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天然って?

うちのクラスには、天然さんがいる。

周りを振り回す天然さんの、ちょっとした日常を覗いてみませんか?


「あ、おはよ。昨日大丈夫だった?」

「いや、あんなことがあった=大丈夫じゃないから」

「そうなの?」

「そうだよ!」

ある日の朝、天然さんこと紗凪(さな)が来た。そして、その紗凪に声をかけたのは里穂(りほ)。この2人は幼馴染で、色々と危なっかしいので里穂は紗凪とよく一緒にいる。

「ところで紗凪、ジャージは?体育1時間目だよ?」

「…着替えてきます!」

ドタバタとジャージを入れている袋を持って教室を出ていった。


キーンコーンカーンコーン…


「あ、」

ガラガラガラ、と教室の扉が閉まったその数秒後、まるで見計らったかのように始業のチャイムがなった。

「すみません、遅れました!」

再び、叫び声に近い謝罪と同時に扉が開いた。もちろん、開けたのは着替えられずに袋を抱えたまま戻ってきた紗凪だ。事情を知らない大半の人はポカンとしているが、唯一事情を知っている里穂は、笑いを堪えるのに必死だった。


そんなこんなで1時間目。科目は、里穂の言っていた通り体育だ。

「あ〜…バスケなんて嫌い…」

「仕方ないでしょ、授業なんだから。拒否権があったらみんな拒否するよ」

「正確には、ボールが嫌い…」

「それはどうにもならないね」

体育館に入って早々、さっそくバスケのパスの練習が始まった。

「いくよ〜」

里穂がボールを取ってきて、少し離れたところからボールをパスする。紗凪はもちろんそれを取らなきゃならないのだが…

「えっ?あ、ぎゃっ!」

「ボール避けてどうするのよ!」

声にならない悲鳴をあげて、ボールを避けた。もっとも、避けきれずにかすったようだが。

「あざになりかけた…」

「変な受け身取るからでしょ。ほら、投げ返して」

「え〜…ボールどこ?」

紗凪に怪我がない事を確認した里穂は、無理矢理話を切り上げてパス練習に戻った。紗凪もボールを手に取ろうとしたが、微妙に紗凪をかすったボールはそのままどこかへ転がっていっていた。…どこか、というか、紗凪の真後ろなのだが。

「ボール〜って、ってあぁ!」

「なんでその流れで蹴るかなぁ…」

紗凪の真後ろにあったボールは、くるっと後ろを向き、一歩踏み出した紗凪の足に見事にあたり、紗凪がボールを蹴る形になった。ころころと転がり、人の間を縫っていくボールと、それを追いかけている紗凪。挙句の果てに、ようやく追いついたボールを中心にくるくる回り始める紗凪。

「まるで、自分のしっぽを追いかける子犬…」

あまりの天然さに、里穂が思わずつぶやいた。

そうこうしているうちに、それを見かねたクラスメイトがボールを取ってくれた。それをありがたく受け取って、小走りで戻ってくる。

「ボール取るのにどれだけかかってるのよ…」

「ボール早いんだもん」

「途中回ってたのに…?」

「…うん、投げるよ!えい!」

里穂の疑問を思いっきりスルーして、思いっきり振りかぶる。里穂もそれを見て、慌ててボールを取る体勢になった。が、その必要はなかった。正確には、紗凪の投げたボールは床に打ちつけられ、ころころ転がって里穂の足にぶつかって止まった。

「はい、そこまで。ボール片付けてー」

「「……」」

2人が何も言えずに固まっているところに、見計らったかのように、先生から声がかかった。

「…うん、片付けようか」

なんとも言えずに数秒たち、ようやく里穂が声をかけて動き始めた。

その数秒間、2人の間になんとも言えない空気が流れたのは、言うまでもない。


2時間目、数学。今日は先生がいないらしく、自習だった。

紗凪の天然は私生活だけには留まらず、勉強にまで影響を及ぼしていた。紗凪は、仕組みが分かっていないとどうにもならない、数学、理科。要するに理系が苦手なのだ。…だからと言って、文系が得意というわけでもないのだが。

それに対して里穂は、何に感化されたのか基本的に成績は優秀だった。本人曰く、紗凪のフォローにまわっていたら、気がついたらこうなっていた、とのこと。

「数学なんてそんなもの消えればいいのに…」

「毎授業言ってたらキリないよ、それ」

小さな声で喋りながら問題集を進める。…進めると言っても、片方のノートはほぼ真っ白の状態のままだったが。

「ねえ、これ答え合ってる?」

「…なんで式の途中で答えに飛んでるのよ…」

「なんとなく分かったから」

思わずため息をついた里穂は紗凪の机に身を乗り出して、問題を教えていく。

「だから、この問題はこれを使って…ね、分かった?」

「分からない」

「…まさか基礎から?」

「基礎がどこか分からないけどそうだと思う」

「…」

結局、その授業で里穂は、ほとんどの時間を紗凪の勉強に使っていたとかいなかったとか。


3・4時間目、家庭科の裁縫。それぞれバックを作っている。紗凪は大きめのバック、里穂はポーチをそれぞれ作っているのだが、紗凪はもう既につまづいていた。

「…紗凪、何やってるの?」

「えっとね、布を縫っていたんだけど、サイズ間違えて切ってて…もう一回になった」

「なんで縫う前に気づかないの!?」

「なんか大きいなーとは思ってた」

もうバックはこの2時間のうちに完成させなくてはならない。なのでほとんどの人が仕上げに入っているのだが、今から2時間で不器用な紗凪が誰の助けも借りずにそこまで持っていけるわけがない。なので、仕方なく里穂が手伝いに入った。

「私は本体の布を切るから紗凪は持ち手ね」

「うん分かった」

「…これ、このサイズで合ってるよね?」

「合ってるよ!もう、自分で確認すればいいじゃん」

「だって、前回は確認したのにああなったし…」

「どんな確認方法のとったのやら」

そうこうしているうちに、他のみんなはどんどん作り終わっていく。一方で紗凪たちは、それぞれのパーツを縫い合わせて、再び補強する為に縫う工程だ。はっきり言って、相当遅れている。その遅れを取り戻すことなく、結局2人が紗凪のバックが作り終わったのは、授業が終わるギリギリだった。


「なんか今日は無駄に疲れた…」

「それ半分以上紗凪の天然さが招いたことだから」

今日は水曜日だが、職員会議があったので4時間授業だった。バック片手に校門を出て、それぞれ家路につく。


「「また明日」」

恐らく、読んでいる人の一部は、モデルが誰か分かったのではないでしょうか?

あ、芸能人じゃないですよ?w


読んでもらっている人に、楽しんでもらえたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 流石。モデルの会話をわかってるねwwwサナちゃんは相変わらずの天使だw [一言] 頑張れよ!そして転すら語ろうな!
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