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呪われ黒騎士の英雄譚 ~脱げない鎧で救国の英雄になります~  作者: さとう
第三章

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極凶悪級呪装備『紺玄金斗』カトレア①

 レイアースはロングソードの『光神器ルーチェ・デルソーレ』を、アクアは双剣である『水神器ナルキッス&ニンフィア』を構え、カトレアと対峙していた。

 白い髪、赤い瞳、そして黒い刺青のような跡。

 赤い瞳は、どこまでも無感情に二人を見ていた。


「水、光の神器……」


 カトレアが言うと、アクアの目元がピクリと動いた。


「アンタ、魔人なのよね。目的は?」

「呪装備の回収。まあ、ガワはいりません。強化のために魂が必要だった……狙っていた獣王国の呪装備が破壊されたので、代わりを」


 カトレアの視線は、ラクレスへ向いた。


「でも……それより優先すべきことが」

「優先? なに、もしかして……これとか?」


 アクアは自分の双剣を見せつける。

 女神の神器。七つしかない、半魔神にとっては忌むべき物だ。

 するとカトレアは。


「それは問題ありません。あなたも、あなたも……私の敵じゃありませんから」

「はぁ?」

「……聞き捨てならないな」


 アクアが睨み、レイアースも構えを変え特攻できるようにする。

 だが、カトレアは変わらない。


「女神の神器、そして使い手であるあなたたち二人はここで破壊します。でも……優先すべきは、あの黒い鎧のお方」

「はっ、お仲間だから連れ帰るとか? それとも、本当に仲間とか? アタシらをハメる罠だったとか?」

「アクア、貴様、まだそんなこと」


 レイアースが怒鳴るが、アクアは静かに言う。


「現実見なさい。敵は魔人、そしてダンテも魔人。疑わない方が不自然よ」

「……くっ」

「ご安心ください。彼は仲間じゃありません。むしろ……彼は敵であるからこそ、私たちが最も欲する情報を手にしている」

「「……??」」


 意味がわからず、アクアもレイアースも首を傾げた。

 カトレアは言う。


「『器』……私たち魔人、そして冥府六将、そして六魔神が求める物を、あの黒い鎧は知っています」

「……はあ? 器?」

「……どういう意味だ?」

「恐らく、あの魔人ではない。『暗黒鎧ダンテ』が知る何かでしょうね。あなたたち、あの鎧の意思から何か聞いていませんか?」

「「…………」」


 これは、情報収集だ。

 アクアもレイアースも気付いた。カトレアは、二人と会話することで、何か『情報』を得ようとしている。

 魔人。冥府六将。六魔神……カトレアは、かなり重要なことを話している。

 アクア、レイアースは互いに視線を合わせた。


(会話する。情報得るわよ)

(ああ。サポートする)


 視線でそれだけ会話し、二人は剣を下げた。


 ◇◇◇◇◇◇

 

「器って何?」


 いきなりの質問に、レイアースがギョッとした。

 ストレートすぎる。警戒させるのでは、と思った。


「女神の器。女神カジャクトの器のことです。あら……人間は知らないのですか?」

「知らないわよ、そんなの。ねえ」

「あ、ああ……」


 意外にも会話になっていた。

 レイアースがドキドキしながら相槌を打つ。


「女神の神器を使っているのに、女神の器のことを知らないなんて。ああ……まだそこまで神器を解放することができないのですね」

「はあ? 何よそれ」

「女神の神器は解放階位がありますよね。ある一定の解放をすると、女神カジャクトのことについてわかるはずなんですが」

「「…………」」


 レイアース、アクアは顔を見合わせた。

 当然、そんなことは知らない。


「やはりそうですか。というか、だからこそ、あなた方は私に勝てません。女神の知識もないあなた方が、私と戦えるはずありませんから」

「ああ? そんなのやってみなきゃわかんないでしょーが!!」

「お、おいアクア、情報、情報」

「ぐぬぬ……」


 レイアースは冷静だった……が、少し混乱する。

 女神の器。どこかで聞いたような気がしてならなかったのだ。


「……一つ、聞かせてくれ。その女神の器というのは、何に使うんだ?」

「女神の器は、世界のどこかに漂っている『女神カジャクト』の魂を降ろす器です。つまり、器を手に入れれば、女神カジャクトをこの世界に降臨させることができる。問題は、器が生物なのか、道具なのか、この世に存在する物なのか、六魔神でもわからないということ」

「……そして、その器の在処を」

「あの黒騎士ダンテは知っている、ということです」

「……マジで?」


 思わず、アクアとレイアース、そしてカトレアはラクレスを見た。

 だが次の瞬間、巨大な『カマキリ』のような何かが現れ、ラクレスと戦い始めた。


「おや、『魔装』を使うとは。油断したようですね……さて、私もそろそろ」

「待て。最後に一つ聞かせてくれ。お前たち魔人は、女神カジャクトを『器』に降ろし、どうするつもりだ」


 レイアースは、これが最も重要な情報だと思った。

 カトレアは、淡々と言う。


「決まっています。確実に殺すんですよ(・・・・・・・・・)。女神カジャクトは六魔神、半魔神、そして我ら魔人にとって最大の怨敵……その存在を抹消するために、我々は力を集めている。いずれ人間界に侵攻し、全てを破壊するために」

「「……な」」

「話は終わりです。では、始めましょうか」


 すると、カトレアの手に《壺》が現れた。


「行きますよ、『紺玄金斗』アズロナ」

『ええ。ふふ、久しぶりにたっぷりお話して、楽しそうね』

「ええ、楽しかったです。もう、思い残すことはありませんので」


 会話は終わった。

 アクア、レイアースは再び剣を構える。


「なんか、壮大な話だったわね」

「ああ。だが……決まったな。こいつらは明確な敵だ」

「そーね。格下扱いもムカつくし」

「よし……では、やるぞ!!」


 二対一、女神の神器と呪装備の戦いが始まった。

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月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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