百合色の夜
マスコミたちに取り囲まれたリミスを助けたムラサメは、一度ギルドの自室に戻った。
「ふぅ。退院した後で動くのはちときつかったかなー」
そう言いながら、自室に入ったムラサメは両腕を回した。その様子を見たリミスはため息を吐いた。
「そこまで力ないのに、お姫様抱っこしてここまで飛ぶんだから」
「それしか脱出する方法はなかったんだからいいじゃねーか。それよりもさ、一つ聞きたいんだけど」
「何?」
「前に言ってたじゃん。お礼ならキスがどーたらこーたらとか……」
と、ムラサメはちらちらとリミスの方を見ながらこう聞いた。変なことを言うなと言いながらリミスの攻撃が迫るかもしれないと思い、ムラサメは多少の危機感を持っていた。だが、その予想とは裏腹にリミスはムラサメに近付き、左の頬に口を当てた。
「お礼」
「ほっぺに……か」
「口にされたいわけ?」
「できればな」
「じゃあ」
リミスはムラサメの両頬を手で押さえ、そのままムラサメの口に自身の口を当てた。キスの後、呆然としたムラサメだったが、少しして我に戻った。
「マジでやるとは思わなかった」
「いいじゃないの……もう」
リミスは顔を少し赤く染め、こう答えた。
その後、リミスはムラサメの部屋のソファに座って休んでいた。キスしたことを少し照れながら、クッションを抑えた。
「そんなに恥ずかしいんなら、やらなくてもよかったんだけど」
二つのコーヒーカップをお盆に乗せて持ってきたムラサメが、顔を赤くして顔を隠すリミスにこう言った。
「いいじゃない……それなりに、恩は返さないと……」
「無理に返さなくてもいいんだぜ。前にも言ったろ、一応同い年だけど俺の方が年齢は上だって。もし年上のダンディーな男がタイプなら、キスでもエッチなことでもやりたかったらやってもいいんだけどよ。あははははは!」
ムラサメはリミスの気を紛らわすため、笑いながらこう言った。リミスはため息を吐き、ムラサメの方を見た。
「あんたが望むなら、今日……一緒に寝てよ」
リミスの真剣な目を見て、ムラサメは再び動揺した。
その日の夜、ムラサメとリミスは一緒に風呂に入っていた。ギルドの部屋の風呂は一人用である。そのため、湯船はかなり狭かった。無理矢理な形で二人同時に入っているため、ムラサメとリミスの体はいろんなところがくっついていた。
「おいおい、いいのか? 乳やら尻やら太ももやら結構密着してるぞ。俺、元男だぜ?」
「元でしょ? 今は女」
と言って、リミスはムラサメの胸を揉んだ。思わず、ムラサメは変な声を上げた。
「うわ、変な声出た」
「ぷっ」
ムラサメの声を聞き、リミスは小さく笑った。最初のころよりも少しは心が開いていると思ったムラサメは、仕返しのつもりでリミスの両胸を揉んだ。
「あぁん!」
「仕返しだ。いいかリミス? 俺は転生する前はプレイボーイだったんだ。女が喜ぶやり方とか十分熟知してるんだぜ?」
「ちょっと待って、降参!」
「降参しても遅い!」
ムラサメはひたすらリミスの胸を揉んだ。しばらくして、リミスは声を上げて大人しくなった。
「ふぅ、これで落ち着いたか?」
大人しくなったリミスを見て、ムラサメはリミスの頬を触った。
「リミス、少しはしゃぎすぎだ」
「私、はしたなかった?」
「そうだったな。でも人間、少しははしたない部分を見せてもいいと思う。たまには何も考えるなよ」
と、ムラサメは笑顔でこう言った。
風呂から上がった後、ムラサメはベッドの上で横になった。その隣でリミスが横になっている。
「今日はずいぶん積極的だったな。前はツンツンしてたのに。俺、フラグでもおっ立てたか?」
ムラサメは横にいるリミスの頬を触りながら聞いた。リミスは両手をムラサメの背中の方へ回し、優しく抱きしめた。
「かもね。あんたがしっかりしたところ、男らしいところを見たせいか……心が……」
「惚れたってわけか」
ムラサメがこう聞くと、リミスの顔が完熟したトマトのように赤くなった。そして間を開けて、リミスは小さく頷いた。ムラサメは小さく笑い、自身の胸にリミスを抱き寄せた。
「変とは思わないさ。女が女に惚れようが俺はおかしいと思わない」
「本当?」
「本当さ」
と言って、ムラサメはリミスを落ち着かせるために口づけをした。
「ムラサメ……」
「我慢しなくていい。思う存分俺に甘えろ。気が済むまで相手になる」
「うん……ありがとう」
リミスはそう言った後、ムラサメに抱き着いた。ムラサメは自身の体とリミスの体の上に、布団を被せた。
翌朝。ベツーノ町のギルドセンターの入り口にて、ギルドマスターが大声を上げながら剣士の少女を呼び止めていた。その少女は青い髪のストレートヘアーで、他の人間とは違って耳がとんがっていた。
「待ってくれソワン! いきなり別のギルドに移るだなんて言わないでくれよ! 君がどれだけうちのギルドに貢献しているか分かるだろ?」
ギルドマスターはこう言ったが、ソワンと言われた少女は青い髪を揺らしながら答えた。
「知りませんよそんなこと。やるべきことができたので、そちらを優先します。では、あとは皆さんでどうにかしてください」
と言って、ソワンは魔力を開放して高く飛び上がり、去ってしまった。空を飛ぶ中、ソワンは手にしている新聞を見た。そこには、ムラサメがリミスをお姫様抱っこする写真があった。それを見たソワンの手は怒りで震え、左指でムラサメの顔部分を押し潰した。
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