表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪われ黒騎士の英雄譚 ~脱げない鎧で救国の英雄になります~  作者: さとう
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/61

レイアースの予感

 話が終わり、今日は解散となった。が……ラクレスとレイアースは、城のバルコニーへ。

 バルコニーからは城下町が見え、国を縦に割るようにヴィシャス大河も流れている。

 レイアースは、風で揺れる髪を押さえながら言う。


「……いい風だ」

「……ああ、そうだな」


 髪を押さえるレイアースを見ると、ラクレスの心臓が高鳴った。

 レイアースは、身体ごとラクレスに向き直る。


「ダンテ殿。一つ、聞かせてほしい……女神の神器で呪装備は破壊できるのは、間違いないか?」

「ああ、間違いない」

『間違いない。でも……確実じゃあねぇよ』


 ダンテの補足に、ラクレスは内心で驚いた。


『そーいや、人間は知ってんのか? 呪装備にランクがあるように、女神の神器にもランクがある。あの雷姐さん、レイアース、ケモノ野郎のを軽く見た感じ、大したレベルになってねぇような気もするな』

(な、何だっって!? というか、女神の神器にレベルとかあるのかよ!? き、聞いたことないぞ……まさか、七曜騎士しか知らない? レイアースは知ってるのか?)


 レイアースは、ラクレスとダンテが内心で話をしている間も考えていた。


「……ダンテ。改めて謝罪したい」

「な、何にだ?」

「これまでのこと、全てだ」


 レイアースは頭を下げた。


「ドラゴンオークの殲滅、兵士たちの保存、獣王国ヴィストを守る気持ち……ダンテ、いや貴殿のその行動は間違いなく、本心からくる物だと理解した。私の態度はひどいものだった……謝罪する」

「…………」

「貴殿の忠誠を疑うことはない。これからは同じ七曜騎士として、共に切磋琢磨できればいいと考えている……よろしい、だろうか」


 レイアースは手を差し伸べてきた。

 その手を見て、ラクレスは思う。


(ああ……ようやく、俺は……レイアースと並んで戦えるんだ)


 騎士として。

 七曜騎士として、共に戦うことができる。

 物凄く嬉しかった。叫びたいくらいだった。

 でも……ここにいるのは『ダンテ』であり、『ラクレス』ではない。

 

「……ああ、これから共に戦おう。よろしく頼む」


 ラクレスは、『ダンテ』としてレイアースの握手に応えた。

 互いにしっかり手を握ると、レイアースが照れたように笑う。


「貴殿は、不思議だな。その……私の幼馴染を思いださせる」

「え」

「ラクレスという男だ。兵士でな……私の隣で戦うために、決してあきらめないやつだ」

「…………」

「私は、ラクレスと共に戦いたかった。ああ……そうだ、私は騎士としてだけじゃない、一人の女として、ラクレスを……愛しているだな」

「…………」

「……意地を張らねばよかった。ははは……」


 ラクレスは動揺した。

 今、レイアースが『愛している』と言った。

 そのことを自覚し、ラクレスの鼓動が自然と跳ねあがった。


『おい、わかってんな』


 だが……ダンテの声が突き刺さり、冷静になる。

 ラクレスは、一つの事実だけを言った。


「きっと……きみの幼馴染は生きてるよ。そして、必ずきみの元に帰ってくる。俺が保証する」

「ははは、そうだな。ありがとう、ダンテ殿」

「殿は付けなくていい。前も呼び捨てだったじゃないか」

「そ、そういう貴殿……いやお前こそ、許可していないのに呼び捨てで」

「あ、ああそうか……じゃあ、レイアース殿」

「い、いらん!! 呼び捨てでいい!!」


 少しだけ、昔のように話すことができたラクレス、そしてレイアース。

 二人は気付かなかった。

 バルコニーの傍で、一人の少女と獣人が、このやり取りを見ていたのを。


『ふふ、なんだかいい雰囲気ですね』

『……くだらん』

『ウルフギャング様、あなたも認めたんじゃないですか? あの方の国を守る気持ち、本物でしたよ?』

『……それは、王族としての言葉か?』

『騎士として、王族としてもです。ふふふ』

『……くだらん』


 明日はダンジョン、そして呪装備の破壊任務。

 ラクレスたちの戦いが始まろうとしていた。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 ラクレスたちは、鉱山の入口に来た。

 王城の真裏から伸びる専用通路。王族しか通ることのできない道を通り、鉱山入口へ。

 ラクレス、レイアース、クリス、ウルフギャング。そして案内のレオルド、獣人の兵士が数名。

 ウルフギャングは兵士たちに言う。


「ここからは、オレたちだけでいい。お前たちはここにいろ」

「「はっ!!」」

「レオルド……案内を任せる」

「……チッ」


 レオルドは、返事をすることなく歩き出した。

 やはり、ラクレスのことを納得できないのだろう。

 レイアース、クリスがレオルドの後ろに付き、ラクレスも歩き出す……すると。


「おい、お前」

「……何か」


 ウルフギャングが話しかけてきた。

 また何か言われるのか……と、ラクレスはほんの少しだけ警戒した。

 

「……レオルドのことは気にするな。その……オレは貴様を、戦力として期待している」

「……え」

「チッ、二度は言わん。行くぞ」


 ウルフギャングは、ラクレスを抜いて歩き出した。

 ポカンとしていると、ダンテが言う。


『ケケケ、あのケモノ野郎、ツンデレってやつか?』

「俺を、認めてくれた……ってことかな」

『かもな。まあ、いいんじゃねぇの?』

「……ああ」


 ラクレスは嬉しい気持ちになり、ウルフギャングに追いついた。


「ウルフギャング殿。あなたの期待に応えられるよう、努力する」

「……ウルフだ」

「え?」

「ウルフでいい。七曜騎士は皆、オレのことをそう呼ぶ」

「……わかった。では、俺のこともダンテと呼んでくれ。ウルフ殿」

「……フン。ダンテ、遅れるなよ」


 歩く速度が増し、クリスとレイアースに追いついた。

 クリスがクスっと微笑み、ラクレスに言う。


「どうやら、チームワークの心配はなさそうですね」

「え、あ、ああ」

「何のことだ? ダンテ、ウルフ殿」

「知らん。とにかく、呪装備の破壊を優先するぞ」

「ああ、そうだな。よし……!!」


 不思議と仲間内での絆が深まり、ラクレスはより一層の気合が入るのだった。

 だが。


「…………チッ」


 レオルドだけは、面白くなさそうにラクレスを、そしてレイアース、クリス、ウルフギャングを睨みつけるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ