汚れ仕事
ムラサメが罠にはまった後、リミスたちはアジトの奥へ進んでいた。アング曰く「生きていればムラサメちゃんと合流できる。ムラサメちゃんはそんなやわな戦士じゃない」とのこと。とにかく、ムラサメが生きている限りは合流できる確率が高いという考えで進んでいた。
「もう、心配するからさっさと合流したいわねぇ」
と、走りながらリミスはこう思った。すると、前の方から発砲音が聞こえ、直後に弾丸が飛んできた。
「前の方に敵がいるな」
アングは飛んできた弾丸を魔力で作った盾で防ぎ、前を睨んだ。そこには、剣を持ったワルザーの部下たちがいた。
「敵がいたぞ!」
「ギルドの戦士だ! ぶち殺せ!」
「強い魔力使いがいる、気を付けろ!」
部下たちは叫び声を上げながら、前にいるアングに襲い掛かった。アングは小さく笑い、剣を構えた。
「一人に対し、一度に多数で襲い掛かってくるのか? テメーらにはプライドがないようだな」
「うるせぇ!」
「テメーらは強いんだ! 殺すためにはプライドなんてもんは捨てる!」
「そうかい」
と言って、アングは魔力を開放して剣を素早く何度も振るった。アングの動きが止まった直後、武器を手にしていたワルザーの部下の動きが止まった。
「ま、そんなことはどうでもいいからとっととくたばれ」
アングがこう言った直後、攻撃を受けたワルザーの部下の体から大量の血が流れ、アングの近くにいたワルザーの部下の両手は下に落ちた。リミスは血を流して倒れる敵を見て、ため息を吐いた。
「ムラサメも同じようなことを言ってたけど、殺すのはねぇ……」
「今の状況、敵の命に関してあれこれ言うのはなしにしてくれ。相手を殺さないと、こっちが死んじまう」
アングは前を睨みながらこう答えた。リミスは前から魔力を感じ、敵が接近してくると察した。うつむいた様子のリミスを見て、アングはこう言った。
「手を汚すのは俺とロマクだけでいい。リミスは援護を頼む」
「分かったわ」
「ロマク、返事しろ!」
「え! あ、ああ……」
ロマクは慌てながら銃を手にし、近付いてくるワルザーの部下に向かって発砲し続けた。
リミスたちは敵を倒しながら先に進んでいた。アングとロマクが敵の命を奪いながら戦ったせいか、ワルザーの部下はアングの顔を見て戦意を失っていた。
「あ……あいつ、目が血走ってやがる」
「顔中に返り血がへばりついてるよ。あいつ、人間じゃねぇ……」
ワルザーの部下は、大声を上げて戦うアングを見て恐怖を覚えていた。今のアングは大量の返り血を浴びて服も体も真っ赤に染まり、感情を露わにしているのか目も血走っていた。
「はぁ……はぁ……敵はどこにいる⁉」
アングは周囲を見回し、ワルザーの部下を探し始めた。床の上には、アングが切り殺したワルザーの部下たちが倒れていた。荒く呼吸をするアングを見て、リミスが近付いた。
「魔力を感じないわ。この部屋には敵はいないわ」
「だが今、話し声が聞こえたぞ!」
「あんたに適わないから逃げたのよ」
リミスの言葉を聞き、アングは荒く深呼吸をし、周囲を見回した。そして今の自分の姿を見て、言葉を失った。
「やりすぎたな」
「そうよ。ギルドの仲間を殺されてあいつらを恨んでいるのは私も同じだけど、これじゃああいつらとやることが同じよ」
「そう……だな」
落ち着きを取り戻したアングは、再び周囲を見回した。
「おい、ロマクの奴はどこに行ったんだ? 姿が見えないぞ」
「え? あらホント。はぐれたのかしら?」
「入り口からここまでは一本道だった記憶があるが……だけど、そこまで複雑なアジトじゃないぞ」
「仕方ないわね、探しに戻る?」
「そうだな」
話をする中、別のワルザーの部下たちが現れ、アングに向かって銃を撃ち始めた。
「クソッ! 援軍か!」
「バリアを張るから、その隙に柱の後ろに下がって!」
リミスはバリアを張って飛んでくる弾丸を防ぎ、その隙にアングは柱の後ろに隠れた。アングが隠れたことを察知したリミスはバリアを解除し、アングの横に移動した。
「厄介なことになったな。ロマクの奴が死んでなきゃいいが」
「あいつはあまり強くないから心配ね。どうする? この状況を打破してから探す?」
「俺とリミスの力なら、あの程度の雑魚を簡単に蹴散らすことができる。俺は先に進むから、リミスはロマクを探してくれ」
「一人で大丈夫?」
「余裕だ」
アングは返事をした後、剣を手にしてワルザーの部下に向かって走り出した。リミスは弾丸の雨が止んだ隙に後ろに下がり、ロマクを探しに向かった。
一方、地下室の敵を倒したムラサメは、<イビルアイ>の催眠能力で操った敵の話を聞いていた。操っている敵は今のワルザーたちの状況をよく知っており、知っていることを全部ムラサメに話した。
「こいつはやべーことになったな。早くリミスたちと合流しないと。おい、地下室の出口はまだか?」
「もう少しで上の階に着きます」
敵は千鳥足で歩きながら答えた。ちんたら歩くため、苛立ったムラサメは敵を後ろに投げ飛ばした。
「この先が出口なんだな! 後は俺一人でいい!」
「あー」
投げ飛ばされた敵は、情けない声を上げながら落ちて行った。ムラサメは今知った情報を早くリミスとアングに伝えねばと思い、階段を走った。
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