「トラブルを解決するなら、個人のとこよりもギルドを頼るわよ」
話を聞いたムラサメは、大きなため息を吐いた。
「それじゃあ俺もギルドに入るしかねーなー。リミス、俺をギルドに入れてくれよ」
「絶対に嫌。それに、ギルドの戦士になるなんてそう簡単にできないわよ」
「やっぱりそういうもんか。ま、とりあえずギルドに戻ろうぜ」
ムラサメの言葉を聞き、リミスはやっとギルドに戻れると心の中で思った。
ギルドセンターに戻った直後、リミスを見た青年がリミスに近付いた。
「リミス、どこかに行ってたんだ」
「あらロマク。仕事が終わったのね」
「ああ。ただのゴブリン討伐だったから、すぐに終わったよ」
と、ロマクと言う名前の青年はリミスと仲がよさそうに話をしていた。そんな中、ロマクはムラサメを見た。
「君は?」
「転生者。今日、この世界に転生したって」
「新手の転生者か。へぇ……」
ロマクはまじまじとムラサメの体を見回した。視線に気付いたムラサメはロマクに近付き、口を開いた。
「おいスケベ野郎。人前で堂々とエロい視線を俺に浴びせるんじゃねぇ。テメーみたいなすけこまし野郎は相手にしねーんだよ」
ムラサメの言葉を聞いたロマクは驚き、話を聞いていた女性陣は小さく笑っていた。ロマクは恥をかいたと思って顔を赤くし、咳払いをした。
「失礼。で、君はこれからどうするつもりだい?」
「ギルドの戦士になろうかなーって思ってんだけど、お前の力でどうにかできるのか?」
「僕でも無理だ」
「当てが外れた。じゃーなー、スケベ野郎」
ムラサメはロマクに向かって手を振りながら、ロビーにあるカウンターの元へ歩いて行った。それを見ていたリミスは、あんな奴が簡単にギルドの戦士になれるわけがないだろうと思っていた。
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