水中のダンジョン
「頑張ったでしょ!ほめてほめて!」
「あ、うん!よく頑張った!後で魚かなにか食べに行こうか!」
「わ〜い!」
と、マイがはしゃぐ。
そんなマイを横目に周りを見渡すと、クリオネの残骸が散らばっていた。
言葉に表すなら、死屍累々、だろうか。
「えっと、、片付け手伝いましょうか?」
と聞くと、
「かまわねぇよ、討伐してもらったから片付けは俺らがやるわ。」
「あ、はい、失礼しました。」
俺はマイを連れ皆と帰ろうとする。
「じゃあ皆帰ろうか、、」
「おう、、やっぱ皆規格外な奴らばかりだなぁ、、自信なくすぜ、、」
と、ガイアが言うが、
「ドラゴンと真正面から戦えるプリーストだって、
そのドラゴンの攻撃を防げるクルセイダーだって、
そのドラゴンに大ダメージを与えるウィザードだって、かなりの実力なのを
忘れないでほしい、俺は僅かな支援でいっぱいいっぱいだよ、、」
とほほ、としながら言うと、
「大丈夫だよ!クロだって十分皆を支援してくれてるじゃん!」
と、ミナが撫でてくる、
君には年下に見えてるだろうけど、俺中身40代のおっさんやねん、、
「じゃ、いこっかマイ」
そう言い振り返るがマイはどこにも居なかった。
またどっか行ったのか?と思っていると、、
ふと地面を見ると紙切れが落ちていた。
人形代だった。
「あ、なるほど、遠距離から呼ぶと一定時間で帰るのね。」
「へぇ、そんな仕組みになってるんだ。」
と、エナは感心していた。
宿に戻ると、
「おかえり〜!!」
と、マイが突っ込んでくる。
「うお!?」
ドサッ
「ただいまマイ、ごめんね急に呼び出したりして、、、」
「おかえりなさいませ、主。今よろしいですか?」
と、ルナが聞く
「ん?どうした。」
ルナはどこから取り出したのか、パンフレットを見せてくる
「ここの冒険者ギルドで入手しました、なんでもここ、水の都市ルクタには、
水中に発生したダンジョンがあるそうで、あまり良いものは出ないそうですが、
10階層程度で、ボスドロップでは飾り物が出るそうで、
運が良いと、〘水竜の腕輪〙が出るそうですよ。
水中活動を補正してくれるようで、
入手しておいて損はないと思うのです。」
へぇ、、そうなんだ。
「じゃあ行ってみようか、急ぐ旅でもないし。」
「はい!では早速参りましょう!」
と、いうルナだったが、エナが言った言葉で固まった
「これ、、上限4人だな。私達でいっぱいだな。」
「そうか、じゃあお前らには申し訳ないが待機ということで、、」
全員がっくりしていたので、提案してみた。
「じゃあお前らでパーティー組んでみたらどうだ、
6人いるから、1パーティーは作れるだろ?」
すると式神達は固まって相談し始めた。
5分後、話がまとまったようで、
マイ、南雲、ルナ、玄武で行くそうだ、
大百足の玄武は、
「儂はずっと山におったのでなぁ、海を見てみたいのじゃ。」
と言っていた。
そして留守番のウロボロスとラース。
「儂は主が窮地に陥ったときのため、いつでもお待ちしておりまする。
あと、あの女狐と一緒にいたくはない。」
「あら、珍しく意見が合いましたね、私もあなたとご一緒は御免ですわ♪」
相変わらずルナとウロボロスは馬が合わないようだ
ラースは
「私は水が苦手で、、勘弁願います、、」
///速報 ラース、 \\\
\\\ 水が苦手だった ///
凄まじいギャップである。
ラースはやんわり断っていた。
「じゃあ、ラースとウロボロスは留守番、マイ達は1時間位後に来てくれ、
同時に入ると、多分速攻攻略するお前達に追い抜かれるからな、
時間差を考えて、後に来てくれ。」
「は〜い!」
「じゃあマイ、儂らと屋台巡りでもするか?」
「うん!」
あ、すっごい孫とおじいちゃんだ。
孫に激甘じいちゃんだ。
遠目から見たらルナとマイは親子に見えなくも無い。
あ、やっばい、マジで家族に見えてくる。
「じゃ、じゃあ先行ってるわ!」
「はい!行ってらっしゃいませ!」
かくして、俺達は行こうとしたが、、
「先霊力貯めてからでいい?」
俺は30分休憩を申請した。
〜〜〜
ザザ〜ン
「道も何も無いけど、、ここだよな?」
と、エナに確認すると、エナは地図を見比べながら、
「この辺に受付があるそうだ。」
そう言い辺りを見渡す
「あれ、、か?」
テーブルに男が座っており、
受付の紙が張ってある。
「すいません、このダンジョンに入りたいのですが、」
すると受付の男が言う
「かしこまりました、冒険者証をお願いします。」
、、、あ、そうだよな、冒険者証いるよな、
良かった〜、王都で国王陛下に式神達の分の冒険者証も貰っといてよかった。
「これで。」
そういい冒険者証を提出すると、
受付の男が目を丸くした
「え、Aランクでしたか、確認できました、行ってらっしゃいませ!」
さっきまでの受付より圧倒的な速度で終わった受付、
その後、俺達は魔導具を貸し出された。
「帰還した際、受付に返却をお願いします。」
腕輪型の魔道具には、管理番号が刻まれていた。
これなら確かに、窃盗してもその人は指名手配になるわけだ。
そうして海の前に立つ
「、、これ大丈夫なのか?」
「なんだガイア、怖いか?」
と、茶化すと
「こ、怖くねぇし!」
そういいザブザブと入っていった
「じゃあ行こっかクロ。」
「あぁ、そうだな。」
キュイン!キュイン!
「よし、じゃあ私も。」
キュイン!
と、俺達は魔道具を起動し
「うわぁ不思議な感覚、」
ガイアが叫んだ
「えぇ!?これそうやって使うのかよ!?」
「受付で説明されたろ、聞いてなかったのか?」
「ウッ、、」
ガイアは聞いていなかったらしい。
ブツブツ文句を言いながら水中呼吸の魔道具を起動する
キュイン!
「うわっ!?服に染み込んだ水が一瞬で乾いた、、」
と、ガイアが感心していると、
「じゃあ潜るぞ。」
と、俺が一歩踏み出す。
(海を泳ぐなんて久々だな、だが、俺は高校時代水泳部だったのだ、
全国大会にだって行けるくらいには上手いのだよ。
会社員になってからも月イチで水泳はしている!
今思えば水泳でついた体力で営業部でも働けていたんだよなぁ。)
そんなことを考えながら、自信満々に海に突入した。
その時だった。
「ぼがばべびばぶべぼばびべぼ!!!!???」
普通に溺れた。
「クロ!!??」
嗚呼、忌まわしき猫の体よ、
人型になって尚、泳げないのか。
仕方なく、俺はミナに抱えられながら潜っていった。
「おぉ、ここが水中か〜、不思議な感じ〜。」
と、ミナが言う
「いやぁ、すっかり忘れていた。猫の獣人は、大抵が水に沈んでしまうから、
無理に泳ごうとすると浮かべなくて溺れてしまうと聞いたことがある。」
なんだよそれ、畜生。
「あれじゃねぇか?魔石灯がある。」
そういいガイアが指を指した方を見ると、
「あれだな、いこう。」
というエナについていく
そして、ダンジョンの入口をくぐった
中も水で満たされており、俺はミナから離れられなさそうだった。
「思ったより明るいな。」
と、俺が言うと、
「あぁ、だが早速お出ましのようだぞ」
「ありゃぁ、、魚人か。」
ガイアが支援魔法を発動したようで、体が軽くなる
最も、俺は泳げないので意味はない
「よし、俺もやるか、〘珪槍〙!」
大地から大きな槍が突き上げ、、、無かった。
「あれ、、?」
そして地面を見て気がつく。
ダンジョンの壁は破壊できないのだと。
「床からケイ素を抽出出来ねぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「まかせて!〘ライトニング〙!」
「え!?あ!?待て!」
その瞬間稲妻がほとばしり、雷撃が加わった。
その場の全員に。
『『あばばばばばばばばばば!!!!!???』』
当然だ、ここは海中、電解質である塩化ナトリウムが溶けている水中だ。
なんと俺達は最初の雑魚敵で半壊するという悲惨な事件が起きた。
〜〜〜
「か、からだがしびれる、、」
「ご、ごべんね、、」
「だ、だだだ、大丈夫だ、、回復魔法をかける、、」
「し、死ぬかと思ったぞ、、」
そしてガイアが言う
「ひとまず、麻痺耐性のバフをかけておくから、、ミナは極力雷系の魔法は控えてくれ、、」
「うん、ごめんね。」
そう言いながら俺達は階層を上がった。
先程の雷撃魔法は中々の威力で、
1階層の魔物は大半が壊滅、
2階層の魔物も気を失っていた。
「う〜ん、流石はミナの魔法、素晴らしい威力だな。」
「あぁ、クルセイダーの私の体力を5割持っていかれた。」
「俺は身代わりの形代無かったら普通にショック死してた。」
「うん。」
「ごめんってぇ〜、、」
エナはともかく、体力が低い俺とガイアは身代わりの形代無しならもしかしたら逝っていたかもしれない
「もう気にしていないから大丈夫だ!元気出せ!申し訳ないと思ってるなら、ダンジョン出た後
なんか奢ってくれ。」
現金なやつやなガイア。
まぁ、それくらいのテンションで良いだろ。
「3階層だ、行くぞ!」
そう言い上がると、
「、、サメだな。」
「さめ?アレはシャークンっていう魔物だよ。」
んだそれ。
「素早いからすぐに仕留めよう」
そういいエナが出ようとする
「雷以外かぁ、、私、炎と雷しか使えないのにぃ、、」
そう考えると、ミナと俺は水中だとあまり役に立てないかもなぁ。
そう思いながらエナとガイアを眺めていた。
水中で攻撃する方法かぁ、、
雷といえば、
空気は絶縁体らしい。
雷が落ちる際は、電力に耐えきれず、電力が一気に放出される落雷として発生しているらしい。
その際、本来電気を通さない空気は、絶縁破壊により電気が通電するようになるのだとか。
空気か。
「エナ!ガイア!一旦下がれるか?」
「なんだ?」
「作戦がある!戻れ!」
そう言い、エナとガイアが下がった。
「皆集まってくれ。ミナ、合図と同時に、全力で雷撃魔法を発動してくれ。
出来れば、一撃必殺じゃなくて、広範囲に広がる普通威力の魔法だ。」
「え!?でも、、」
「いいから、大丈夫だ。」
「うう、、分かった、信じるよ!」
俺は、全力で集中し、元素を制御した。
俺らの周りの水、H₂Oだ。
2つの水分子をイメージする。
2H₂O→2H₂+O₂
水素と酸素に分離させる
瞬間的に俺は空気の領域を生み出した。
「ミナ!!今だ!!」
「〘ライトニング・チェイン〙ッ!!!」
俺達の周りの海水に電撃がほとばしった。
しかし、俺達には通らない、なぜなら、電解質の海水と違い、
空気は絶縁体。
電気は基本通さない。
瞬間的に電気が走った後、水が引き戻ると、
「うおっ!?こりゃあすげぇ、、」
ガイア達は息を飲んでいた
「殆どの魔物が動けなくなってるじゃないか!」
魔物は、意識はあるものの、動くことは出来ていなかった。
そもそも雷撃系の魔法が空気中に放電されるのは、術者が発生させた雷撃が、
術者の魔力を伝って放電されているからだ。
うまく使えばこんな芸当だって可能なのだ。
俺達は解体用の短剣で動けない魔物を片っ端から撃破、
笑えるほどレベルが上昇していく。
俺のレベルが30を超えた辺りで、
俺等は10階層手前まで来ていた。
「いやぁ、、5階層までは楽しかったけど、
6階層からはもはや作業だったねぇ」
「ホントだな、私、ここだけでレベルが6も上がったぞ!」
「俺は7上がった。」
「わたし8~!」
「20上がった。」
「「「・・・」」」
「なんだよ、悪いか。」
「いいんだよ、クロ、レベルで人の価値は変わらないから、、」
「そんな同情するような目線やめて、、」
基本レベルは、低ければ低いほど上がりやすいものなのだ。
しょぼくれていたらボス部屋のドアが開いた
「ここのボスは、情報によるとクラーケンという魔物だそうだ」
イビルフィッシュとはようするにタコだ。
まぁクラーケンのイメージ通りだろう
「クラーケンはドラゴンよりは弱い、私達なら大丈夫だ!」
そういうエナのお陰で士気は万全。
「よっしゃ!敵を瞬殺して帰って酒でものm
「グルァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」
気楽に言うガイアの声は、ボスによりかき消された。
そこに居たのは、長い体と、鱗に覆われた巨大なクジラのような魔物だった。
ダンジョンは空間が歪んでいる、
外より中のほうが広いのはそのためだ。
水中がくっきり見えるはずの魔道具を持ってさえ、
奥が見えないほど広い水中を遊泳する巨大クジラ、
全長は500m~700mあるかもしれない。
震えながらエナに聞く
「エ、、、、、、エナ、、、ク、、ククク、、クラーケンっって、、ああいうの?」
「い、、いや、、嘘だろ、、、なんで、、クラーケンは大型のイビルフィッシュ型の魔物のはずだ、、」
イビルフィッシュ、、要するにタコだ。クラーケンは俺のイメージ通りだった。クラーケンは、、
ガイアは震えながら言う
「ま、、まさか、、シーサーペントか、、、?」
俺は、震えながら手を掲げ、暗黒の水中に手を伸ばし呟く
「〘鑑定〙」
リヴァイアサン
海の化身とも呼ばれる、厄災級の魔物
はるか昔、海が魔王の領土では無いのは、
リヴァイアサンのせいで手が出せなかったからとさえ言わしめる、
生ける大災害。姿を見たものは半狂乱状態となり、状態異常 パニックを引き起こす
鑑定不能
「リヴァイアサンだ、、、」
俺は恐怖で震える声で言った
「リヴァイアサン!?なんでこんなところに!?
私達では到底敵わない!SSランクの魔物だぞ!!?」
「ドアは閉まってて開かないよぉ!!!」
ミナが半泣きで報告する
「くっ、、、仕方ない、脱出スクロールを使う!」
エナが荷物からスクロールを出し、使用するが
「なんで!!?燃え尽きただけなんだが!!?」
俺は周囲に向かって鑑定を行いまくった
「これは、、〘空間閉鎖〙!?」
空間閉鎖
転移 脱出 通信をすべて外部への脱出を断ち切り、封じる結界。
「これじゃあ、、空蝉の形代も使えない、、」
そう直感した。
「他の皆を!!!」
そう言い、俺は荷物をまさぐった
「あった!形代が、、」
そう思い、念じた
「急急如律令!ウロボロス!助けてくれ!!」
シン、、、
な、、
まさかこれすら封じるのか、、
「急急如律令!マイ!南雲!ルナ!玄武!」
シン、、、
ダメだ、、通じない、、
「ど、どうする!?どうしたらいい!?」
ガイアは混乱したように言う、
「落ち着け!!あぁ、、なんでこんな!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!出してよぉ!!!!」
状態異常 パニック
錯乱 動揺 混乱 魔法不全 呼吸困難 神経麻痺 失神 動揺 憤怒
のいずれかを引き起こす状態異常、
状態異常解除魔法による解除は出来ず、高位回復魔法か、
聖女の祈りによる解除は可能。
おそらく、ガイアは混乱、エナは憤怒、ミナは錯乱、俺が魔法不全を引いているのだろう。
俺は焦りを覚えながらいろんな手段を試したひとまず
「結界術〘秘匿結界〙!」
秘匿結界
隠蔽術が施された結界を展開する術
通常の結界より霊力を大きく消費する。
ゴリゴリと減る霊力、持って1分弱か、、
どうする、、どうする、、
動揺する意識を必死に抑える、結界術は魔法じゃないため発動は出来る、
ならば式神召喚だって出来るはずだった、
でも、式神召喚を使っても、
失敗しました
としか出なかった。
式神呼び出しも無反応、
能力を封じられた俺はなにも出来ない、、
でも唯一冷静に思考ができる俺がどうにかしなければいけない!
そう決意し、上を見上げた
その時
「グエェェェェェェェェェェ!!!!」
リヴァイアサンが咆哮を上げる
その瞬間
ガッシャァァァン!!!
「あ、、」
結界術は、ガラス細工のように、儚く砕け散った。
リヴァイアサンと、目が合ってしまった。
「あ、、あ、、、、」
震える体、状態異常パニックを再度付与されたようだ、
意識がとっ散らかる
思考が出来ない
「高位の冒険者の、、死因の第一位は、、」
慢心
俺は知らない内に、
油断していたのかもしれないな。
巨大な口を開け、コチラに接近するリヴァイアサンを見届け、
俺は目を静かに閉じた。
ごめん。
end
ガッシャァァァァァァァァンン!!!!!
昏い海中に、
一筋の光が差し込んだ。
『儂の主とそのご友人にィィィィ!!!
なにさらしてくれとるんじゃこのクソ魚ァァァァァ!!!!』
八つの首を持つ大蛇が、ダンジョンにカチコミをけしかけたのだ。




