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呪われ黒騎士の英雄譚 ~脱げない鎧で救国の英雄になります~  作者: さとう
第二章

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目覚めると

「…………ぅ」

「起きたか、ダンテ」


 目が覚めると、ベッドの上だった。

 全身鎧でのベッドは、なかなかシュールな光景である。

 ベッドの隣には、ウルフギャングがベッドの上に座り、窓から外を眺めていた。

 そして、ラクレスに身体を向けて言う。


「怪我をしていたようだが、鎧は脱げんし、どのような状態か医者にもどうすることもできなくてな……とりあえずベッドに寝かせた。身体の調子はどうだ?」

「あ、ああ……問題ない。あれ?」


 ラクレスは気付いた。

 身体に活力が満ちていた。妙な感覚に戸惑っていると。


『安心しな。足りない命を半魔神の魂で補った分の違和感だ。少しだけ鎧の力も強化されたぜ』

(強化、って……呪いが強まったってことか?)

『そういう認識でいい。とりあえず、問題ねぇな』

「おい、どうした? 怪我が痛むのか?」

「あ、いや……問題ない。感謝する」


 ラクレスはベッドから起き、腕や足を動かして確認。

 室内にはベッドが二つしかない。窓があり、外の光が刺していた。


「……あの後、どうなったんだ?」

「オレ、お前、レイアースが気を失い、クリスが助けを呼びに行った。呪装備は完全に破壊されたのをオレも確認した……任務は完了だ」

「そうか……よかった。レイアースとクリスは?」

「隣の部屋だ。レイアースも、疲労困憊で苦しんだからな」

「……ウルフ殿、お前は」

「オレは獣人だ。人間よりも体力、回復力はある。それにしても……」


 ガシャンと、ウルフギャングは神器『アシュトレト』を装備した手を見た。


「女神の神器に先があったとはな。まさか、鎧になるとは」

『まだ第一段階の封印が解除されたに過ぎねぇ。ケケケ、まだまだ成長するぜぇ?』

「……先があるということは、さらに先があるってことだ。もしかしたら、鎧の先もあるかも」

「ほう、確かにそうだな」

『おいラクレス、いきなりヒント与えるなよ。つまんねーな』

(いいだろ別に。それっぽく言ったけど、どうだった?)

『ま、黒騎士ダンテっぽかったな』


 ウルフギャングは、嬉しそうに言う。


「このことは七曜騎士で共有すべきだな。もしかしたら……団長は知っているかもしれんが」

「……」

「すまんな、お前も同じ七曜騎士だが、女神の神器を持たぬお前には関係のないことか」

「……いや」


 言えなかった。

 ラクレスもまた、半魔神の魂をダンテが食らったことで、鎧の強化と魔力が濃くなった。

 恐らく、もっと大規模な『形状変化』を使うこともできる……ラクレスは確信していた。

 ウルフギャングはベッドから降り、ラクレスと向き合った。

 そして、騎士の敬礼をする。


「七曜騎士『闇』のダンテ殿。これまでの非礼をここに詫びる」

「え……い、いきなりどうしたんだ?」

「オレは、ずっとお前を疑っていた。魔人だから……そして、オレの家族を奪った魔人と同じだからと、決めつけていた。だが……お前は違った。オレたち獣人のために戦い、騎士の誇りを見せてくれた」

「……そんな」

「我、七曜騎士『地』のウルフギャングは、貴殿を仲間と、友と認める。ダンテ……どうかこれからもよろしく頼む。七曜騎士として、そして友人として」


 ウルフギャングが、手を差し出してきた。

 ラクレスは身体がぶるっと震えた。感激し、涙が出そうになった。

 七曜騎士が、憧れの騎士が、自分を同格と、仲間と、友人と認めてくれた。

 そのことが嬉しく、ラクレスは差し出された手を握る。


「ああ、よろしく頼む……!!」

「ふ……」


 ウルフギャングが認めてくれた。

 この戦いで得た、ラクレスにとって一番価値のあることだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ドアがノックされ、レイアースとクリスが入ってきた。


「よかった。二人とも無事か」

「ああ、心配かけた。レイアース」

「……あ、ああ」


 レイアースが、どこか恥ずかしそうに顔を逸らし、ラクレスは「?」と首を傾げる。

 するとクリスがビシッと敬礼、ラクレスに言う。


「ダンテ様、ウルフギャング様。此度はご迷惑をおかけしました!! 私、何もできずに……」

「気にしなくていい。俺も似たようなものだしな」


 ラクレスが言うと、レイアースがムスッとして言う。


「お前はさっきもそう言ったな……確かに、呪装備を倒したのは私とウルフギャングだが、お前のサポートなくして達成することは不可能だった。それにクリス、お前も十分役に立った。そう自分を卑下するな」

「……その通りだ。ふう、この不毛な会話を終わらせていいか?」


 ウルフギャングが疲れたように言う。

 するとクリス、ラクレスの前で敬礼をする。


「ダンテ様!! 私、決めました!! 私をダンテ様の『準騎士』に任命してください!!」

「え……」


 七曜騎士は、それぞれ『準騎士』に『騎士』、『聖騎士』を側近に置くことができる。

 クリスは王族だが『準騎士』だ。七曜騎士の側近になる資格はある。

 するとレイアースが言う。


「いいんじゃないか。ダンテ、お前はまだ専属騎士がいない。ちょうどいいな」

「あ、ああ。だが……いいのか? 俺はまだ七曜騎士として何か仕事があるわけじゃないし……」

「問題ありません。私の訓練や、王族として私が保有している領地経営のお手伝いとかお願いいたします。あ、私の保有している領地なら、ダンテ様にあげられるかも?」

「い、いやさすがにそれは……」


 狼狽えるラクレス。

 クリスは騎士だが、王族でもある。女性だが王族としての仕事もあるし、自身が管理する領地もある……今回の功績で、ラクレスに与えるという話も出るかもしれない。

 

『ケケケ。面白そうなことになりそうだぜ』

(やかましい……ああもう、領地とか俺には分相応すぎる)


 すると、ウルフギャングが言う。


「その話はまた今度だ。これからのことだが……オレは残務処理があるから国に残る。陛下への報告はレイアース、ダンテに任せる」

「ああ、任せてくれ」

「よし。ではダンテ、クリス……我々は明日、ソラシル王国に帰還する」


 こうして、ラクレスの七曜騎士としての仕事が終わった。

 ウルフギャング、レイアースがラクレスを認め、呪装備の魂を喰らい、命を補填することもできた。

 すると、レイアースがラクレスに言う。


「ダンテ。少し話がある」

「え?」


 真剣な表情をしたレイアースが、ラクレスを見つめていた。

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月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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