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②あきらめれば、都

10月24日。  その①も掲載しております。

ミサトは理系が苦手で、英語が中学の頃からまわりと比べて飛びぬけてよかった。中学校の時はあまりにも中学の英語レベルが低く感じられて、みんなよりちょっと進んで高校生の問題も解ける程英語のセンスがあった。性格的にも物乞いするタイプではなかったので授業でも英会話をどんどんすすんでした。それ故同級生からは優等生とか秀才とか言われて、ちょっと遠い存在だったかもしれない。髪は背中まで長くて肌の色は少し青みているほど白くて、周囲の大人を緊張させる何かミステリアスさを秘めていた。先生たちも一歩ひいて接していた。


 そんなミサトが高校時代に興味をもったのが”心理学”だった。犯罪心理、児童心理、恋愛心理など人間の形の見えない”心”に興味も持ち始めたのはこの頃からだ。


 高校二年後半にもなると親同席の進路相談が行われた。

ミサトの大嫌いな二番目のオヤジと、担任と、ミサトで行われた。


 先生「ミサトさんは英語が比較的お好きのようですし、彼女の希望は宮城の大東北福祉

大で心理の勉強をしたいということですが、そこ受験で進めていってもよろしいでしょうか?」


二番目のオヤジは愛想よくイイ父親ぶってひょうひょうと答えていた。「こんな時だけオヤジぶるなよ。二度目の蒸発したと思ったらのこのこ帰ってきて恥ずかしい奴!!本当にうざい!!」。ミサトは心の中で声を押し殺した。ミサトは心理学を学ぶため得意の英語を受験科目にして大東北福祉大を受けることにした。


 この時期、受験に専念するため周囲の友人では別れるカップルが急増していた。勉強に専念するためというよりは、会えるとか会えないとか、連絡取るとか取らないとかが面倒だということと、結局は進路が別々になるからここでサヨナラしましょう、それだけのことだろう。ミサトと俊は相変わらず続いていて、ミサトが宮城に行っても会いに行くからという俊の言葉を信じて別れることはしなかった。でもまったく不安がないと言えば嘘で、ミサトは大学に進学してもっと色んな事を勉強したいという夢があった反面、俊は勉強嫌いでそれよりだったら就職したいと、進学と就職でまた別の世界に出ていくことで二人の距離が離れていくのでは、という不安はもしかしたらミサトよりも俊の方があったかもしれない。ミサトが俊とは”別の世界の人”になると…



 ミサトは若いのにとても落ち着いていた。茶道をやっていると言うとみんな納得するような、そんな雰囲気の子だった。ミサトと妹のマキコは母が高校時代通っていた、母校直ぐ下にあるおばあちゃん先生が教えている茶道教室に週1~2回程通っていた。ミサトはその持ち前の大人びた雰囲気と大人にちょっと遠慮させるようなミステリアスさがお茶をたてる姿を一層奇麗に見せた。


妹のマキコはこの頃からミサトに対する嫉妬や反抗、母への執着がひどくなり、よく喧嘩をした。ちょうど初夏のこの頃あちこちの学校では運動会が行われていて、私たちの高校もちょうど女だらけの運動会が開催された。ミサトは運動はできる方ではないと思うが、運動会の100m走でたまたま一位を取った。そして運悪く、まさにその次の100m走でマキコが走ることになった。ミサトの友人たちは「ミサトの妹が走るからみんなで応援しよー!」と、レーンの横にみんな並んで応援してくれた。「まきこちゃんがんばってー!がんばれー!がんばれー!…」25mくらい過ぎると、友人たちの声援が曇った。マキコは25mのあたりで走るのを止めてしまったのだ。みんなの声援がなんだか申し訳なさそうに聞こえてきた。マキコはこの時、ストレスから?と本人は言っているが体重が85キロもあった。それ故100m走るのがきつかったのか、みんなに明らかに追いつけないと諦めたのか、走れない姿を見られるのが恥ずかしかったのか、走るのを止め歩いてゴールした。


ゴール地点でミサトは「よくがんばったね!」と声をかけるもマキコは今にでも泣きそうな顔をして、何も言わず二度と運動会には出なかった。姉妹で同じ高校で比べられるのがとてもプレッシャーになっていたのはミサトにもわかった。だけど、ミサトには悪気もなければ、ただ一生懸命自分なりに何でもやっているだけなのに…

この頃からミサトに対するマキコの反抗はひどくなり、ミサトを家の中から排除しようというマキコの動きが強くなった。


この一件をきっかけにマキコは過食症と拒食症を繰り返すようになった。食べるのを止めるとトイレで隠れて食べるようになり、腹いっぱい食べると口に手を突っ込で吐いての繰り返しだ。その手には”吐きだこ”ができて、手が真っ赤にいつもなっていた。母は二番目のオヤジのことと、マキコのことで頭をいつも悩ませていた。



 そして進路の最終的な話をしなければいけない時期になるとまた三者面談が行われた。今回は先生、母、ミサトで行われた。二番目の父は今回三度目の蒸発中でもう三カ月連絡がつかない。


先生「ミサトさんの進路なんですが、前回聞いていた宮城の大東北福祉大に願書を出すということで大丈夫ですね?」と先生。


母「先生、うちは家から絶対出さないので近くのS霊女子短大でいいです。最初から家から出すつもりは有りませんから。私立の四大なんてそんなお金のかかるところいかせられません!」


 先生「でもお母様も賛成してくださっているときいていました……」

母「その勉強したからって何になれるの?!どうせ何にもなれないんだから。県内で家から通ってどうしてもそういう勉強がしたいなら今から勉強して通える国立に入りなさい!!それ以外は許しません!!」


 受験まであと約半年、母が言う県内国立はただ一つ。ミサトは数学が飛びぬけて出来ない。職員室でマンツーマンで教えてもらってもやはりできない。あるミサトが尊敬していたトドみたいにぽっちゃりしていて可愛い先生が、そんなミサトを見てこう言ったことがあった。


「女子は男子に比べて文系が得意で、理系が苦手な子が多いのは脳が違うからなんだよ。とくに数学なんかは今できなくても、大人になったら急に昔できなかった問題ができるようになるんだから、それはしょうがない。脳の発達の速度は人それぞれだから。受験をする時点でもしかしたらそれは恵まれてなかったかもしれないけど、かならずできるようになるから心配いらないよ。こんな難しい公式なんて、専門以外使わないんだから。」


数学が伸びず悩んでいたミサトを見てつい言ってしまったのだろう。でもこれでミサトはだいぶ救われたのだった。「なんでこんなに数学ができないんだろう…赤点ばっかしでお母さんの期待に答えられないだめな子だ…」




ミサトは母の行ったS霊女子短大に指定校推薦で入学することになった。





指定校なので落ちるわけもなく合格が決まっていたミサトは、行きたかったあの大学を諦めたことで気抜けしていた。英語が得意だったミサトはS短大の英語や情報系を学ぶ科に決まっていた。ミサトの英語を担当していた佐々木先生が課題が終わって机に顔を埋めて寝ているミサトに向かって、「あや、寝てるけれどミサトさんは受験するとこは決まったんだが?」と聞いてきた。


ミサト「はい。S短に指定校推薦でもう決まったんです。」

 佐々木「え!?S、S短大に?!…また何でS短大に…?!」

ミサトはニコっとして「わかんない」という感じに首をかしげた。周りからは、何でミサトがそんな花嫁修業学校いくんだ?と最後まで言われた。でもこの家庭の状況で母に口をきく勇気はミサトにはなかった。心のどこかで、「これで俊と離れ離れにならなくて済む」という安心感なのか、自分を納得させようとしているのかわからないが、”なるようになるんだ”と自分のなかで消化することにした。


 春になって俊は新社会人、ミサトは花の女子大生になった。

俊は電子部品の会社に就職し土日休みの会社だったので、部活をやっていた高校時代よりはかなり会える時間も増え、ミサトを駅まで迎えに行って一緒にご飯を食べたり、土日どちらかが予定がある時は平日の夜に会っていた。ミサトは”慣れれば都”で、新しい友人もすぐできて、好奇心旺盛で比較的真面目な性格のミサトは、授業を朝から晩までびっちり入れた上、それで満足できなければ母が言った県唯一の国立大学の授業を受けに行って、その大学の単位を取得できる制度を利用した。俊とは社会人と学生の違いや見ている世界のちがいからか、だんだんに価値観が合わなくなってきているような気がしていた。しかし、ミサトにとって俊は唯一の存在だと信じていたから、知らないふりをして俊に癒しを求めた。


会う機会も多くなって、しばらくは心も体も俊に満たされていった。


「もっと会いたい、もっと俊と一緒にいたい…何でこんなにさみしいのかな…こんなにいっぱいバイトもして、時間空かないように勉強して、いつも友だちに囲まれて、通学だって往復四時間以上かけて通ってこんなにいっぱいいっぱいなのにどうして満たされないんだろう…もっともっと愛してほしい。もっともっと…」きっとこの頃は俊も素直にミサトを可愛いと思っていた。二人の付き合いはもう四年になっていた。ミサトは俊に狂っていた。会えば気持ちを確かめる手段のように、体を交わらせた。その時は満たされても、また直ぐ寂しくなるのに…


 ミサトは一年生の冬に語学留学をすることになった。先生の薦めもあり、アメリカのメリーランド州にある某女子のミッション校に語学留学することになった。留学生をまとめるリーダー役になぜか勝手にされてしまったから、その準備もありさらに勉学に力を入れて土日も話し合いで出たりと忙しくなった。それに毎日の塾のバイトと土日の販売員のバイトとで忙しかったけれど、その忙しさがミサトを安心させた。自分は求められているんだと、忙しいところに安心感を持っていた。ミサトはそこに居心地の良さを感じて、さらに学校で期待されたり、必要とされているんだと思うと何でも一生懸命力を尽くした。ミサトにとってはまさに”文武両道”、勉強も恋愛も充実感を感じていた。


 留学先への出発日は1月2日の早朝だった。そのため1日の早い時間から友人たちと落ち合う必要があった。毎年俊と地元の神社にお正月はお参りに行っていた。ミサトはなんでも興味がある子で、その神社で正月だけ巫女のバイトを高校の時はしていた。


俊「今日正午になったら、神社に一緒にお参りに行こう。無事留学から帰ってこれるようにお祈りしなきゃ。」


ミサト「ありがとう!でも行きたいけど…1日早朝からあっちにいって準備があるから(+_+)今年は行けないな。普通に寝て、1日に備えたいの。来年は一緒に行こうね(*^。^*)」


1日の早朝、実家のポストを見ると俊から手紙とお守りが入っていた。神社で留学の成功を祈ってお守りを買ってきてくれたらしい。


俊「成功を祈る!!ミサト、がんばれヽ(^o^)丿」


ミサトはそのお守りと手紙を持って、アメリカに発った。

作品を読んでいただきましてありがとうございます。その①でも書きましたが、ノンフィクションで現在進行形 のお話です。主人公のミサトは作者本人です。素直に恥ずかしがらずに、その時感じたことを現在24歳の表現で書きます。

連載ものですので是非また読んでいただけたら嬉しいです。文章をかくなんて初めてですので何かありましたら遠慮なく、ご指導・ご鞭撻等よろしくお願いいたします。

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