緑の物語 3 絶望
「……え?」
笑いながらこちらを指さす女性、気づいた頃には「ナニか」が肩を貫いていた。
え、何?熱い……肩が
何か飛び道具でも当てられたのかと思い、アラタは流れでる血を抑えようとする
ピッ
指先が、何か鋭利なもので傷つけられた?
針金?のように硬い強度を持つ「糸」だ。
「……なッ」
〈アラタ!?〉
ツギハギのワンピースを着た女は、ゆっくりアラタに近寄ろうとしていた。
痛みで、意識が飛びそうだ。
出血がとまらない。
無意識に流れ落ちる涙。
そうか僕は恐がっているのか。
でも……
「こ……こんなもの!!」
アラタは持っている短剣で糸を切ろうと試みる。
だが、糸はビクともしない。
「な……なんで?」
「……そう怯えないで」
「え……」
「本当はね、ルナ様は貴方が必要だから今はまだ……て我慢してたのよ」
おとなしめの口調だった女が、徐々に声を荒らげていった。
「私にも勝てないのに、この先必要となる未来なんか見えないわ!」
ツギハギのワンピースの女は指先で糸を操り
、アラタの身体を次々拘束していった。
右手……
左手……
右足……
左足……
動かせる箇所が徐々になくなるアラタ。
糸で拘束される箇所が強度に耐えられなく傷付き血が流れる。
まだ戦う意思があったアラタは徐々に怯える顔に変わっていく。
どこに縛り付けてあるのか、わからない糸達は徐々にアラタの身体を持ち上げていく。
アラタの身体は宙に縛り付けられるように
持ち上げられ。
最後には首が糸に拘束されてしまう。
「かッ……かはッ」
アラタは悶え苦しむ。
「さようなら、幼い英雄さん」
ゴォッ
「な、何!?」
音速を超える何かが、女の脇腹を貫いていた。
「バードストライク!?腐っても神獣て訳ね、でもその捨て身の攻撃でも、この子が死ぬのは変わらないわよ」
ガルダの捨て身の攻撃だったらしい。
ガルダは力を使い果たしたのか、広大な草原の真ん中で力尽きて、小さく発光し消えかかっていた。
「いらない邪魔が入ったわね……でも意味はないわ、これくらいじゃ私は止まならないもの、貴方は必要ないのよ!!」
重症の一撃と思われたが、女にとっては止める攻撃となりえなかった。
確かに脇腹には風穴が空いていた、だが血など流れていなかったのだ、落ちてくるのは風穴から不明な木の屑ばかりだった。
捨て身攻撃をも、諸共しない女は緩めていた糸を更に締め上げた。
ーーーー
僕は必要ない……か
そんなの僕が1番分かっている……
ヤマトくん……イサムくん……
今度は僕が……
ーーーーー
突如、豪風が吹き荒れる。
「な、なに!?」
アラタの周りに風が渦巻く。
アラタの目がゆっくり開く、その目は緑色の瞳になり発光していた。
「あまり調子に乗ってんじゃねえぞ...」
女は背筋が凍るような感覚を覚えた。
「なんだ、こいつさっきと何か違う...」
女がたじろぎを見せている。
瞬間、上空から音速をこえる何かがアラタを拘束する糸を切って地面に突き刺さる。
「何!?」
アラタの拘束は解かれ、地面に経たりこみ倒れてしまう。
地面には、大人の身長をも超える大剣が刺さっていた。
「……間に合ったか」
大男が女の前に立ち塞がり、アラタを守るように身体覆っていた。
「お前は……そうか、ここはお前の監獄という訳だ……」
女は少し黙り込み、吐き捨てた。
「……忘却の英雄と戦うほど、私は思い上がってなどいない」
ここは退かせてもらう。
そう言い残し、黒い穴のゲートを出し。
退却していった。
〈……ぼ、忘却の英雄だと……アイツを実験体にしたのか〉
力尽きようとしている、ガルダは一連の言動を聞き小さく呟き、そこで意識は途切れてしまう。
ガルダは姿を保てなくなったのか、無数の光の球体となりアラタの中に却っていった。
男はアラタを抱え、小屋に運ぼうとする。
「お、おじさん……」
「……無事でよかった。だが……子供が何故ここに?」
「……え?おじさん?」
僕の名前を覚えていないんじゃなく、まるではじめて会ったような話し方だった。
もう、何が何だか……
そこでアラタの意識は失われた。
同時刻 東京都 品川区 某廃墟
暗闇のなか、無数の足音がしていた。
1人の女が室内にある椅子に腰掛ける。
「……あの子、勝手な事を……」
椅子に座る女に近づいてくる、つり目の男がいた。
「まぁまぁ、ええやないかぁ」
「あなたは……」
女は少し黙り答える。
「よくないわ……。私の直属の『踊狂う人形達』の1人が単独行動……、それを許せば、組織の示しがつかなくなるわ」
女は苛立ちを抑えられないのか、机を指でトントンと叩いている。
「それより……、実験はどうなってるの?」
「順調やで。あんたの能力のお陰で記憶も改ざんできたし、魔導石の組み込みもそろそろおわる。間もなくフェーズ1に以降される頃や」
つり目は少し目を開き話しを続ける。
「緑と青のガキどもはどうするつもりなんや?いっそあんたの『糸』で操った方が早いんちゃうか?」
「まだよ……、まだ2人は弱すぎる……」
「さよか……、ほな、わいはもどるで『ルナ』様」
「その名前……、あまり出さないでもらえるかしら」
「はいはい、仰せのままに局長殿」