リミスの力
ゴブリンとの戦いを終えたムラサメは、<イビルアイ>で生き残ったゴブリンを操り、アジトへ移動させた。ゴブリンのアジトに突入したムラサメは操ったゴブリンを使って攻撃を仕掛け、敵のゴブリンたちを混乱させた。
ゴブリンのボス、デカブツゴブリンは不敵な笑みを浮かべるムラサメを見て、怒りを爆発させていた。だが、ムラサメが何らかの力を使い、手下を操ることができることを察したデカブツゴブリンはどうやって戦おうか考えていた。その時、<イビルアイ>の催眠を受けなかった一部のゴブリンが、バットを持ってムラサメの背後に回っていた。デカブツゴブリンは自分を囮にし、仲間がムラサメに攻撃するのを待った。しかし、リミスがそのことに気付き、ムラサメの背後のゴブリンを剣で一閃した。
「え? おわ! こいつら俺の後ろにいたのか!」
「気配を消して近付いていたのよ。私が動かなかったら、あんたはやられてたわ!」
「悪い、助かった!」
ムラサメは手を合わせて、リミスに向かって頭を下げた。リミスはため息を吐き、周囲にいるゴブリンを見回した。
「こいつら、催眠にかからなかったみたいね」
「一部の奴は魔力があって、催眠にかかっても時間が経てば我に戻る。それか、俺の目を見ていなかったか」
「どうでもいいわ。ムラサメ、ボスの相手をお願い。私は雑魚を相手にするわ」
「ああ、任せた!」
リミスは会話を終え、手にしていた剣をゴブリンの群れに突き付けた。
本当に大丈夫なのだろうかと、ムラサメはデカブツゴブリンに攻撃を仕掛けながらこう思っていた。リミスは剣を持っているから剣士であり、それなりに戦いの経験を積んでいるとムラサメは思っていたが、敵は多数。たとえ弱いとしても、一対多数の状況では分が悪い。すぐにデカブツゴブリンを倒して加勢しようと考えたムラサメは、魔力を込めて右ストレートでデカブツゴブリンの腹を殴った。だが、デカブツゴブリンの脂肪が攻撃を受け止めた。
「おわっ! すげぇ腹! お前、かなりデブだろ!」
「デブと言うな! これは俺の盾だ! どれだけ攻撃を放っても、この腹の脂肪が衝撃を吸収する!」
デカブツゴブリンは腹を叩きながらこう言った。ムラサメはその言葉を聞き流しつつ、後ろで戦っているリミスを見た。その光景を見て、ムラサメは驚いた。
「あら、これで終わり? これだけいて私に一発も攻撃を当てられないなんて……情けないわ」
リミスは大きなテーブルの上に立ち、剣を構えていた。その周りには、血まみれになったゴブリンが倒れていた。デカブツゴブリンもリミスの手によって手下が倒されたことを知り、口を開けて驚いた。
「なっ……ただの乳がでかい少女かと思ったが……」
「一言余計よ」
そう言いながら、リミスは机の上の包丁を手にし、すぐに投げた。投げられた包丁は生きているかのように動き出し、周囲のゴブリンに斬りかかった。
「包丁が勝手に! リミス、これは……スキルなのか?」
ムラサメがこう聞くと、リミスは操っている包丁を操り、それを手にした。
「そうよ。これは私のスキル、<フワフワタイム>。手にしたものを一分間だけ、自由自在に浮かしたり飛ばしたり、操ることができる」
話をしたリミスは包丁を上に投げた。ゴブリンたちはリミスがフワフワタイムを使う前に倒そうと考え、弓矢を放った。だが、リミスは飛んでくる矢を剣で払い、投げた包丁を操ってゴブリンに攻撃した。勝てないと察したゴブリンたちは逃げようとしたが、リミスは魔力を開放し、前に突き出した左手から強い炎を発した。炎を浴びたゴブリンたちは、焼かれて灰になった。
「く……クソ! 俺の部下が!」
「泣き叫ぶなよ腐れ外道」
ムラサメはそう言って、デカブツゴブリンの顔面に向かって蹴りを放った。攻撃を受けたデカブツゴブリンは、鼻血を流しながら後ろに倒れた。
「腹に攻撃をしてダメージがないなら、他の場所を狙って攻撃すればいいだけだ。お前が考えた防御策も、軽く頭を使えば簡単に突破できる」
「ぐ……この猫女が!」
デカブツゴブリンは感情に任せ、近くにあったナイフを手にし、ムラサメに向かって投げた。ナイフが飛んでくると察したムラサメは近くにあったお盆を手にし、それを盾にしてナイフを受け止めた。
「悪あがきはおススメしないぜ。どんなことをしても、鍛えていない弱っちい奴が、各上に勝つことは不可能なんだからさ」
「俺が下?」
「そりゃーそうだよ。お前は弱いゴブリンを引き連れているだけの、小さなお山の大将。狭い世界の中で威張ることしかできない、間抜けな大将さんだ」
ムラサメの言葉を聞き、デカブツゴブリンは怒りの咆哮を発した。その時、どこからか包丁が飛んできて、デカブツゴブリンの腹に刺さった。
「あがっ! ううっ!」
「おいおい、自慢の脂肪は最高の防御じゃなかったのか?」
「ぐう……黙れ!」
デカブツゴブリンは怒りだし、息を荒げた。そんな中、リミスがムラサメに近付いた。
「雑魚は処理したわ。あとはあいつだけ。それよりも、あんたわざと手を抜いて戦ってない?」
「余裕だよ余裕。とっちめる前に、肉体的にも精神的にもこてんぱんにしないとな」
と答え、ムラサメは笑みを浮かべた。
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