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呪われ黒騎士の英雄譚 ~脱げない鎧で救国の英雄になります~  作者: さとう
第二章

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凶悪級呪装備『泥蟹』マッドカルキノス①

 巨大な腕を持つ八本足の鎧。

 全長五メートル、横幅だけでも十メートル以上ある。

 ラクレスは剣を構え、ダンテに質問した。


(凶悪級ってのは、ああいう形状が当たり前なのか?)

『こいつは目覚めたばかりってのもあるが、装備者の生命力をがむしゃらに吸ってるせいでこんな形状になっちまったんだろうな。本来なら、魔族の装備者が精錬した形状をイメージして、半魔神がそれを反映させるパターンだが……あの半魔神、どうやらデカ猫ちゃんを使い捨てるつもりだな』

(使い捨てって……)

『魔界へ帰る移動手段として乗っ取っただけだろ。魔界に行けば魔族はいるし、自分を使ってくれるちゃんとした魔人に出会えるだろうしな。だが……』


 すると、目の前にいる巨大で歪な『蟹』の腕が伸び、ラクレスたちに迫って来た。


「回避しろ!!」

「「ッ!!」」

「う、ぁっ」


 ラクレスが叫び、レイアースとウルフギャングが横っ飛び、クリスも遅れて飛び退き、巨大な手が地面を叩いた。


『どーやら、自分を封印した女神の眷属である人間を許すつもりはないらしいぜ。オレらで鬱憤晴らしてから魔界に帰るつもりだな』

(落ち着いてる場合か!! どうすればいい!?)

『核を破壊しろ。呪装備の心臓、そこを破壊すれば半魔神の魂が飛び出る。そこをオレ様が喰らってやるよ』


 ラクレスは頷き、ウルフギャングたちに言う。


「呪装備の弱点は『核』だ。あの鎧のどこかにある核を破壊すれば倒せる!!」

「フン、言われるまでもない!! レイアース!!」

「ああ!! 七曜騎士の力、見せてやろう!!」


 レイアースが純白に、ウルフギャングが黄色く輝く。

 光、そして地属性の神器に魔力が通ることで、魔力が属性の色に輝いている。

 ラクレスも負けじと剣に魔力を流すと、漆黒に輝いた。


「我が光神器『ルーチェ・デルソーレ』よ!! 光となり悪しき呪装備を滅せよ!!」

「吠えろ、地神器『アシュトレト』!!」


 レイアース、ウルフギャングが飛び出した。

 同時に、カニのような鎧が八本足を動かし向かって来る。


『ギシャァァァァ!! オォォォォォx!!』

「チッ、レオルドの意識はもうないか……だったら容赦しなくていい」


 ウルフギャングは四足歩行になり、高速でジグザグ走行。


「『狼の牙(ウルフバイト)』!!」


 両腕でカニ足の一本を斬りつけると、足の関節部が弾けとんだ。

 レイアースは真横に移動し、光り輝く剣を横薙ぎする。


「『光閃覇刃シャイニング・カリバー』!!」


 魔力が刃となって飛び、足の一本が両断された。

 レオルドの態勢が崩れ、そのまま床を引きずるように崩れ落ちる。

 ラクレスは、真正面から迎え撃つ。


「『黒の斬撃(ブラックセイバー)』!!」


 暗黒物質を纏わせた剣による斬撃が、レオルドの身体を縦に両断した。

 七曜騎士三人の同時攻撃。


「核はどこだ!!」


 ウルフギャングが接近する……だが、ラクレスは叫んだ。


「待て!! 近付くな!!」

「ッ!!」


 すると、レオルドのいる地面が、ドロドロに溶けていた。

 まるで、泥。

 泥が広範囲に広がりはじめ、室内の半分が泥化する。


『くそ、固有能力だ』

「固有能力?」

『オレ様と同じ。呪装備は固有能力を持つ。こいつは……『泥化』ってところか。触れたモンを泥化させるみてぇだな』

「きゃあ!?」


 と、叫び声。

 声の方を見ると、クリスが泥に足を取られ、腰の部分まで沈んでいた。


「クリス!!」

「待てレイアース、お前も飲まれるぞ!!」

「しかし!!」


 レイアースが飛び出しかけるが、ウルフギャングが止める。


「ぅ、ぁ……」


 クリスはすでに、胸の部分まで沈んでいた。

 


「クリス、手を!! 『黒き糸(ブラックスレッド)』!!」


 ラクレスは手から魔力の糸を出し、クリスが伸ばした手に糸を絡め、力の限り引っ張った。

 クリスが泥から逃れ、そのままラクレスの元へ。

 だが……すでに、レオルドは動き出していた。


『ギャハハハハハハァァァァァッ!!』

「ッ!!」

「だ、ダンテ様!!」


 クリスを追うようにレオルドが迫ってくる。

 ラクレスはクリスを抱き寄せ、そのまま背中を向けた。

 同時に、レオルドの拳による一撃がラクレスの背中に直撃する。


「っぐぁ!?」

「だ、ダンテ!! ええい、この泥が……!!」


 近付けない。

 レイアースもウルフギャングも、泥で地面が遮られ、ラクレス達の反対側にいた。

 レオルドは、すでに修復していた八本足を器用に使い、泥の上を地面と同じように走っている。

 すると、ラクレスを見て首を傾げた。


『お前、呪装備か? ハハハハハハハハ!! 仲間かぁ?』


 レオルドの声ではない。

 この声は、レイアースたちにも聞こえていた。


『ククク、お前ら、女神の神器だな? だがレベルが低い。その程度じゃ、邪級の呪装備は壊せても、オレは壊せない』

「貴様、レオルドではないな……!?」

『レオルド? この獣人、とっくに死んでる。オレは半魔神マッドカルキノス……コイツ、オレが魔界へ戻るまで使えればいい。このままお前ら、無視してもいい。でも、オレを封印した女神の眷属、そして女神の神器を持つなら話は別』

「レベルが低い、だと……」


 レイアース、ウルフギャングが自分の神器を見た。

 ダンテの言った通りだった。

 今の神器では、凶悪級の呪装備を破壊できない。

 だが、レイアースは諦めない。


「だからどうした。七曜騎士は諦めない!! 私も、ウルフ殿も、ダンテもな!!」

「フン、その通り……さあ、全力だ!!」


 レイアース、ウルフギャングが全力を出す。

 神器に込める魔力の量を爆発的に増やす。

 ラクレスは、クリスを抱きしめたまま叫んだ。


「レイアース!! ウルフ!! 走れぇぇぇ!!」


 ラクレスも、魔力を大量に注ぎ込み……なんと、泥の上に『暗黒物質』で道を作った。

 意図を察し、レイアースとウルフギャングがラクレスの作った道に乗って走る。

 暗黒物質は部屋を覆い、泥の上に道を作る。

 ラクレスは、クリスを放す。


「離れていろ!!」

「は、はい!!」


 ラクレスも剣を抜き、暗黒物質の道に乗る。

 そして、三人同時に飛び上がった。


「『光連震剣シャイニング・スラッシャー』!!」

「『狼の双牙(ウルフバイト・ダブル)』!!」

「『黒の大剣(ブラックエッジ)』!!」


 三騎士による同時攻撃が、マッドカルキノスに降りかかった。

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月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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