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呪われ黒騎士の英雄譚 ~脱げない鎧で救国の英雄になります~  作者: さとう
第四章

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魔装者との戦い②

 ラクレスの剣、モクレンの棍棒が激突する。


「ホホォォォ!! 儂の一撃をこうも容易く!! 楽しいのぉ、バショウ!!」

『ホッホッホ。久しぶりに血沸き肉躍る!!』


 モクレンの呪装備、『千変万化』バショウの声が聞こえてきた。

 モクレンは、棍棒を頭上でくるくる回転させて振り下ろす。

 ラクレスは剣で受け流そうとしたが、棍棒がいきなり巨大化した。


「なっ」

「『大根』!!」


 回避……は、間に合わない。

 ラクレスは背中から八本の『蜘蛛脚』を瞬時に権限させ、根を受け止めた。


「『黒ノ蜘蛛脚(ブラックタランチュラ)』!!」

「『麺』!!」

「なっ……っ!?」


 だが、瞬時に棍棒が細くなり、鋼線のような鋭い糸となり、ラクレスの蜘蛛脚、そして身体を切り裂いた。

 ラクレスは全力でバックステップ。だが、元の大きさに戻った棍棒でモクレンは連続突きを繰り出してくる。


「『筍』!!」


 棍棒の先端が鋭くなり、持ち手が自在に伸縮する。

 高速突き。ラクレスは剣で受けるが、鎧に何度も掠って傷がつく。

 

『よけろよけろ!! ったく、オレ様と似たような能力、めんどくっせえな!!』

「形状、変化……っ!!」

『違う。オレ様みたいな万能じゃねぇ。棍棒の大きさだけを変える力だ。伸びてるように見えるのは、巨大化させて質量を増大させた上で細くして、質量はそのままに細くすることで伸ばしたように見えてるんだ。こいつ、脳筋そうな見た目のくせに、能力の使い方を熟知してやがる……!!』


 突きの連続。

 ラクレスは呼吸を整え、両足の裏を『ばね』のように変形させ跳躍。

 通常よりも高く飛び、剣を投げ捨てた。

 そして、両手をモクレンに向ける。


「む!!」

「『黒ノ糸(ブラックスレッド)』!!」


 放たれるのは、漆黒の糸。

 粘着をイメージすることで、本当の蜘蛛の糸みたいに絡みつく。

 モクレンの腕に糸が付着したところで、ラクレスは連続で糸を発射する。


「連射だ!!」

「むぅ!? おのれ、奇妙な技を……だが!!」


 モクレンが腕を引いてラクレスを引き戻そうとするが……なんと、糸は切れることなく伸びた。

 さらに、ラクレスは背中から『黒ノ百足(ブラックセンチピード)』を二本生成、モクレンの足、体に巻き付ける。


「拘束……!!」

『おいおいラクレス、捕まえるだけじゃ勝てねぇぞ。こいつの心臓を……」

「殺さない」

『……はぁ?』


 ラクレスは、糸でがんじがらめ、百足が巻き付いて動きの取れないモクレンに向かって言う。


「こいつは『情報』だ。持っている情報を全部吐いてもらう!!」

『……いやいや。馬鹿か!? そりゃ情報は貴重だろうけどよ、こんな脳筋野郎が持ってる情報なんてたかが知れてる。今大事なのは、こいつを殺して、オレ様、お前が力をつけることだろうがよ!!』

「その考えも間違ってないけど、今は情報も同じくらい大事だ!!」

『こんの真面目野郎が……──ラクレス!!』

「え」


 次の瞬間、ラクレスの背後から大量の『毛』が現れ、ラクレスの全身を一気に拘束した。

 両腕、両足、身体に髪の毛が巻き付く。おかげで百足と糸が消え、モクレンの拘束が消えてしまう。


「な、なん……」

「うふふ……捕まえたぁ」


 突如、ヘッドドレスをつけた女が現れた。

 異常なまでに髪が伸び、ラクレスの全身を拘束している。

 首が締まり呼吸が困難になる。すると、ラクレスの目の前にカメレオンのような男が現れた。


「さて、拘束完了……次は、誰が彼の呪装備をいただくか、ですね」

「貴様ら、儂の邪魔を……!!」

「おおっと。モクレンさん、あなた、お忘れですか? 我々は仲良しこよしの集団ではありません。あなたの戦いを見守る理由なんて最初からないのですよ。大事なのは、われら六魔将の配下の誰が、最後の呪装備を手に入れるか、そういうことです」

「ふふふ。一番有利なのはあたし。このまま魔界まで彼を連れて行けば、それで勝ち……」

「おっと、そうはさせませんよ?」


 すると、ジュリアンの背中にナイフが突きつけられた。

 『透明化』で消えていたナイフ。魔力による操作で浮遊し、いつの間にか弱点である心臓に突きつけていたようだ。


「非力なもので、卑怯な手こそ真骨頂なのですよ」


 インビジブルはにやりと舌を出し入れする。

 ジュリアンは舌打ちし動けず、モクレンは立ち上がり根を構える。

 ぎちぎちと、ラクレスの全身に髪が食い込む……が。


『おい』


 底冷えするような声だった。

 ラクレスではない。ダンテの声が響く。


『黙って聞いてりゃ、オレ様を無視して楽しそうにしやがって……』


 ゾワゾワと、ダンテの鎧が脈動する。

 

(ダンテ、おい!!)


 ラクレスの意志では動かせない。完全に、ダンテがすべてを支配していた。


『オマエら、誰を相手にしてるのかわかってんだろうな……!!』


 兜の目が深紅に輝いた。すると、髪の拘束が少し緩む。


『ラクレス、今だ!!』

(──そういうことか!!)


 ラクレスは、背中から『黒ノ蜘蛛脚』を一気に広げて髪を切断し、両腕に『黒ノ百足』を巻き付け振るい、ジュリアンとインビジブルを弾き飛ばす。

 そして、態勢が崩れたジュリアン、インビジブルに両掌を向け、『黒き閃光(ブラックレイ)』を発射。二人が防御したが、ラクレスとの距離は離れた。

 ラクレスは剣を拾って構え、蜘蛛脚ではなく『黒ノ蝙蝠羽(ブラックウイング)』を生やす。


(ダンテ、助かった)

『おう。脅し、ビビらせるくらいはできるぜ。でも、オレ様がどうこうできるほど力はねぇ』

(ああ、あとは任せろ)


 と、ラクレスは返事をしたが……困惑もあった。

 敵は、六魔将直属の魔装者だ。しかも数は三人……これまで戦ってきた魔装者の中でもトップクラスの実力者だ。

 それが、ダンテの威嚇で竦み、驚き、恐怖し、震え上がった。


(…………)


 ダンテは、何者なのか?

 ただの呪装備ではない。それは間違いではない。

 ラクレスは、小さく首を振る。

 すると、インビジブル、ジュリアン、モクレンがラクレスに向き合った。


「どうやら、ただの呪装備ではない……ですね」

「……共闘、する?」

「黙れ。貴様らのような卑怯者の手など借りんわ!!」


 三対一は確定。

 ラクレスは呼吸を整え、剣を向けた。


「───よし、いける」

『おいおい、どうすんだよ。とりあえず、個別撃破を……』

「いや……三対一でいい」

『は?』


 ラクレスは、三人に向けていった。


「かかってこい。お前たち三人……俺が一人で相手をする」

「何ぃ?」

「ほう……面白いですね」

「へえ、舐めているわけ?」


 三人の戦意が増大する。

 だがラクレスは臆さずに言い放った。


「さあ……償いの時間だ」

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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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