異世界の少女にこんにちは
異世界アイネスに住む剣士の少女、リミスは森の方から謎の光が発したことを察し、すぐに様子を見に向かった。何が起きたと思いつつ森の奥へ進むと、そこには転生したてのムラサメがいた。
「お……女の子?」
リミスは腰に携えてある剣に手を近付けつつ、ムラサメに近付いた。ムラサメは動揺しつつ、リミスに近付いた。
「なぁ、誰? そんなに険しい顔をしてると、かわいい顔が台無しだよー」
ムラサメは笑いながらこう言ったが、リミスはムラサメのことを不審に思い、鞘から剣を抜いた。ムラサメはリミスに敵意があることを察し、慌てながら後ろに下がった。
「おい待ってくれ! 転生したばっかりでまた死にたくねーよ!」
「転生? まさかあなた、転生者ね」
納得した表情のリミスはそう言って、剣を鞘に納めた。何とか戦いにならずに済んだと思いながら、ムラサメはリミスに近付いた。
「転生者って何? 俺みたいに別の世界で命を落として、ここにやってきた輩がいるのか?」
「その通りよ。とりあえず話を聞きたいから、私が所属している町のギルドに連れて行くわ」
と言って、リミスは手錠のようなものをムラサメの右手に付けた。それを見たムラサメは驚いた顔をしたが、仕方ないと思い、静かにした。
森から出て数分後、ムラサメとリミスは少し大きな町に到着した。ムラサメは町の風景を見て、声を上げていた。
「へぇ、日本の町と同じ規模だなー。なんとなく馴染みがある」
「何ぼーっとしてるのよ。ギルドセンターはこっち。ちゃんとついてきて」
ぼーっとしているムラサメを見て、少しイラっとしたリミスは手錠を動かし、ムラサメに速く動くように促した。
その後、ムラサメはギルドセンターと言われた建物に入り、その中にある取調室で話を聞いていた。だが、話し相手はリミスではなく、ブルドックのような顔のおっさんだった。
「で、君はどうしてそんな薄着であの森の中にいたんだい? リミスの話によると、君は転生者って言うけど」
「おっ、あのおっぱいがでかい子、リミスって名前なんだ。あとで話をしたいからさー、どこにいるか教えてくれない?」
「その前に私の質問に答えたまえ。君は転生者?」
「まぁそんな感じです。まだ日が浅いっつーか、転生したばっかりなのでなーんにも分かりませんが」
ムラサメの問いに対し、おっさんはため息を吐いてスマホのような端末を取り出し、それをムラサメの顔に向けた。
「何それ?」
「ステータススキャンと言う端末だ。本来はなかなか口を割らない犯罪者の身元を暴くためや、町に入ってきた人の身元を調べるために使うものだが……ちょっと待ってくれ、スキャンができないから動くなよ」
そう言われ、ムラサメは動かないように体中に力を込めた。しばらくして、ステータススキャンから音が鳴り、おっさんは感心した声を上げた。
「情報が出た。これが君の情報で間違いないな」
おっさんはステータススキャンの画面をムラサメに見せた。画面にはムラサメの本名や、身長体重などの身体的特徴とイビルアイのスキルに関しての情報、そして日本で過ごした人生とどんな人生を送ったのか、詳細な情報が書かれていた。それを見たムラサメは感心した声を上げ、頷いた。
「そうそう。間違いない。へぇ、俺の魔力は風なのか」
「どうやら君は悪人ではなさそうだね。では、取り調べを終える」
おっさんはため息を吐き、ムラサメの手錠の鍵を開いた。両手が自由になったムラサメは両手をひらひらと動かし、すぐに取調室から出ようとした。だが、おっさんが口を開いた。
「それで、君はこれからどうするつもりだ?」
「リミスちゃんを口説きに行く」
そう答え、ムラサメはすぐに取調室から出て行った。おっさんはムラサメのスケベそうな笑みを思い出し、深いため息を吐いた。
リミスはギルドセンターのロビーにいた。自分が保護したムラサメのことを思い出しつつ、ため息を吐いた。
「世の中には変な子がいるもんねぇ」
「その変な子ってのは俺のことかい?」
そう言いながら、ムラサメがリミスの横に座った。リミスはげんなりとした表情でムラサメを見たが、それでもムラサメはリミスに近付いた。
「自己紹介がまだだったよね。俺はムラサメ。前の世界じゃあ月刀村雨って名前だったんだよ」
「知ってるわ。取り調べで得たデータが私の端末に送られてるから」
リミスは手にしている端末をムラサメに見せながら答えた。自分のことを知っていると察したムラサメは、リミスの顔を見た。
「俺のことを知ってるんだったら話は早い。仕事が終わったらこの町のことを教えてくれない? 後、ラブホがどこにあるか教えてくれればうれしいんだけど」
「嫌だ。面倒」
そっけない態度をしつつ、リミスはムラサメを拒絶した。だが、それでもムラサメはリミスの後を追った。
「なーなー、いいじゃんかよー。俺、転生したてでなーんにも分からないんだからさー」
「しつこいわね」
怒りが爆発したリミスは、腰の剣を手にしてムラサメの方に向けた。
「これ以上私に構わないで。次は斬るから」
「へぇ」
敵意の視線を向けているリミスを見て、ムラサメは笑みを浮かべていた。
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