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呪われ黒騎士の英雄譚 ~脱げない鎧で救国の英雄になります~  作者: さとう
第四章

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強くなるために

 現在、ラクレスは専用訓練場……というか自宅の庭で、静かに瞑想していた。

 すると、背中部分の鎧が盛り上がり、まるで蜘蛛の脚のような八つの触腕が生み出される。


『ケケケ……『八又蜘蛛脚(ブラックタランチュラ)』、とりあえず創造はできるようになったか』

「ぐ、っく……!!」


 ラクレスは人間。背中に八本の蜘蛛脚が生えたことなどない。

  触腕を精製し操作するという複雑なことをするには、イメージ力が足りない。


『とにかく、毎日創造しろ。そして少しでも動かせ。それが自然になるように、毎日、毎日だ』

「ああ、わかってる……!!」


 ラクレスは、蜘蛛脚を生やしたまま、背中でガチャガチャと動かす。

 そして、両脇の下から足を突き出し、訓練用に置いた丸太に突き刺して持ち上げ、両肩の上から伸ばした足でさらに突き刺し、勢いを付けて真上に投げる。

 そして、残りの四本脚を中心に集め、落ちてきた丸太を同時に引き裂いた。


「っぶは、はぁ、はぁ!!」


 バラバラと丸太が落ち、蜘蛛脚も解除される。


『はい次、糸!!』

「ああ、これは得意だ」


 ラクレスは、両手から粘着質のある蜘蛛糸こと『黒の糸(ブラックスレッド)』を射出。別の丸太にひっつけ、思いきり引っ張る。

 丸太は空中を移動、ラクレスに向けて飛んでくる。

 そして、ラクレスは剣を抜き、丸太に向かって連続で攻撃。

 バラバラになった丸太が地面に落ちないうちに、左手のひらから『黒い閃光(ブラックレイ)』を発射、木片が砕け散り、燃え尽きた。

 これら一連の流れを見て、ダンテは言う。


『がむしゃらに創造して形状変化するより、ある程度固定しちまって、それを確実に出せるようにした方がいい。オレ様みたいに自由自在ってわけじゃねぇしな……オレ様の見たところ、ラクレスは『蜘蛛』に特化した変化をさせた方がいい』

「蜘蛛、か……」


 糸を出し、八本の脚を背中に生やす。

 正直、人間離れしすぎている気がした……が、不思議だった。


「なんというか、イメージはしやすいんだよな。蜘蛛」

『ほう』

「特に、糸を出すのはもう慣れた」

 

 ラクレスは右手からバシュッと黒い糸の塊を飛ばす。

 塊が壁に触れる直前、一気に開き、まるで八角形の蜘蛛の巣のように展開された。


「新技、『黒の巣(ブラックネット)』だ。どう?」

『へえ……やるじゃねぇか」

「まだあるぞ。それに、蜘蛛だけじゃない、やっぱり俺は騎士だから、剣を応用した技も使う」

『ケケケ、固まってきたな。じゃあ、訓練を続けるぜ』

「ああ」


 この日、早朝から数時間……ラクレスは力を使いこなすための訓練に没頭するのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 お昼前、ラクレスは休憩をしていた。

 庭の椅子に座り息を整える。


「……汗、掻かないのはいいけど」

『ケケケ、オレ様が舐め取ってるからなあ?』

「その言い方やめろ。鎧が吸収してる、でいいっての」


 ラクレスは、兜をコツンと叩く。

 そして、ため息を吐いた。


「はあ……」

『どうした?』

「いや。呪装備担当にされたはいいが、もう低級の呪装備は人間界にも魔界にもない。で、次に来るのは魔界からの刺客ときたもんだ。陛下も、団長も険しい顔してた……」

『……魔神の復活か。ンなことになったら、今の人間じゃ手に負えねえぞ。オマエを放り出すわけにもいかなくなったってわけだ。ケケケ、今ならどんな無茶でも言えば通るかもしれねぇぜ?』

「アホかお前は。とにかく、俺を狙ってくるならチャンスでもある」

『ああ。ご馳走が向こうから来てくれるんだ。ありがたいぜ』

「…………なあ、ダンテ」

『あ?』

「今の七曜騎士じゃ、魔人たちには勝てないのか?」

『無理だね。あの厳ついオヤジと、色っぽい姉ちゃんくらいかな』


 イグニアス、そしてエクレシアのことだった。


『あの二人は別格だ。今のオマエじゃ歯が立たねえ。恐らく、神器も第四、第五の解放まで済んでる』

「……神器はどこまで開放できるんだ?」

『さあな。呪装備の解放と同じなら、七段階あるはずだけどな』

「な、七段階……」

『呪装備の七解放……魔装、決戦技、軍勢、第二魔装、第二決戦技、超越技、そして魔王武装。オマエの戦ったヴァルケンは決戦技まで習得していた。で、レイアースのお嬢ちゃんは軍勢を習得した……厳ついオヤジ、色っぽい姉ちゃんはさらにその上と見て間違いねえ』

「……冥府六将は、どこまで」

『知らん。だが、第二決戦技くらいは習得してるだろ』

「……今の俺は?」

『オマエ、というかオレ様は特別。常時魔装してるからとりあえず第一段階。で、決戦技はまだだ。つまり、雑魚よザコ……言ってて悲しくなる』

「早急に、技の開発しないとな」

『ああ。でも、戦闘スタイルは固まった。あとは、実践の中で磨きをかける』

「実践? 魔獣と戦うのか?」

『それもある。だが、それ以上にいるだろ……倒しがいのある連中が』


 ダンテがそこまで言うと、玄関のベルが鳴った。

 ドアを開けに行くとそこにいたのは。


「失礼する。ダンテ、その……訓練しないか?」

「オレも同じだ。ダンテ、強くなるために必要なことをしに来た」


 レイアース、そしてウルフだった。

 

『ケケケ、お嬢ちゃん、んでケモノ野郎の潜在能力はなかなかのモンだ。こいつら利用して、オレらも強くなるぜ』

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月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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