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炸裂する猫の手


 ムラサメは周囲を暗くし、ロマクの目をごまかそうとした。ロマクは一瞬戸惑ったのだが、ムラサメの目が猫のように光ることを察して反撃をしようと試みる。だが、小悪党の思い通りにはならない。ムラサメは猫のように走ってロマクを動揺させ、一瞬の隙を突いてロマクに接近して右アッパーを放った。




 渾身の右アッパーを決めたつもりのムラサメだったが、この一撃で勝負は決まっていないと察した。攻撃を受けて後ろに下がったロマクは、あごをさすりながら笑い始めた。


「今のが本気の攻撃かい? やっぱり猫の女の攻撃は、痛くないなァァァァァァァァァァ‼」


 ロマクは手探りで近くを調べた。机が近くにあり、その上にフォークとナイフがあることが分かった。ロマクはすぐにそれを手にし、<ソニックシュート>を使ってムラサメに向かって投げた。


「ヤベッ!」


 ムラサメは攻撃をかわすために素早く横に飛んだ。だが、その前にロマクがフォークとナイフを投げていた。


「があっ!」


 投げたフォークはムラサメの尻尾をかすり、ナイフはムラサメの左足の太ももを貫いた。


「やべぇ……足が……」


「痛々しい声が聞こえたよ! 生きているようだけど、どこか怪我したみたいだね。ざまーないぜ!」


 ロマクはムラサメに近付き、新しいフォークを使って攻撃を仕掛けた。


「死ねェェェェェェェェェェ‼」


「そいつは食事のための道具だ! 人殺しの道具じゃねーっての‼」


 叫び声を上げながら、ムラサメはまだ動ける両手を使い、ダンスの要領で右足を動かしてロマクに足払いを仕掛けた。


「何⁉」


 傷を負ったムラサメがまだ派手に動けることを予想していなかったため、ロマクは足払いを受けて転倒した。その際、ロマクが手にしていたフォークが宙に上がった。


「フォークが!」


 リミスは周囲を見回し、近くの机の上に置いてある木製のマグカップを見つけた。それを手にし、急いで<フワフワタイム>のスキルを使って動かした。ロマクは宙に舞ったフォークを手にしようと伸ばしたのだが、その前にリミスが飛ばしたマグカップがフォークを弾き飛ばした。


「しまった!」


「残念だったな!」


 ムラサメは魔力を開放し、左フックでロマクの右のこめかみを強く殴った。ロマクは右のこめかみを抑えながらふらつき、攻撃を終えて動きを止めているムラサメを睨んだ。


「よくも僕を殴ったな!」


「さんざん人を殺しまくった奴が、被害者面すんじゃねーよ」


 そう叫ぶムラサメだが、攻撃を受けた右足の太ももからは、大量に血が流れていた。ムラサメが無理をしていることを察したロマクは、ムラサメに接近し、腹を殴った。


「あがっ!」


「無茶をするメス猫だ。こんな足で何ができる? やってみろよ‼」


 ムラサメを殴り倒した後、ロマクは笑い声を上げながらムラサメを殴り始めた。




 リミスはムラサメがピンチであることを察し、急いでヒアラを探した。物が乱雑に散らばっている机の上にヒアラが置いてあったため、リミスは急いでヒアラを手にしようとした。だがその時、バチィンと激しい音が響いた。その直後、リミスは伸ばした右手に激痛を感じた。


「ギャァァァァァ‼」


「ははははは! 引っかかったねリミス! 僕がなーんも策をしないで聖剣を放置したと思っていたのかい? 君が罠を解除して自由になり、ヒアラを手にして僕を倒す可能性を僕が見落とすとでも⁉」


 ロマクの笑い声を聞き、リミスは右手を見た。そこには小さなくくり罠があった。くくり罠の刃は、リミスの右手に食い込んでいた。


「残念だったねぇ! 助けてほしかったら、二人とも全裸になって僕に頭を下げろ! そうすれば、僕の奴隷として一生飼ってやるよ!」


「ふざけんじゃねーぞクソガキ」


 殴られているムラサメが、低い声を上げた。それと同時に、ムラサメは強い魔力を発した。その時、ロマクは恐怖を感じて一瞬だけ動きを止めた。だが、すぐに攻撃を再開しようと思って再びムラサメを殴ろうとしたのだが、構えた右手は自身の鼻を殴った。


「あぐあ……?」


「テメー、自分でポロリと野望のことを語ったことを忘れたのか? 俺の<イビルアイ>の催眠に少しだけかかったことを忘れたのか? その時点で気付いてねーのか? テメーの魔力は俺より下だって」


 ムラサメの言葉を聞き、ロマクはいつの間にか催眠にかかったことを察した。


「いつの間に……」


「殴られている時だよ。あんな拳で俺の体に傷を付けることはまず不可能だ。わざと殴られてやったんだ。おかげで目ぇ覚めたわ」


 魔力を開放しつつ、ムラサメは動きを封じたロマクに近付いた。ロマクはムラサメを見て、恐怖を感じた。


「悪かった……僕が悪かったよ。そうだ。ワルザーの連中を倒したのは君とリミスってことにしてあげる。手柄を譲るよ」


「誰が格下の小悪党の言うことなんて聞くかよ」


 ロマクの案をすぐに却下したムラサメは、右手を後ろに下げた。そして右手に魔力を溜め、風で巨大な猫の手を作った。風でできた巨大な猫の手を見たロマクは、無数の小さな風の刃が動いていることを知った。


「ま……まさか、それで僕を殴るつもりか⁉」


「その通りだよ。歯ぁ食いしばれ! これが俺の必殺の拳! ネコノテストレートだァァァァァァァァァァ‼」


 ムラサメは叫び声を上げながら、恐怖で動きを止めるロマクに向かって、ネコノテストレートを放った。


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