今世では無双したい①
いよいよストーリーが始まります!
拙い文章ですが、楽しんでいただけると幸いです。
「...シクッ....シクッ」
「───...**...*」
「*******──**?!?!」
「──*******!!!!」
(..........だ、れ、のこえだ)
(それに、おれ、しん、だんじゃ、ねえのか───)
意識が徐々に戻ってきた頃、
脳の変わりに鉛でも詰められたかのような頭の重さを感じた。周りに3、4人くらいの声が交差して、泣いたり、怒鳴ったり、急に静かになったり.....視界は真っ白で何も見えず、ただトントンと数人の足音が聞こえているだけだった。この音が俺に多少の安心感を与えていたのかもしれない......しばらくするとその足音ですら無くなっていて、周りはシーンと静まり返っていた。ただ俺が乗っているなにかのギシギシ音と自分の心音だけが延々と鼓膜を振動させ、まるでこの世界で俺はただ1人、取り残されているような感覚に陥った。
(....なんだよ....こぇよ。これ........)
急にこの状況が怖くなってしまった俺は、ドダバダと体を動かそうとしたが、上手く動かせられず、頭を必死に起こさせようとしていると、俺の顔に被せられていた何かが偶然に落ちて、視界が開けた。
(なんだ...?なにがおちたんだ...)
チカチカする視界と状況をまだ飲み込めずにいた俺とは裏腹に、ドアの向こう側が慌ただしくなった。2人くらいの不規則的になる足音がだんだんと近づいてくるのが分かる。どうやらこっちに向かってきているみたいだ。とにかくその人たちが来たら今の状況と、なんで俺が生きているのかを確認しよう。
ガラガラッ───
(お!どうやら入って来たみたいだな!)
「あっ──」
俺が話しかけるより先に甲高い悲鳴と、声の枯れかけだ悲鳴が同時に聞こえてくる。
「ギャー!!!」
「うぁっ!!!」
(なんだ?!びっくりした!!どうしたんだよ??)
「あっ、あっ」
(あれ?上手く喋れない...首切られた後遺症か...?)
そう思ってる俺に女性と男性の顔が近づいてきた。
その人たちは目をパンパンに腫らしていて、鼻も耳も赤くなって、嬉しいような、でも恐怖も感じとれるような声音で話しかけてきた。
「******!」
「**、******!!!」
やっとコミュニケーションがとれると思った矢先だった。これ、全然知らねー言語だわ。英語でもギリシャ語でもイタリア語でも、ましてや日本語とか中国語なんて類のものでもない。
あれ...?もしや、これは......?
(いやいやっ、そんな馬鹿なことはねぇ流石にないでしょ。──ちょっと期待してたりするけどね)
あーだこーだ考えていても仕方ないと思い、ひとまず話しかけてきた人達から情報を得ようと、その人たちのことを観察することにした。
女性の方は薄橙色の腰まで伸ばしたロング髪にまつ毛の長いつり目(ちなみに普通に目がガチクソでかいし、ほんといい表せられない美女、マジで今までにあった誰よりも美という言葉にふさわしい)、そして一際目立つ鼻の下から少し離れているほっぺよりのところにぽつんと浮いてるホクロ。
うん、実にえろい...
う゛ぅ゛んっ....ゴホゴホ
男性の方は長いとも短いとも言えない髪で色は女性よりも薄く、猫目で穏やかな顔だが、右ほっぺと左目辺りの切り傷痕がこれまた一際目立っていた。
この世界にもやはり戦いとかそんざいするんだなあなんて考えていると、急に男性の方に抱きかげられた。
「オギャ!!!!」
突如として吐き出された自分の言葉に驚いた。
え、オギャ???赤ちゃん???え、ガチ転生?一からのガチ転生だと?!
(おいおい......流石にやべぇ、あの地獄小僧何もんだよ....)
それに、俺そんなに幼かったの?もっと5歳とか、出来れば12歳とかで無双しまくって、神の子と書いてエンジェル!とかって呼ばれたかったんですけど.......
まあ望んでた異世界転生だし、赤ちゃんからってことは、伸び代しかないし!22年間の人生経験を今世でぶちかまして、エンジェルと呼ばれよう!うんうん。平凡でつまらなかった俺の人生をやり直すチャンス、この世界で俺はやりたいことやって、自分のえがいていた夢物語を実現して...なら、この『異世界』という舞台は、俺にとっては最高。そう、最高なんだ.......!
あの地獄小僧に満点笑顔の『異世界転生させてくれてありがと☆最高に楽しい人生だったぜッキラキラ〜』
を、お見舞いしてやろう。うん。絶対してやろう。
俺は心の中で声を大にして言い放った。
『今世では無双できますように!!』
読んで頂きありがとうございます。
まだまだストーリーはこれからです。
よろしくお願いします!