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最後の戦い(前編)

宿屋にまで攻め込んできた敵はオルセインという名の女性。

魔剣騎士である。


「グリム……頼む……【絶望】……【絶望】だ!!」

『ああぁっー!!? 主!? 絶望!! 絶望するうぅっー!!』

「なに……? なにをしているの……?」


俺に【破滅】スキルを放たとうとしていたオルセインが立ち止まる。

俺は目を閉じた。

そして、イメージする。

絶望を……!!


『主、来ます来ます。これはヤバいのが来ますよ!』

「ああ、来てくれ……! 俺の……【絶望】スキルッ!!」


俺が叫ぶと、グリムから黒い光が放たれた。

そして目の前の空間が裂けていく。


「な、何よ、コレは……!?」


驚くオルセイン。


「こ、これは……」


俺も驚いている。

突如として開いた時空の穴から何かが飛び出してきたからだ。

それは……巨大なドラゴンだった!!


「グリム……すごいのを呼び出してしまった……」

『はい、主』


俺は呆然としていた。

その大きさに耐えられず、宿屋が崩壊していく。

バリバリッとかメキィッという音を立てている。

黒い竜は、視界に入った魔剣騎士を食べようとしている。


「なによ……なによ……これ……」


逃げるオルセイン。

宿屋はさらに崩れ、王都の夜空に飛び立つドラゴン。

その巨大で真っ黒なドラコンは、羽ばたきながら王都を旋回している。

すぐに王都の民が気づく。


「ド、ドラゴンだ!」

「聖騎士様を呼べー!! ブレスが来るぞ!!」

「なぜこんなところに!」


聖騎士が応戦するようだ。


「こ、このスキルは大丈夫かな……? ドラゴンって、危険過ぎるだろ……」


俺が思い浮かべてしまったのだが。


『だから嫌だったんですよ……。もう少し主と平和に旅をしたかったのですが……』

「え? もう少し? いずれはこうなるってこと?」

『まぁ、魔剣騎士ですから……』

「そ、そうか……。って、え? どういうこと? なんなんだよ、魔剣騎士って……!?」

『主! 危ないです!!』

「へっ!?」


突然、背後に回ったオルセインが俺に斬りかかってきた!

逃げたと思わせて攻撃とは……!!


「その魔剣……強いわね。まさか【絶望】まで使えるとは。あれじゃあ聖騎士たちも簡単には退治できないでしょ。……これで王都を追い込めるかも。あなたの手柄ね。……せめて私は、その魔剣をいただくことにするわ」

「え!? 俺の……手柄!? こんな破壊行為がなんで手柄になるんだよ!? どういうことなんだ!? しかもこんな状況になっているのに、まだグリムのことを狙うなんて……!! 一体どうして魔剣を狙うんだよ!?」

「ふっ……そんなことも分からないのね? やはり所詮はでくの坊ということね! 哀れだわ……」

「うぐっ……!」


悔しいけど言い返せない。

って、そんなことはない。

そんなに俺は身長が高くないぞ。


「でくの坊ではないけどさ。哀れに思うのであれば説明してくれよ」

「そこまで言うなら仕方がないわね。……いい? 私たち魔剣騎士は魔王の奴隷なのよ!」


はぁっ!?

俺たちが……奴隷?

なんか真実っぽいことを話しているぞ!?

彼女の目は真剣だ。


「ま、まさか……グリム? どういうことだ!?」

『主! 聞いてはいけません! 早くドラゴンを元の世界に戻しましょう! そしてドサクサに紛れてこの人から逃げましょう! 聖騎士達にこの人を押し付けて!』

「私たち魔剣騎士は魔王の言いなりよ! 魔王の命令どおりに、この世界を滅ぼすの! そして私は元の世界に帰るのよ……!!」


……ん? 俺の目的は異なるぞ。

俺は異世界転移して魔王に魔剣をもらってハッピーライフを過ごす目的なのだが……。

魔王の奴隷という認識もないしね。


「バレてしまったようだな……」

「魔王!? なぜあなたがここに……!!」


魔王!? 魔王だって!?

オルセインが動揺している。


『ま、魔王さま……』


グリムまで!

た、確かに新たに現れたこの女性は魔王かもしれない……!!

偏頭痛のときに思い浮かぶ魔王の姿だ……!

うん、間違いない……崩れゆく宿屋に魔王が現れたぞ!

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