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弱虫の英雄と最強の英雄   作者: 雨色 狼
7/9

造られた日常

2021年 10月15日 正午 長野県諏訪市


ーーーー


学校が終わり、いつもの習い事が終え、家に帰る。

毎日、毎日、毎日、毎日、同じようなことの繰り返し。


俺の日常はこんなに退屈だったかな。


ーーーー


1人の男の子が習い事の帰り道で立ち尽くす。


「なんや、自分こんな所で立ち尽くして?」


後ろから、聞き覚えのある関西弁で話しかけてくる男がいた。


身長は160くらい、金髪のおかっぱ頭がトレードマークで、少し強めの狐目、どこか胡散臭い関西弁で話す男。


同じ道場に通っている、2つ年上の先輩だ。

中学生になって、俗にいう学ランの上のボタンを2つ外し、制服を着こなしていた。


名前は、根津 甚八 《ネヅ ジンパチ》

性格はどこかおチャラけて、胡散臭いが相談事はたまに真面目に聞いてくれるから、どこか憎めない男だ。


「……根津先輩、……別に、なんもないッスよ。」

「なんや、おもんないのぉ、てっきり恋の病に掛かって上の空かとおもたわ」


そう言って、いつものように、おチャラけてみせた。



「2ヶ月前に裏山で行方不明になりかけてから、どこかずっと上の空やないか『イサム』?」


=====


2ヶ月前、1人で裏山に秘密基地を探しにいって。いつの間にか意識を失っていた事故があった。

当時、何故1人で秘密基地を探しに行ったのかは、いまでも思い出せない。



あの日から、俺の退屈と苛苛は増すばかりだった。


俺の身体が、俺の心が、まるで俺の物じゃないようなそんな気分だ。


根津先輩と別れて、いつもの帰路に着く。

いつものルートの河川敷を歩いてると俺は昔の事を思い出していた。


ーーーー


俺は幼い頃から『ヒーロー』と言う物に憧れていた。

困っている人がいたら、どこからともなく颯爽と現れ、どんな強敵にも立ち向かっていく

その姿が今も鮮明に目に焼き付いている。


正義とか悪とか、何が正しいとか、何が間違っているとか、まだ何も分かってないかもしれないけど。


とにかく『格好良い』


俺は困っているやつを見たら全員助けようと努力するようになった。

誰にも負けないように、空手を習い喧嘩も強くもなった。


いつか認められるように

来る日に選んでもらうるように

強くあろうとした


それでも、選ばれたのは俺じゃなかったんだ。


……選ばれる?


選ばれるって何に選ばれたんだ?


そういえば、俺には何故友達がいないんだ。


いたはずだ、たしかに2人……。


嫌、俺はずっと1人だった…じゃないか。

今も昔も……。


ーーーー


「抑えつけろ!」

「や、やめてよ!」


河川敷を歩いていたら、橋の下で何やら騒いでる人達がいた。

橋の下に目をやると、1人の学生が5人の学生に囲まれて暴力を受けていた。


「今日の金はどうしたんだよモブ!」

「そ……んな、毎日お金なんか用意できないよ」


身体が自然と反応する。


「おい、やめろ」

「なんだ、お前?ガキがヒーローごっこか?痛い目見たくなかったらあっちいって小便たらしてな」



1人の男がイサムに絡むように前に出てきた。


軽く小突くだけだ。

イサムは心にそう言い聞かせる。

空手をしているから、相手に怪我させないように配慮しようとしていた。


イサムはポケットに手を突っ込みながら、軽く空手の技の前蹴りを繰り出した。


少し倒れるくらいだと思っていた。


ドンッ


物凄い音をたてて、橋の柱のコンクリートに飛んでいき、まるで柱に隕石が落ちたかのように人間がめり込んでいった。

辺りに血を撒き散らし、とんでもないことになっていた。


男は即死していた。


「……は?」


「な、なんだよこいつ化け物だぁ」

男の1人がそう言い放つと、虐めていたやつらは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


何が起こったんだ?

イサムが困惑していると虐められていた男が、怯えた顔をして小さい声でボソボソつぶやいていた。


「こ……殺さないでください、ごめんなさい」

虐められていた男は失禁し、気絶してしまう。ズボンのあたりが湯気が立ち込めていた。


軽く蹴ったつもりだった。

空手をやっていたが、それでも小学5年の力などたかが知れている。


「お前は選ばれたんや……」


いつのまに見ていたのか、河川敷の土手の上から、ポケットに手を突っ込みながら近づいてくる、いつもの胡散臭い先輩。


「根津先輩?選ばれた?なんの話です?」


根津先輩は、少し言葉を溜めて語り出す。


「実はな……、ワイは秘密結社DKC(ディーコック)の一員なんや。前々から、お前の資質に惚れててな!ワイらの組織がお前に力を与える事に決定したんや。要するに勧誘やな。ワイらの組織にはいらへんかちゅーラブコールってやつや。少し混乱しとるかもしれへんけどなー、簡単に言うと『ヒーロー』組織みたいなもんやで?お前ヒーロー好きやったやろ?どうや?ヒーローにならへんか?察しの通り、ワイもヒーローなんやでー」


満面の笑みを浮かべ、人差し指を上に立てながら、すごい早口で訳の分からない単語がすごい並べられた。

何を言ってるがさっぱりだ。


でも聞き取れた単語がある。

力?選ばれた?ヒーロー?


「俺が……選ばれた?……ヒーローに?」


掛かった血を洗い流そうと川の水を手に取ろうとする。

川に自分の顔が写る。


笑っていた。


「そっか……」


イサムは俯き、ボソボソと小さく呟く。

それを見て根津はニヤリと笑みを浮かべる。


「そうだ……俺にだってヤレる!選ばれるんだ!見たか!ヤマト!アラタ!……ふふは、はははは、ふはははは!」


「チッ、すこし昔の記憶が蘇ったか、……まだすこし調整が必要やの」


イサムの笑い声が徐々に大きくなっていく中で根津は愚痴を漏らす。


「ま、とりあえずフェーズ1は及第点ちゅうことやな……」





少し時は遡り


エディス創世期326年

日本時間にして2021年 8月6日 午前 無域スーサイドダウン縛草原(ばくそうげん) 大男の小屋


身体中が痛い、手足が痛い、首が痺れ、頭が重い。

満身創痍の状態でアラタは朝を迎えた。


(目が覚めたようだね、……無事でよかった。

少しの間、君の心の中でしか話せない……)


幼い声は、今までの元気のある声ではなく、弱々しく、更に心に語りかけているような声だった。


先の戦闘で深手を負ったらしく、本来の力を発揮できないでいた。


周りを見渡すと、大男がこちらを見つめていた。


「……目が覚めたようだな。子供がこんなところで何をしていた?」


まるで昨日の出来事がなかったかのようなセリフだった。


「お、おじさん、僕のこと覚えてないんですか?」


大男は訝しげに、こちらに目をやり答える。


「……何を言っている。今朝、君が襲われているところを助けて、初めて会ったばかりだろう?」


何を言っていいかわからなくなった。

大男の昨日の出来事が消えている?


ガルダが心のなかで話かける。

(事情は夜に、また話す。……今は少し休もう)


アラタは釈然としなかったが、無理やり納得した。




昨日あった出来事を大男に大雑把に話す。

詳しい事情を聞いた大男は終始疑問だらけだったが、なんとか納得させた。


自分の身体をよく見ると、首と手足首に雑に包帯が巻かれていた。

大男が不器用なりに治療してくれていたらしい。

なんだか、傷の治りが早くなっているような気がする。

結構血が流れていたはずなのに、すでに傷は塞がっている。


(それが、魔力の恩恵だ。君が英雄になったって事も関係しているけどね)


ガルダは心を読んだかのように答える。


心で意思疎通なんて、本当にファンタジーの世界に来てしまったのだとアラタはまた痛感する。


「英雄か……」



これから、どうなっていくんだろう。

先の戦いを思い出し、アラタの中で恐怖が蘇る。


こうして、アラタはエディスでの2日目の朝を迎えた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 口酸っぱいようで申し訳ないんですけれど、小説って基本的に三点リーダってヤツを偶数回使うんですよね。雨色さんの場合、二点リーダを偶数回使っているんですよ。おそらくパソコンで投稿していると…
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