韋駄天の仕組み
どうして俺の位置が分かったんだ⁉
奇襲を仕掛けようとムラサメの背後に回ったが、逆に殴り飛ばされたディングレイは心の中で思った。
ディングレイのスキル、<グレートフット>は魔力を使って足を強化することができる。早く走ることもできるし、素早く足を振れば切れ味のいい剣のように使うこともできる。強化された足の速度は、肉眼で捕らえることはできないとディングレイは思っていた。
しかし、ムラサメはディングレイの動きを察していた。察したからこそ、奇襲に失敗したのだ。
「グアッハッ!」
地面に転がったディングレイは悲鳴を上げた。立ち上がろうとしたが、体全体に痛みが走った。その痛みのせいで、立ち上がることはできなかった。ムラサメは両手をぶらぶらと動かしながら接近した。
「立て。まだ喧嘩は終わってねーぞ」
「クソ! 一発拳が命中したからとて、調子に乗るんじゃない!」
ディングレイは再び<グレートフット>を発動し、ムラサメに接近した。ムラサメの目前に迫ったディングレイはナイフを手にしてムラサメを突こうとしたが、その前にムラサメはディングレイの両眼を指で突いた。
「ガッギャァァァァァァァァァァ‼」
「自分のスキルが強いって思っているのはいいけれど、使い方が単純すぎるんだよ」
この言葉を聞き、ディングレイは目を抑えながら立ち上がった。
「お前、俺のスキルを把握しているのか⁉」
「ああ。お前のスキルは<グレートフット>って変な名前で、魔力を使って足を強化する。好きなタイミングで好きなように強化ができるってスキルだろ?」
ムラサメの言葉を聞き、ディングレイは動揺した。ムラサメは<グレートフット>のスキルの効果を把握し、対処法も練ってあると考えたのだ。
「何を企んでいるのか分からんが、<グレートフット>の使い道は走るだけではないぞ!」
と言って、ディングレイは<グレートフット>を発動して右足を蹴り上げた。素早い蹴りは鋭い刃のような風を発し、ムラサメに迫った。
「風の魔力と同じかい」
単純な技だと思いながら、ムラサメは攻撃をかわした。だが、ディングレイはムラサメが攻撃をかわすことも頭に入れており、すでに次の攻撃の支度を終えていた。
「まだ攻撃は終わってないぞ!」
「そんな単純な攻撃が俺に通用するかっての」
ムラサメは左手を前に出し、風の弾を発した。弱い攻撃だと思ったディングレイは攻撃に専念することを選択し、二回目の攻撃を放った。
「そんなちっぽけな風の弾なぞ、俺の蹴り上げた風の刃で切り裂いてやる!」
「ちっぽけか。そうかいそうかい」
ムラサメは呆れた表情をしてこう言った。ディングレイが蹴り放った風の刃はムラサメの風の弾に向かって飛んだのだが、ムラサメは左手の人差し指を指揮者のように動かした。すると、風の弾は意志を持ったかのように動き、風の刃をかわした。
「なっ⁉」
「これがちっぽけって言えるか?」
ムラサメは笑みを浮かべながらそう言って、風の弾をディングレイの股間に命中させえた。
ムラサメが何かと戦っていることを察したリミスとソワンは急いでウターンの外に出て、様子を調べた。
「あいつはどこに行ったの?」
「まだ時間は経ってないから、そこまで遠くに入っていないはず」
リミスは望遠鏡を手にし、周囲を見回しながら答えた。すると、ムラサメとディングレイが戦っている様子。そしてその周囲にギルドの戦士の死体が転がっているのを見つけた。
「見つけた。でも最悪、犠牲者がいる」
「犠牲者……巻き込まれたのかしら?」
「話はあとで。とりあえず今すぐムラサメの元に行くわよ!」
話を終えたリミスとソワンは、急いでムラサメの元へ向かった。
股間を強打したディングレイは股間を抑えながら悶絶していた。
「ぐ……がが……」
「痛そうだな。俺もその痛みは分かるが、女になっちまったから二度とその痛みを味わうことはなさそうだな」
「何の……話だ?」
「こっちの話だ」
ムラサメは左手に魔力を溜め、ネコノテストレートの用意を始めた。大技が放たれると察したディングレイは気合で立ち上がり、<グレートフット>を発動した。
「これでお前に勝ち目はない!」
「気合でどうにかしたってのかよ!」
ディングレイが動くと考えていなかったムラサメは動揺し、半端な魔力でネコノテストレートを放った。迫るネコノテストレートを見たディングレイは左にステップして攻撃をかわし、着地した直後に強く地面を蹴ってムラサメに接近した。
「ヤベッ!」
「隙ありだ、猫女ァァァァァァァァァァ‼」
ディングレイは叫び声を上げながらムラサメに向かって連続で蹴りを放った。
「ガアアアアアアアアアアッ‼」
「くたばれェェェェェェェェェェ‼」
ディングレイは技の終わりで、ありったけの魔力を込めた強烈な蹴りをムラサメの腹に向かって放った。蹴りを受けたムラサメは凄い勢いで後ろに吹き飛び、離れた場所にある岩山に激突した。
「ガハッ!」
強い衝撃がムラサメの背中、尻、そして後頭部を襲った。蹴りを喰らう寸前に魔力を開放して防御したのだが、それなりにダメージを受けてしまった。
クッ……こりゃーやべーな……。
咳き込みながら、ムラサメはこう思った。その直後、<グレートフット>を使ったディングレイが、ムラサメがめり込んだ岩山に接近していた。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




