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アジトに到着たのはいいけれど


 ワルザーの部下によるロケットランチャーの攻撃を対処した後、ムラサメたちを乗せた車は再び走り出した。その途中、ムラサメが倒した狙撃手の元で停車し、ムラサメが外に飛び出した。


「悪いけど、俺以外誰も外に出ないでくれ。こいつらの尋問は俺一人で十分だ」


「分かったわ。<イビルアイ>のスキルに頼むわ」


 リミスの声を聞き、ムラサメは返事のつもりで左手を上げた。その時、ロマクが口を開いた。


「僕も行く。ムラサメ一人だけだと不安だ」


「俺はムラサメを信じる。それに、今は俺たちが出る幕じゃない」


 と言って、アングは外に飛び出そうとしたロマクの背中を掴んで止めた。


 ムラサメは<イビルアイ>を発動し、近くで倒れている狙撃手の顔を上げた。


「俺の質問に答えろ。どうして俺たちの居場所が分かった?」


「俺たちの上司から連絡が入った。お前たちはそこで待機し、近付いてくるギルドの車を爆破しろ。ただし、中にいる奴らは殺すなと命令を受けている」


「そうか。それじゃあもう一つ質問だ。最近ギルドの関係者がお前らのアジトを訪ねなかったか?」


「そこまでは分からない」


 この答えを聞き、ムラサメはそうかと呟き、尋問していた狙撃手の腹を殴り、気を失わせた。その後、ムラサメは車に戻った。


 走る車内にて、ムラサメはため息を吐いてこう言った。


「ダメだこりゃ。こいつらは下っ端だから、何にも分からないって」


「下の方にもいろいろと話をするのが、社会のルールだと思うんだけど」


「そりゃー普通の社会のルールだろ? 裏ギルドの連中に普通のルールが通用するか?」


 後部座席にいるアングが笑いながら言った。その言葉を聞いたムラサメは「そりゃそうか」と言って爆笑した。ひたすら笑うムラサメとアングを見て、リミスは呆れてため息を吐いた。




 数分後、道の途中で車が停車した。


「皆さん。私が運転できるのはここまでです」


 運転手の声を聞き、ムラサメは笑みを浮かべた。


「つーことは、ワルザーのアジトが近いってわけか」


「その通りです。あいつらのアジトの周りには、何があるか分かりません。今の時代、赤外線トラップなんて、普通に買えたり作れたりします」


「怖いんだな。ま、確かにあんたは戦う力がないから、怖いって思うのが普通だな」


 ムラサメは車から出て、外から運転手にこう言った。


「とりあえず、パパーってやって片付けてくるわ。それまで、安全なとこで待っててくれ」


「気軽に言うねぇ、ムラサメちゃん」


 次に車から降りたアングが近付き、ムラサメの肩を叩いた。リミスは緊張感のない二人を見ながら車から降り、最後にロマクが車から降りた。


「では皆さん、ご健闘をお祈りします」


 運転手はそう言って、目をつぶった。ムラサメは軽く返事をし、先に歩き始めた。




 歩き始めて数分が経過した。先頭を歩くムラサメとアングは時折あくびをしたり、指の間に入ったごみを処理したりなど緊張感のない行動をしていた。それを見たリミスはため息を吐いた。


「ちょっと、少しは緊張感を持ったらどうなの?」


「そんなもん持ってたら、いざって時に動けない。それに、<イビルアイ>を使っているから、何かあったらしっぽを踏まれた猫のように叫ぶよ」


 ムラサメはリミスの方を振り返って答えた。リミスはムラサメの目が変色していることを知り、<イビルアイ>を使っているのは本当だと察した。前を見直したムラサメは、右手を動かした。


「止まってくれ。近くに敵がいる」


「へぇ。どこだ?」


 嬉しそうな様子で、アングは剣を手にした。


「右手側に見える大きな岩の裏に二人。左手側にある少し離れた形の変わった岩の後ろに一人。武器は分からないけど、前の二人は剣か槍っぽいのを持ってる。後ろの奴は、多分スナイパーライフルだな」


「分かればオッケー」


 アングはそう言って前にいる敵に接近しようとしたが、リミスが前に出た。


「二人はさっき戦ったから、私がやるわ」


「それじゃあ頼むわ」


 と言って、ムラサメは後ろに下がった。リミスは近くにあった岩のかけらを手にし、<フワフワタイム>を発動した。


「ムラサメ、狙撃手の詳しい位置を教えて」


「岩の中央下。ちょうど真ん中だ。外れても、敵が驚いて外に飛び出してくれば俺たちが攻撃する」


「二回目の攻撃は準備してある。大丈夫よ」


 返事をした後、リミスは<フワフワタイム>で浮かした岩のかけらを猛スピードで放った。放たれた岩のかけらは遠くの岩を貫き、裏にいた狙撃手の左足のふくらはぎを貫通した。攻撃を受けた狙撃手は激しく動き、そのはずみで岩の外に出てしまった。


「よし、出てきた」


 ムラサメは隠れていた狙撃手が岩から出てきたのを見て、笑みを浮かべた。仲間の様子がおかしいと察したのか、前にいた二人が動き出した。


「何だ、今のは!」


「俺たちの居場所を察していたのか!」


 声を上げた二人が、慌てて動き始めた。その隙を見計らい、アングは後ろから襲い掛かった。


「くたばれ!」


「なっ!」


 アングの剣が、敵の体に深くめり込んだ。アングは敵の体を蹴って無理矢理剣を引き抜き、動揺するもう一人の敵を見た。


「さて、奇襲しようと考えたおバカさんに、お仕置きをしないとな」


 と言って、アングは敵に襲い掛かった。


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