プロローグ
あたり一面、見渡す限りの草原
あるのはひとつのボロ小屋だけ。
霧が掛かっていて
ひとりの男がたたずんでいた。
ここが何処なのか、
自分が誰なのか、
何も分からない。
しかし、分からないことに悲しみという感情すら湧かない。
そうか私は何も無いのだな……。
突然響き渡る地響き、
地面が盛り上がり這い上がってくる異形の人ではない「それ」
1つではなく「それ」は、おびただしい数をなして地面から這い上がってくる。
おそらく、私は「咎人」なのだろうな。
何かを償う為に、ここで生きながらえているのだろう。
男は背負っている身の丈2mをも優に超える大剣に手を添える。
私が「咎人」であろうと
私は死ぬ訳にはいかない。
生きて償うとか、かっこいいことを考えてる訳ではない。
死にたくないという感情があるから抗う。
大男は大剣を力強く
水平に薙ぎ払う。
人ではない「それ」は
あたり一面におびただしい血液をとびちらし、
何も無い草原は数え切れない死体と血の海と果てた。
血の匂い……
何故かわからない、だが……
落ちつく、ような気がする……
ボロ小屋の戸が開く
1人の少年がこちらに笑顔を向け
手を振っていた。
「それ」とは違い、人だと認識できる。
少年の左腕に巻いている左腕の黒色の布地。
おそらく私の大切な何かなのであろう。
この子には傷をつけてはいけないとゆう感情が湧いている。
それでも、この子の名前は分からない……
今日何かを覚えても、私はきっと
明日には何も覚えていないのだろうな。
覚えてるのは、私が咎人ということと、大切な何かを持っているとゆうこと、それだけだ。
そんなことを考えながら、
大男は自分の右腕の手首についている、透き通るガラスのような腕輪に目をやる。
そうして何も無い1日を今日も過ごすのだろう。