女を巡る女の戦い
面倒なことになったとムラサメは心の中で思っていた。リミスのことを友達以上に大切に思っている少女、ソワンが現れ、リミスと海より深い仲になったムラサメに憎しみと殺意の感情を浴びせていた。
外で決闘をするつもりのソワンを見て、リミスは慌ててソワンに近付いた。
「ちょっとソワン! 私のことを大切にしてくれているのは嬉しいけど……」
「大丈夫よリミス。あの猫女を八つ裂きにしたら、私があなたと一緒に暮らしてあげるから」
と、ソワンは笑みを浮かべて答えた。こりゃダメだと思ったリミスはため息を吐いた。そんな中で、ムラサメはソワンに気付かれないように<イビルアイ>を発動し、ソワンの情報を探っていた。
外で決闘するのは問題なので、ムラサメとソワンの戦いはギルド内にある摸擬戦用の施設で行われることになった。
「ここなら派手に魔力を使っても、スキルで暴れても大丈夫だと思うけど……」
「それなら思う存分暴れられるわね」
施設の管理者の話を聞いたソワンは笑みをかび、腰に携えてある剣を抜いた。それを見たリミスは慌てて声を発した。
「ちょっと、それ真剣じゃない!」
「そうよ。だってあの猫女を血祭りにあげるんですもの」
物騒な笑顔をしながら答えるソワンを見て、心配になったリミスはムラサメの方を向いた。
「ムラサメ! 今のソワンはかなり危険よ! 降参するなら今よ!」
「心配してくれてありがとな! でも大丈夫だ!」
心配するリミスの顔を見て、ムラサメは笑顔で答えた。ムラサメとリミスが気軽に話せる仲だと知り、ソワンの怒りのボルテージが上昇した。
「殺す! お前は血祭りにあげてぶっ殺してやる!」
「あーあ、怒りのあまり感情がとんでもないことになってるよ」
怒りで暴走しそうなソワンを見て、ムラサメはため息を吐いた。その直後、摸擬戦の開始を合図する笛の音が鳴り響いた。
「キッシェェェェェェェェェェ‼」
剣を手にしたソワンは猛スピードでムラサメに接近し、剣を振り下ろした。ムラサメはソワンが接近した時に後ろに下がっていたため、攻撃は当たらなかった。
「すばしっこい猫ね!」
「大体の猫はすばしっこいだろうが」
そう言いながら、ムラサメは後ろに下がって行った。
「待て! 逃げるな! 逃げるな卑怯者ォォォォォォォォォォ‼」
魔力を開放したソワンは、猛スピードでムラサメを追いかけた。だがその時、ソワンの両腕が傷付いた。
見えない風の刃を設置したのね!
ダメージを受けたソワンはすぐにムラサメが見えない風の刃を設置したことを察し、すぐに治療した。
「くだらない技に引っかかるなんて、私もまだまだね。本気でお前を殺してやる!」
と言って、ソワンは叫び声をあげた。すると、ソワンの周囲から白い霧が発した。リングの外で戦いを見ていた管理者は、呆然とするリミスに近付いた。
「あの子、何やってるんですか?」
「スキルを使ってるのよ。ソワンのスキルの名前は<ホワイトバース>」
「ほう。それはどんな効果があるスキルなんですか?」
「<ホワイトバース>はソワンを中心にして、半径十メートル以内の物体を凍らせることができる。何を凍らすか、凍る速度は自由にソワンが操作することができるわ」
「へぇ、相手を凍らすスキルですか。厄介なスキルを持ってますねぇ」
「だけど、一度に大量の物を凍らせることはできないわ。凍らせる対象は一つだけ」
リミスの説明を聞き、管理者は納得した声を上げた。
ソワンのスキル、<ホワイトバース>のことをムラサメは事前に<イビルアイ>の情報収集能力で把握していた。今、ムラサメは<イビルアイ>でソワンとの距離を測りながら逃げていた。
ソワンの半径十メートル以内に入らなければ、凍らずに済む。だけど、あの魔力じゃあ催眠状態にならないな。
逃げながらムラサメはこう思っていた。逃げる中、ソワンはその場に立ち止まった。
「ちょこまかとすばしっこい猫ね……けど、私から逃げることはできないわよ!」
そう言った後、ソワンは魔力を開放し、剣を床の上に突き刺した。何かをすると察したムラサメはその場に止まった。すると、ムラサメの目の前に大きな氷の壁が下から現れた。
「あっぶね!」
立ち止まらなければ、氷の壁に激突していたと思ったムラサメは、高く飛び上がって氷の壁を突破しようとした。だが、その下から新しい氷の壁が現れ、ものすごい速度で上に伸びた。
「これでも喰らえ!」
「やばっ!」
氷の壁の接近を察したムラサメは、目の前にある氷の壁をよじ登って攻撃を回避しようとした。だが、氷の壁を掴もうとしたムラサメの手は滑り、離れてしまった。
「なっ!」
「くたばれ」
空中でバランスを崩すムラサメを見て、ソワンは笑みを浮かべた。その直後、下から伸びる氷の壁はムラサメに命中した。
「このまま天井まで伸ばして、潰してあげるわ!」
ソワンは氷の壁を操り、そのまま天井に向かって伸ばした。ムラサメは態勢を整え、迫る天井を見て冷や汗をかいていた。
クソッ! このままじゃ……。
ムラサメがこう思った直後、ムラサメを押し上げている氷の壁は天井に激突した。
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