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呪われ黒騎士の英雄譚 ~脱げない鎧で救国の英雄になります~  作者: さとう
第四章

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やるべきこと

 謁見が終わり、ようやくラクレスは自宅に戻って来た。

 やるべきことはあるが、数日の休暇を与えられ、さらに報奨金も出た。

 ラクレスは、久しぶりに自宅に戻り、ベッドに身を投げ出す。


「ふぅ……」

『ケケケ、お疲れだねぇ』

「そりゃ疲れるだろ……砂漠で戦って、そのあとすぐに早馬でソラシル王国まで戻って、休む間もなく謁見……で、ようやく一人になれたんだ」


 そう言い、ラクレスは身体を起こす。


「そういえば、ヴァルケンとの戦い……お前がやったんだよな」

『ああ。気ぃ失ったオマエの代わりにな』

「その、感謝する……お前のおかげで生きている」

『……まあ、気にすんな。それに、変換したオマエの命と、食らった呪装備のチカラもまとめて使っちまった。あのマンティスとかいう雑魚呪装備の魂を補填したが、命にだいぶ力を割いたから、あんまり強くなってねぇからな』

「いいさ別に。呪装備は、これからもっと得ることができる。運がいいのか悪いのか、どうやら『闇』のダンテは、呪装備専門の仕事になりそうだ」

『……ケケケ。そりゃ確かにな。オマエの命を早く補填して、オレ様を自由に脱ぐことができるといいなぁ?』

「……お前が言うと、不安しかないな」

『うるせ。命の恩人に対してなぁ』

「はいはい。それより、少し小腹空いたな……メシでも作るか」


 そう言って立ち上がると同時に、ドアがノックされた。

 玄関に向かい、ドアを開けるとそこにいたのは。


「……よう、ダンテ」

「え? う、ウルフギャング……殿?」

「ウルフでいい。入るぞ」


 と、いきなりウルフギャングが入ってきた。

 ポカンとするラクレス。ウルフギャングはソファにドカッと座ると、どこからか酒瓶を出す。


「獣王国ヴィストの酒だ。お前、酒は飲めるんだろう?」

「えと……まあ、その、うん」


 いきなりすぎて、何を言えばいいのかわからない。

 とりあえず、グラスを二つ、戸棚にあったクッキーを出し、対面に座った。

 ウルフギャングは酒瓶をラクレスに向けるので、グラスを向ける。

 琥珀色の液体が注がれ、今度はラクレスがウルフギャングに注ぐ。

 獣人の、毛に包まれた手は大きく、手に持つグラスが小さく見えた。


「乾杯」

「あ、ああ……乾杯」


 酒を飲む。

 かなり度の強いブランデーだった。ラクレスは一口だけ飲み、グラスを置く。

 とりあえず、これだけは聞かねばならなかった。


「な、何か用か?」


 ウルフギャングは、すでに飲み干しおかわりを注いでいた。


「……お前と飲みたかっただけだ」

「え」

「それと……聞いたぞ。これからお前は、呪装備専門の任務に就くと。それにレイアース、彼女が神器の第三解放にも至ったとな」

「……第三解放」


 第一解放『瞬着(しゅんちゃく)

 第二解放『決戦技(けっせんぎ)

 第三解放『女神軍勢(レギオン)

 第一から第三まである以上、それ以上もあるのかと推測。聞いてみた。


「神器は、いくつまで解放があるんだ?」

「わからん。同じ七曜騎士でも、神器の能力については語り合うことはない。『瞬着』ですら、オレもレイアースも詳しく知らなかった」

「なるほどな……」

「ふ……お前は常に『瞬着』しているようなものか」

『ケケケ、このケモノ野郎、丸くなったじゃねぇか』


 ラクレスはブランデーを一口飲む。

 ウルフギャングは、早くも三杯目を飲んでいた。


「実は、獣王国ヴィストからの帰り道……神器の鎧を試そうと思い、魔獣と戦った。そこで、オレも『決戦技』に覚醒した」

「そうなのか。それはめでたいな」

「ああ……まだまだ先があるなら、これ以上ないくらい面白い。ダンテ……もしこれから先、呪装備の破壊任務に出向く場合、オレを連れて行け。きっと役に立ってみせる」

「……ああ、その時はな」

「では、もう一つ……友人として。何か困ったことがあれば相談に乗る。それと、腕が鈍らないよう、訓練相手になってくれるとオレも嬉しい」

「ふ、その時はぜひ。俺からも頼む」


 ラクレスは、ウルフギャングと友人のように語ることができて、とても嬉しかった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ウルフギャングが帰った。

 ラクレスはグラスの片付けをしていると、再びドアがノックされた。

 ドアを開けると、そこにいたのは。


「よ」

「……あ、アクア?」


 アクア・シュプリームだった。

 片手を上げ、何も言っていないのにずかずか上がり、ソファに座る。


「ちゃんと話しておきたいから」

「い、いきなりだな……」

「いいから、座って」


 アクアの対面に座ると、アクアは言う。


「アタシ、まだアンタのこと信用していないから」

「…………」

「だから、これから見張る。いい? 呪装備破壊の仕事があったら、アタシを誘いなさい。アンタを狙う魔人、今度こそ倒してやる」

「……それが本音じゃないのか?」

「う、うるさい!! とにかく!! 仕事ができたらアタシが行く!! レイアースじゃなくて、アタシだからね!!」

「あ、ああ」

「それだけ、じゃあね!!」


 アクアは、ずかずかと出て行った。

 しばし、アクアがいた場所を眺めるラクレス。


「な、なんだったんだ?」

『ケケケ。オマエのこと気に入ったんじゃね? 監視とか言ってたけど、ありゃ気になってる感じだ……ケケケ、抱くならオレ様は黙ってるからよ』

「アホか!!」


 ラクレスは、兜をごつんと叩いたが、自分が痛くなるだけだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ラクレスは、気分転換に散歩しようと屋敷を出た。

 屋敷と言っても、王城の敷地内。

 外に出てもいいが、今は全身真っ黒な鎧姿なので、どこへ行っても怪しまれる。

 とりあえず、城の中庭でも行こうと歩き出すと。


「あら」

「あ……」


 エクレシア、レイアースの師弟コンビが歩いていた。

 どうも、ラクレスの屋敷に向かっているような感じだった。

 エクレシアは、ラクレスの前で止まるとにっこり微笑む。


「お帰りなさい。ダンテくん」

「あ、ああ……ただいま」

「ふふ、レイアースが強くなって帰って来たけど……あなたも強くなったわね」

「……まあ」

「こほん。師匠、本題を」


 レイアースが、ラクレスとエクレシアの間に割り込むように言う。

 エクレシアはクスっと微笑み、ラクレスに言う。


「聞いたわ。ダンテくん……呪装備専門の任務を受けるそうね。そして、魔人との戦いも」

「……ああ」

「任務で呪装備破壊に行く場合、七曜騎士を一名連れて行っていいのよね? その時は、私も誘ってね」

「し、師匠!! ああもう、おいダンテ!! 呪装備の破壊任務が来たら、私も誘え!! いいな、約束だぞ!!」

「え、ああ……はい」

「あらら、レイアースってば」

「はい師匠、もう行きますよ!! ダンテは疲れてるんですから!! ではまたな!!」


 レイアースは、エクレシアの背を押して去って行った。


「……本当に、今日は何なんだ」

『モテ期ってヤツじゃね?』


 ダンテの適当な返事には、何も返さなかった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ラクレスは、中庭のベンチに座って休んでいた。


「ウルフ、アクア、エクレシアさん、レイアース……四人の騎士が、俺の任務に同行したいって」

『あと二人。ケケケ、このタイミングだと……』

「やあ」


 ダンテの予想通り、中庭にエリオが現れた。

 軽く手を振り、にこやかな笑顔を浮かべて。


「聞いたよ? キミ、これから呪装備専門の仕事をするんだって? あはは、面白そうだね、オレも仲間に入れておくれよ」

「……まあ、いいけど」

「なんだか疲れてるね。長居しない方がいいかな?」


 どうも胡散臭い。それがラクレスの、エリオに対する評価だった。

 ラクレスがあまり乗り気でないと悟ったのか、エリオは軽く手を振って何も言わずに行ってしまう。

 一人になったラクレスは、空を見上げた。


「七曜騎士、冥府六将、六魔神に、女神カジャクト……なんだかなあ、いろいろ複雑になってきたよ」

『ま、細かいことは気にせず、オマエは呪装備を喰い続ければいいさ』

「……そうだなあ」


 空は青く、このまま寝てもいいような、そんな気がするラクレスだった。

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月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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