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音速を放つスキル


 ロマクが投げた小石が、ワルザーの額を貫いた。この光景を見たムラサメとリミスは目と口を開けて驚き、ワルザーの部下たちもショックのあまり立ち止まっていた。攻撃を受けたワルザーの体が地面に倒れた直後、ワルザーの部下たちが武器を持ってロマクに襲い掛かった。


「この裏切り野郎がァァァァァァァァァァ‼」


「どうせ後で俺たちを裏切るつもりだったんだ! ここで殺してやる!」


「俺たちには向かったこと、深く後悔させてやるぜ!」


 怒りを爆発させるワルザーの部下たちを見て、ロマクは呆れてため息を漏らした。


「まともなスキルを持っていない雑魚が、僕を殺せるなんて思うなよ」


 と言って、ロマクは右手一杯の小石を拾い、ワルザーの部下たちに向かって投げた。小石はワルザーの額を貫いたように、部下たちの体を貫いた。


「な……何だよあのスキル」


 ムラサメが小さく呟くと、布で体を隠したリミスが近付いた。


「あれはロマクのスキル<ソニックシュート>よ。魔力を使えば音速並みの速度で物を投げることができる」


「音速並みの速度ねぇ。でもま、リミスの<フワフワタイム>の方が上だな」


「どうしてよ?」


「<フワフワタイム>は物体を自由に動かすって言ってただろ? なら、音速並みに飛ばすことも可能ってことじゃねーの?」


「それは確かに……」


 話をしていると、攻撃を受けて生き残ったワルザーの部下が、荒々しい声を上げた。ロマクは一瞬驚いたが、すぐに余裕の笑みを浮かべた。


「いい声を出すようだが、もう虫の息じゃないか」


「うるせーよクソガキ! ぶっ殺してやる……」


 その部下は首から血を流しながらも、右手に持つ剣を振り上げた。だが、ロマクはその部下に近付いて首の傷に自身の左手の中指と人差し指を突き刺した。


「グッギャァァァァァァァァァァ!」


「首から血を流しているんだ。大人しく死ねよ」


 痛々しい悲痛な声を上げる部下に向かってロマクはこう言った。部下の悲鳴は徐々に小さくなり、首から流れる血も量が減った。数分後、ロマクは呆れるようにため息を吐いて部下の傷口から左手の中指と人差し指を抜いた。地面に倒れた部下の頭を踏みつけながら、ロマクは血で濡れた指をハンカチで丁寧に拭いた。


「次はお前の番だ、ムラサメ。この惨めな男のように死にたくなければ、僕に忠誠を誓え。そうすれば、見逃してやる」


 この言葉を聞いたムラサメは、首を回しながら答えた。


「誰がテメーに忠誠を誓うかよ。俺は格下の言うことなんて聞かない」


「そうか……いい答えを期待してたんだけどね」


「期待させて悪かったな、クソ野郎」


 会話を終え、ムラサメはロマクを睨んだ。




 体が自由になったリミスは、すぐに周囲を見回した。ロマクのスキルである<ソニックシュート>は何でも音速並みの速度で投げ飛ばすスキルであり、どれだけ頑丈な盾や鎧を身に着けても、どれだけ分厚い看板や壁の後ろに隠れても音速の速度で投げられた武器によって貫通されて破壊される。人体を貫通させることなんて、簡単にできるのだ。


「ちょっとムラサメ! あいつのスキルのことを頭に入れてるの⁉」


 リミスがムラサメにこう言ったが、ムラサメは左手を上げて無言で返事をするだけだった。不安になったリミスだったが、ムラサメは魔力を使って天井にぶら下がっているカンテラを破壊した。


「なっ⁉」


 いきなり部屋が暗くなったため、ロマクは驚いた。リミスも驚いたが、近くで人のぬくもりを感じた。


「大丈夫だリミス。俺はあんな奴に殺されねーよ」


 と、耳元でムラサメの声がした。リミスは心配したが、ここはムラサメの言葉を信じることにした。その直後、ムラサメの足音が聞こえた。


「どこにいてもお前の居場所は分かるぞ! お前、自分が猫型の獣人族であることを忘れたのか? 目が光るんだぞ? それで自分の居場所を僕に教えているんだぞ!」


 勝ち誇ったかのようにロマクはこう言った。ムラサメの目は暗夜に潜む猫のようにはっきりと分かり、そのせいで居場所を特定できたのだ。


「だからどうした? やれるもんならやってみろよ三下君」


 ロマクの言葉に対し、ムラサメは挑発するような口調でこう答えた。その言葉を聞いたロマクは腹が立ち、<ソニックシュート>で小石を投げてムラサメを攻撃しようと考え、すぐに実行に移した。


「殺してやるぞ、お前は体中穴だらけにして殺してやる!」


 そう言いながらロマクは周囲を見回した。ムラサメの位置を知らせる目は、活発に動き回っていたのだ。


「クソッ! 狙いが定まらない!」


 動き回るムラサメを追いかけるため、ロマクは動き出した。だがその直後、何かがロマクの足に当たり、そのせいでロマクは転倒した。


「うぐぐ……」


「ダーッハッハ! だっせーなー!」


 転倒したロマクを見て、ムラサメは大声で笑った。腹が立ったロマクはすぐに立ち上がって周囲を見回した。だが、ムラサメの姿はなかった。


「あの猫女! どこにいるんだ⁉」


「さーて、どこにいるんでしょうかね? さぁ考えよう」


 と、下からムラサメの声が聞こえた。ロマクが下を見ようとした瞬間、ロマクの下に潜んでいたムラサメが、ロマクのあごに向かって右アッパーを仕掛けた。


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