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弱虫の英雄と最強の英雄   作者: 雨色 狼
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緑の物語 2 英雄

決め顔で話しを始めようとする、ガルダだったが、アラタはある事に気づく。


「あ……、一旦外にでよう、鳥と話ししてるって、おじさんが変に思っちゃうよ」


そういって周りを見渡す。

柱に腰掛ける男は深い眠りに着いていた。

結構騒がしかったと思うが。疲れているのだろうか。

僕は足音を立てないように小屋の外にでた。


ーーー


ガルダは男に目をやると、小さい眉間に皺を寄せた。

〈この男が何故ここに……〉



外にでると痛感した、本当に僕は知らない世界に飛ばされてきたのだなと。


月が、自分の住んでいた所の月より、ふた周りも大きく見え、なにより鮮血に紅く光輝いてた。

アラタは目を奪われてしまい、その美しさに心を奪われて、1つ、2つと涙をこぼした。


「……ヤマトくんも、イサムくんも無事かな……」


知らない世界の中で無事で生き残っていてくれてるのか心配になった。


〈すまない……こんな幼い子供が次の英雄になるとは……〉


「……?君が僕を選んだんじゃないの?」


〈僕が選んだんじゃないんだ。英雄になるには、たしかに条件こそあるものの、あくまで選ぶのは、その腕輪の持ち主さ。〉


「持ち主……?持ち主も何も僕とヤマトくんは、たまたま拾っただけだよ」


〈たまたま?偶然2人とも適性があったていうのかい?ありえない……何か意図的な物が感じるよ……〉


「……、ねえガルダ……英雄て何?」


〈英雄はね、この世界エディスに存在する3人の大賢者の力で6匹の神獣を封印し作られたものさ。その昔、この世界が滅びさるかもしれない大災害『終焉カタストロフィ』を止めるために全ての種族が協力して作り上げたシステムだよ〉


「……なんで、そんなものに僕が……」


〈わからない、本来なら腕輪は各種族の代表長が大切に保管していたはず……、それなのにどうして……〉


わからないことはもういい、そう言ってガルダは続けた。


〈それより、今の状況を説明してくれないか?意識がない間何が起こったのか分からなくてね〉


僕は、廃校から今まで起こった事を話す。



〈……そうか、僕達が覚醒したのは別の世界だったのか〉

「別の世界?」

〈そう、君達の世界では魔力を感じられなかったからね。だから言葉を発する事はできても姿を表すことができなかったんだ。〉

「魔力?」

〈そうだよ。この世界、エディスでは魔力という物が流れている。この世界の生きる者達は魔力の恩恵を受けて生きている。〉


魔力やらエディスやら、どこの夢物語だ。

そんな事を心の中で考えてたら、僕は不思議に思う事があった。


「んー?なんで急にガルダは姿を表すこと出来るようになったの?」

無域(むいき)だ……〉

無域(むいき)?」

〈……ここは、この世界でも唯一魔力を生み出さない場所、無域(むいき)スーサイドダウン縛草原(ばくそうげん)だ〉

アラタは余計混乱した。

「……え?魔力も生み出さない場所でどうやってガルダがでれたの?」

〈うーん、そうだなぁ……

何か魔力を含むもの身体に取り入れなかったかい?何かを食べるとか〉


身に覚えはなかった。

魔力を含むものが分からなかったからだ。

しかし、今日出会った、おじさんに訳の分からない 干し肉を貰ったのを思い出した。


「あー、なんかわからない干し肉を貰ったような」

〈多分それだね。さっき身体に熱が走ってたのは魔力が身体に行き渡る感覚さ。本来なら……いやよそう……〉


ガルダはそこで口を閉ざした。

何か引っかかる言い方をしたような気がするが。


この世界エディスのこと、英雄のこと、元の世界に帰る方法。

聞きたい事が山ほどある。

ガルダに質問をしようとした時

突然地響きがなる。


何も無い地面が盛り上がり、這い上がろうとしてくる毛むくじゃらの人ではない「それ」。


再び接敵した僕は恐怖が蘇る。


「ま、またアイツだ……嫌だ……!」

魔喰者マナ・バイター!?〉


逃げなきゃ……殺される...

身体が勝手に動いていた。

化物に背を向け小屋に向かい逃げ込もうとした。

〈逃げちゃいけない!〉


ピタッ


僕は足を止める。

〈君は英雄になったんだ!こんなところで逃げてしまったら、何かあったらすぐ逃げ出してしまうようになる〉


僕は声を震わせながら訴える。

「な、何言ってるんだよ……偶然、腕輪が着いて、英雄に選ばれたから戦えっていうのか?」

アラタの訴えは、さらに続く

「そもそも英雄ってなんだよ!ぼ……僕にはなんの力もないじゃないか!」


声を震わせ訴えるアラタを見て、少し黙り込みガルダが答える。


〈……それじゃ、君の友達や大切な人が危険な状況に陥っても、君は同じように背を向け逃げてしまうのかな……?〉



昔のことを思いだした。


ーーーーー


小学2年生の頃、僕は当時暗いという理由だけで同級生にイジメを受けていた。

「お前暗くて怖いんだよ!」

そんな罵りが数えきれなかった。


2人が割って入ってくれた。

「自分達と少し違うって理由だけで人を虐めるな」

「正義の味方参上!!」


そう言っていつも持ち歩いている、木刀を振りかざしてくれるヤマトくん。

弱い者イジメが嫌いなイサムくん。


「アラタっていい名前だな!なんかかっけえ!」

「嫌がる事されても俯くな、堂々と胸を張るんだ」



そう言って2人は、毎日のように僕のクラスに遊びに来るようになった。

イジメは次第に減っていった。


1人じゃないんだって気持ちになって嬉しかった。

でも……ずっと2人に守られてる気がして、何も出来ない自分が嫌になった。


だから、少しでも強くなれるようにと親にお願いして、合気道を習うようになった。


誰かを傷つけそうな習い事はできなかったんだ。


合気道なら力の流れを利用したり、力の流れを乱したりすることができるから、なるべく傷つけないようにできると思った。


こんなに一生懸命、何か出来るようにと努力したのに、また逃げ出すのか。


何も出来ない自分が嫌なのに、自分で何も出来ないと思い込もうとしてる。


せめて友達の助けになるくらい……


ーーーーー


現実に戻る。

這い上がってきた魔喰者(マナ・バイター)が、背を向けているアラタに迫ってきていた。


「そんなの!見捨てられる訳ないだろ!」

アラタは迫りくる魔喰者の腕を掴み

、後方に引き込んだ。

魔喰者は倒れ込み、掴んでいた腕を後ろに回し、動けないように極めに入る。


〈そうだ、それでいい……〉


力がなくても心で負けてはいけない……。

普段から習い事で合気道を習っていた僕には、一連の動作は習慣のようなものだった。

しかし魔喰者の力が強すぎるのか、押し戻されそうになっている。


「ガ……ガルダ!どうすればいいの?おじさんみたいに僕は真っ二つになんかできないよ!」

〈腕輪に命じるんだ!力を貸せって!そして叫ぶんだ『ーー』と!〉

アラタは力の限り叫んだ。


「え、英雄神装!」


突如吹き荒れる、豪風。

勢いで、腕を極めてた手を離して飛ばされてしまう。


「な……何がどうなって?」


戸惑う僕の前に、無数の光の球体が現れた。

光の球体は僕の右手に集まって、何かを形作ろうとしていた。


「こ、これは……」


アラタの右手には光の球体が作ったであろう、木の短剣が創造されていた。

短剣の周りに風を纏ってるような感じだ。


〈それは可能性の短剣(ヴァリアブルダガー)碧風(へきふう)の英雄の主武器だよ。〉

(しかし、木の短剣か……、殺したくはない……か)


「こ、これなら……!!」


=====


風で怯んだ魔喰者は再びアラタに襲いかかる。


アラタは合気道で培った力の流れを読み、木の短剣で力の方向を変え、魔喰者の体制を崩していく。

足を崩され、膝を崩される。

風と短剣で力の流れを変えられ、思った動きができなくなっていた。


もどかしさからか、呻き声を上げる異形の者。


「ここだぁ!!」

瞬間、アラタは後ろに回り込み、脊髄に短剣を力強く叩きつけた。


呻き声は途切れ、気を失ったのか膝を着いたまま俯き動かなくなってしまった。


「……はぁはぁッ……ぼ、僕でもやれるんだ...」


〈そうだ、これが英雄の力さ〉

(まだ、力の一端だけどね)


〈アラタ……これだけは忘れないでくれ。心を強く持つんだ、でないと……〉


パチパチパチ

拍手をしながら近づく足音。

暗闇から月夜に照らされて、少しずつ近づく人がいた。


「こ、今度は何?」

〈わからない……、でも気を付けろ、今のアラタじゃ……全く歯が立たない!〉

それだけ、禍々しい気をガルダは感じ取っていた。



「英雄の再誕が見れるなんて、とてもすばらしかったです。おめでとうございます……そしてさようなら」



そう言って、白と黒のツギハギのワンピースを着た女性は凶悪に笑って見せた。

赤い月の光が、その顔をより一層引き立てていた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 気になる、ほどでもないのですが、神装に衣装を与えるとファンタジー感と、特別な存在感が一気に出ます。変身することでそのキャラの特別感も出せますし、変身を最終手段として置いておくと読者さん…
2021/09/13 22:17 退会済み
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