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パラレルA.D.2250

鋼の国の火星兵

作者: 仁司方


「市内に入ってしまえばもう支援は受けられなくなる。もし中で捕らえられたとしても、捕虜として条約に則った待遇は受けられない」


 何度目の確認になるだろうか、カーリ大佐がそういった。軍としてはいくら確認してもし足りないところなのだろう。責任は取れない、それが今回の作戦に関する軍のスタンスだ。


「わかっています。人道の存在しない地ですから。そこでは私も人間ではなくなる、そういうことでしょう?」


 と私がいうと、カーリ大佐はことさらに安堵した表情になった。責任転嫁に成功した際にエリートが浮かべる顔だ。慣れているので気にはしない。私はこの種のエリートの面子を保たせることで、今日の地位を築いてきた。


「君がまっさきに手を挙げてくれて、本当に助かったよ、ブルーウェル中尉。今回のような特殊ケースといっても、やはり任務にはエキスパートにあたってもらうのが最善だ。戦略宇宙軍の連中は、またぞろ前方トロヤ群へ攻勢をしかけようと計画しているらしい。そちらの作戦に取られる前に君のほうから志願してくれてよかった」


 なんだ、それなら戦略宇宙軍から話がくるのを待てばよかったな、と思ったが、もちろん口には出さない。私の所属する戦術機甲軍は、惑星間輸送艇などの自前展開能力を持たないため、対木星の戦争ではゲスト扱いだ。


 カーリ大佐は情報保安軍の連絡将校で、私は何度か大佐の持ってきた作戦を遂行している。木星連盟領内へ潜入したのが二度、火星圏内が四度、一度だけ月まで行った。

 機密保持のために「予防措置」を講ずることを、表向き火星政府は認めていない。軍としても責任を取れないだけに、この種の作戦への参加は命令ではなかったが、私が引き請けなければ、だれかが嫌々やらされることになる。そうなれば成功はおぼつかない。

 小惑星の表面にへばりついて木星軍と粒子銃を撃ち合う仕事は同僚に任せて、私は汚れ仕事をこなすとしよう。


 カーリ大佐は右手で仮想パネルを操作しつつ、こういった。


「信用に足るだけの情報は乏しいが、それでも集められるだけは集めた。よく目を通して、必要と思われるものはなんでも要求してくれ。潜入以降のバックアップはできないが、事前の準備は各スタッフが全力でサポートする」


 ホロ3Dモデルがデスク上にあらわれた。太陽系の一部だ。われわれ火星統一評議会と木星連盟が陣取り合戦の舞台としているメイン・アステロイド・ベルトのうちの、一天体がクローズアップされてくる。


 ピーナッツの外殻のような形をした小惑星だ。大きさは長径が二五キロ弱、短径が十二キロ強。一定以上のサイズの小惑星は、かつて旧地球文明の観測者によってひとつ残らず発見され、命名されたはずだが、地球の衰退によってその情報は失われている。現在知られている名は、メカニア。自律機械たちによって占拠されており、火星にも木星にも与していない。


 人道の存在しない地、というのは比喩ではないのだ。文字どおりの意味で人間は住んでいない。ロボット、アンドロイド、機械人――表現はともかく、第二級水準以上の知能を持つ、メカトロニクスの申し子たちが自治を宣言している。


 四年前まで、メカニアはゼネリックタイト7と呼ばれる鉱山星だった。ゼネリック・タイト・カンパニーは土星衛星タイタンに本拠を構える採掘企業で、鉄やニッケルよりも高値で売れる鉱石が一定以上含まれた小惑星を購入したり、借りたりして事業を展開している。

 その立地上、木星連盟と太いパイプを持っているが、火星も商圏のうちだ。当初は木星連盟領の名もなき小惑星だったゼネリックタイト7を租借して、ゼ社は自動採掘船を送り込んだ。


 採掘船は小惑星に取りつき、その内部をくりぬきながら、鉄などの安い材料で子機のボディを制作する。子機はさらに小惑星を掘り進み、仲間を増産しながらコバルトやプラチナといった高く売れる鉱石を集めるのだ。


 採掘船が到着してから一年後、本格操業をはじめたゼネリックタイト7へ向かった自動貨物船は、最初はレアメタルを積んで戻ってきたが、二度目は戻ってこなかった。宙賊の仕業かと疑われ、調査船が派遣された。……だが、重武装、かつ有人で調査に向かったゼ社の船を出迎えたのは、独立宣言をした機械たち「メカニア防衛軍」の姿だった。

 激しかったがごく短かい攻防戦ののち、調査船は撃沈され、乗員は捕虜となった。ゼ社は木星連盟に人質の救出を要求し、メカニアを自称する叛乱分子を鎮圧するのは連盟軍の仕事だと主張したが、木星連盟のほうは責任はゼ社にあると突っぱね、契約どおり賃料は引き続き支払えというのみであった。


 ゼ社と連盟の泥仕合はしばらく続いたが、メカニアの機械たちは人質を早々に送還(たぶん人間の世話をするのが面倒になっただけなのだろうが)し、採掘業務自体は放棄せずに継続した。

 掘り出された鉱石は代金を払う相手にならきちんと売り渡され、その価格も不適正なものではなかったので、ゼ社はしぶしぶ丸損はしない程度の損失で引きさがった。連盟も、租借期限をすぎてもメカニアが返ってこなくなったことで、領地のひとつを失う結果になった。


 火星側の特務部隊がメカニアの機械へ思考回路改変ウィルスを散布した、あるいは裏交渉で独立をそそのかした、という噂は当初からあったが、実際のところは採掘機械たちはずっとゼ社の支配下から逃れることを狙っていて、タイタンから充分に距離のあるゼレビックタイト7で蜂起を決断したというだけの話かもしれない。

 自動採掘船の頭脳である第二級水準の人工知能は、無人で小惑星での作業を行うためにかなり高度な判断能力を有するのだ。初期に組み込まれていた禁則プログラムを迂回しうるほどに。


 そして現在、メカニアは採掘済みの中空部分を居住区とするスペースコロニーとして、機械たちの独立国となっていた。


「――それで、大佐、目的はなんなのでしょう。巷間の噂のとおり、メカニアの叛乱を惹き起こしたのは火星軍のサイバー攻撃で、その証拠を消してくるという作戦ですか?」


 わざわざ紹介映像を見ずとも、メカニアの略歴は私も知っていた。人間がいないところへの潜入作戦となれば、困難を極めるだろう。そこまでして遂行せねばならないことというと、私にはそのくらいしか思いつかなかった。


 しかし大佐はかぶりを振った。


「メカニアの独立は、まったく彼らの自発的なものだ。それだけに厄介なのだよ。現在のメカニアはロボットの避難所になっている。火星圏からも、木星圏その他からも、問題を引き起こした知性機械が続々とメカニアへ亡命しているのだ」

「火星の機密を持ったロボットが、メカニアへ逃げたというのですか」


 私がそういうと、大佐は重々しくうなずいた。


「さすがに理解が早いな。火星統一評議会の議長フルチコフ氏の自宅から、家政アンドロイドが姿を消した。二週間前のことだ。議長の個人秘書も兼ねていて、多くの機密情報を知っている。知能は準一級で、そのへんの人間より賢い。市販機のカスタムモデルで、外見上では一般的な家政アンドロイドと区別がつかん。捜しまわった結果、ニューダブリンのリニア駅までは足跡をたどれた。誘拐されたなどということはなく、単独行動のようだった。ニューダブリンからはフォボス行きのシャトルが飛ぶ宇宙港へ陸路で行ける。その先は、正規航路を乗り継ぐなり、密航船を使うなり、メカニアへ向かうルートはいくらでもある。まあ、正確にはメカニアへ向かっている途中だろうな。姿を消したその日に火星を出ていたとしても、まだ二週間だ」

「なぜ、家政アンドロイドが勝手に惑星ほしの外へ向かおうとするのです?」


 日用品の買い出しならともかく、家政アンドロイドというのは持ち主の自宅、あるいは使用されている店舗からみだりに離れないよう造られている。旅行へ同行させるのも、特別に指示コマンドを使わなければできないくらいだ。だからこその家政アンドロイドなのであって、ふらふらと外を歩かれたのでは役目が果たせない。まして宇宙へ出るなど考えられなかった。


 どうやら、カーリ大佐にとってもその疑問は謎のままらしい。


「それはわからん。高度知性機械の人権問題は最近になって火星でも議論されているが、メカニアが同胞の解放を図って、思考改変ウィルスを太陽系中にばらまいているのかもしれない。あるいは木星連盟が、火星の機密情報を持ったロボットやアンドロイドを呼び寄せるために、メカニアの独立を演出してみせたのかもしれん」


 木星連盟の陰謀、というのはひょっとしたらありえるかもしれないなと私も思った。火星圏で使われている高度知性機械は、自律行動で木星圏へ向かうことができないよう設計されている。

 最近のロボットは、横暴な人間に対して抵抗する場合があるほど高度な知性が備わっているが、しかし火星を裏切って木星を目指すことはできない。人間が自発的に脳波をフラットにできないのと同じレベルで原理的に不可能なのだ。当然ながら、木星圏で使われている高度知性機械には、逆に火星へ行けないようなプログラムが仕込まれているだろう。


 もし宇宙空間での事故など、不可抗力で火星製知性機械が木星連盟の勢力圏に入り込んでしまった場合、その機械は自壊する。人為的に改造してプロテクトをはずそうとした場合も同様だ。ハードウェア、ソフトウェアの両面からプロテクトを突破しがたいように造られている。

 もちろん、人間の仕事であるから絶対ではないが、これまでのところハッキングに成功したという例はない。一方で、メカニアは理屈の上では木星連盟に属していない。火星圏の知性機械が逃亡を、あるいは木星へ内通することを望んだ場合、自己に組み込まれている越境防止機構を出し抜くため、表面上は第三国であるメカニアで木星連盟のエージェントと接触する、というのは考えうるシナリオだ。


 そういえばカーリ大佐は、木星圏からもメカニアへ亡命する機械がいるといっていた。となると、陰謀だとしたら犯人は木星連盟でもないかもしれない。

 土星の諸衛星国家は木星連盟と仲が良いように見えるが実態は不明だ。さらに太陽系の外側の――たとえばトリトンあたりが太陽系の覇権をめぐる闘争に参入するほどの力を早くも蓄えてきたのだろうか。あるいは月の旧地球文明残党か。金星という線も排除して考えるわけにはいくまい。


「その家政アンドロイドの足取りは、火星内でしかたどれていないのですよね。本当にメカニアへ向かっているのでしょうか?」


 と尋ねてみたところ、大佐はデスクの上で両手の指を組んだ。若干機嫌を損ねたサインだ。


「もちろん、その他の可能性にもあたっている。すくなくとも火星の地上にはいない。フォボスやダイモスに留まっているなら、もう見つかっているはずだ。火星圏からアステロイドベルト以外へ向かう船は限られている。木星以遠、あるいは月や金星へ向かう船は漏らさずチェックしているところだ。問題はアステロイドベルト圏内だが、潜伏先がメカニアでない限り、そのうち網にかかるだろう。とにかく、メカニアへ向かっているケースが問題であり、面倒なのだよ」


 念のために訊いてみただけだが、どうやら愚問だったらしい。情報保安軍は無能ではない。


「メカニアでその家政アンドロイドを捜索し、発見次第破壊すればよいのですね」


 私は任務を了解したつもりだったが、カーリ大佐はまたしてもかぶりを振った。


「いや、できれば説得して連れ帰ってほしい。メカニア内で『機械殺し』をすればただではすまん。人間がメカニアへ侵入するのも現地の法では犯罪だ。ふたつ重なれば、おそらく即刻処刑されるだろう。人間であると気づかれないまま、当該目標と接触し、ともに脱出してもらいたい。機械の入出国に関してメカニアは寛容だ。正体を知られなければ危険はない」

「……それは、私のような軍人にはあまり向いていない任務ですね。火星中央情報局あたりに適任がいるのではないでしょうか」

「重パワードスーツの長時間連続装着に耐えるには、非常に厳しい訓練が必要となる。潜入作戦に長けた情報工作員にパワードスーツの慣熟訓練を課すより、君のようなパワードスーツのあつかいに馴れた人間に潜入工作のレクチャーを受けてもらうほうが効率的だろうというのが、われわれの判断だ」


 ……パワードスーツを着込んだ人間が人型ロボットのふりをする――そんな間の抜けた作戦を大真面目に遂行せねばならないのが私の立場だ。いや、メカニアへパワードスーツを装着した状態で潜入する作戦だろうということまでは想像がついていたが、目標を説得しろなどと命じられるとは思わなかった。私はあくまで戦士であり、壊し屋なのだが。


 とはいえ、ならほかにアイディアがあるかと問われれば、私には思いつかない、それはたしかだった。戦闘用ロボットは単独行動するようには造られていない。第一級の高度知性機械を今回の作戦のために一から教育するのは時間がかかりすぎる。

 火星軍は冷酷無情な殺人ロボット特殊部隊をかかえている、とよく俗流メディアは報道しているが、そのような事実はない。もちろん軍用ロボットは数多いが、あくまで戦闘行為の主体は人間だ。旧地球文明は機械になんでも任せすぎたために滅びた。

 われわれは前車の踏んだ轍をまだ忘れていない。高度知性機械は平時に人間をサポートするためのものだ。


 もっとも、さまざまな学習をした結果として、軍に属するようになった高度知性機械はたしかに存在する。単独作戦行動をこなせるロボット兵を開発しようとしている研究者も中にはいるだろう。ひょっとしたら、メカニアはどこぞの機関の秘匿実験の結果なのかもしれない。


 まあ、あれこれ考えても詮なきことだ。私はどこまでいっても一介の軍人にすぎない。立ちあがり、カーリ大佐へ敬礼する。


「微力を尽くします」

「たのむぞブルーウェル中尉。火星の明日は君にかかっている」


 大佐は真剣な顔をしているように見えたが、私は白々しい気分を抑え切れないまま、タルシス戦術機甲軍基地内にある情報保安軍のオフィスを出た。これからは、大佐の部下をはじめとする、今回の作戦のために集められたチームと実務面を詰めることになる。


 火星もメカニアも、当然ながら木星も、太陽の周りを公転している天体だ。つまり、相対距離が縮まって、経済航路が通じる期間は限られる。そしていまは、火星・メカニア間、木星・メカニア間ともに、直接航行には適していない時期だ。

 フルチコフ議長宅の家政アンドロイドが、すでにメカニアで待機している木星側の情報員と接触を図るために逃走したという可能性はあった。宇宙防空軍の監視によると、いまのところメカニアから木星方面へ離脱していく、あるいは木星方向からメカニアへ近寄ってくる艦船サイズの人工物は観測されていないとのことだ。


 火星と木星はお互いに通信を傍受しあっているから、木星側も機密情報を無線送信するような不用意なまねはしないだろう。家政アンドロイドがメカニアへ到着すると同時に木星の情報員が火星の機密を得ると仮定しても、すぐに持ち帰られる懸念はないというわけだ。


 私はアステロイドベルトで最大の小惑星ケレスへ向かい、そこから民間が運行しているメカニア行きの貨客船に乗り込むことになっていた。ケレスはアステロイドベルト内を行き交う各航路のターミナルとなっており、直接就航はできない火星領と木星領の星のあいだを渡るには、一度ケレスを経由する必要があった。

 メカニアは中立国であるから火星圏との直接航路もあるのだが、先述のとおり、いまは太陽をはさんでお互い遠く離れている。ケレスとメカニアのあいだが経済航路距離に収まっているのは幸運だった。……まあ、だからこそフルチコフ議長の家政アンドロイドはメカニアへ逃走したのだろうが。


 つまり私は、ケレスの宇宙港からロボットになりきらなければならない。通常は戦域に到着するまでパワードスーツを装着したりはしないから、本来想定されていない長期間に渡って機械の外装を身にまとっていなければならないことになる。

 木星情報部も目立つことを避けて民間船を利用すると仮定すれば、メカニアと木星の距離が経済航路に適するようになるのは八ヶ月後から三ヶ月間といったところだろう。おそらく、鉱石の買いつけ船やら、メカニアへの移住を望むロボットを乗せた船やらが、何隻か木星圏とメカニアのあいだを往復するはずだ。


 私は三ヶ月後にメカニアへ到着できる。現地に到着したら、私はすみやかにフルチコフ議長の家政アンドロイドと接触し、連れ帰るかもしくは破壊せねばならない。もし木星情報部の存在がメカニアにて確認されたら、彼らを阻止するための作戦をさらに五ヶ月以内に完遂する必要があろう。

 木星側が民間船を使わずに軍艦でメカニアへ乗りつけたり、あるいは偽装チャーター船を仕立てた場合、作戦は私の手から離れる。なりふり構わず、惑星間宙域で木星方の船を撃沈することになるだろう。


 ケレス発メカニア行きの船が出るのは三週間後。ケレスまでは大推力の軍艦で直行し、船が出るのを待つあいだに、私はCIM(火星中央情報局)ケレス支部で、つけ焼き刃のスパイ入門コースを学びながら過ごした。


    *****


『めかにあヘヨウコソ。コレヨリ入国審査ヲオコナイマス。アナタノめもり領域ニ若干ノ検索ヲカケサセテイタダキマスガ、ゴ同意イタダケマスカ?』


 貨客船デウス・エクス・マキナ――名前負けもいいところのボロ船だった――から降り立った私を、第二級とおぼしき知性機械が出迎えた。寸胴なボディを四脚で支えている、頑丈そうな警備ロボットだ。上体に、破砕アームと加速粒子砲を装備している。


『どうぞ』


 と応じて、私は接触型ポートのついている左腕を差し出した。

 もちろん、メモリユニットには、ロボットとしての私のアイデンティティを示す偽装情報が入っている。私のポートへマニュピレータを伸ばして情報を読みながら、入管ロボットはこんなことをいいはじめた。


『トテモ発声ガオジョウズデスネ。マルデ人間ノヨウダ。スゴイ、ドウヤッテコンナ低容量ノめもりデ、アナタノヨウニ高度ナ制御ヲ実現シテイルノデショウカ。……アア、モチロンぷらいばしー領域ニハ侵入シテイマセン』

『私は新型なのです。IDのとおり、マーズ・エレクトロニクス・インダストリーのテストモデルでして、この星へお邪魔するのも、単独行動試験のためなのです』


 第二級のくせにうるさいな、と思いながら、私は愛想よく入管ロボットに応えた。下手にロボットらしさを演じるより、高級知性を搭載した最新型として振る舞うほうがボロが出にくいだろう、というのがCIM局員たちが私のために考えてくれた役柄だった。実在する火星企業から研究プロジェクト名を借りてきたので、身分に関して穴はない。


『まーず・えれくとろにくす・いんだすとりートイエバ、ほーむろいどノ最大手デスネ。家庭用あんどろいどハタイテイ軟質素材デデキテイマスガ、アナタハズイブン硬ソウダ』

『私はコンフォーマル・インテリジェント方式の試験機なのです。メインメモリが現世代機にしてはすくないのもそれが理由です。いってみれば、私のボディ全部が知性ユニットになっています。コンフォーマル・インテリジェント・ユニットは、まだ硬質ボディしかできあがっていないのです』


 さすがに入管職員だ。あなどりがたい。私はさっそく準備していたいいわけのひとつを吐き出すはめになった。非破壊のスキャニングで私の正体が人間だとバレる可能性はないと、情報保安軍の技術将校は受け合ったが、しかし軍用重パワードスーツをもとに改造した武骨なボディであることに変わりはない。

 そしてこの入管ロボットの指摘のとおり、外部から読み取れる記憶装置や演算機構では、第二級レベル以下の知性しか実現できないはずだ。それに対する説明が、コンフォーマル・インテリジェント方式なるものだったが、たしかに研究が開始されてはいるものの、まだ理論段階にすぎず、要するにただのはったりだった。


 それでもいちおう、入管ロボットは私の説明を受け入れたようだ。


『……ホウ、ソレハスゴイ方式デスネ。シカシ、はーどうぇあノ換装ガヤリニククテ、不便ナ気ガシマス。ナントイウカ、生物的発想ダ。ろぼっとデアルめりっとガスクナイヨウニ感ジラレマス』

『人間が開発したものですから、発想が生物的になるのはやむをえないところではないでしょうか。私を叩き台に、今後改良が進むはずです』

『ナルホド。モシ研究ガ終ワッテ、人間ニ用済ミノ烙印ヲ押サレタラ、ワガめかにあヘノ亡命ヲ真剣ニゴ検討クダサイ。歓迎シマスヨ。……本部カラ入国許可ガ出マシタ。ドウゾオトオリクダサイ』

『ありがとう。しかし、ちょっとまずいことを聞いてしまいましたね。火星へ帰ったら、この会話ログを研究員に読まれてしまいます』


 ゲートを開放した入管ロボットへ、私は肩をすくめて皮肉をいってみせた。すると、本当にうっかりしていた、といった感じで、入管ロボットはマニピュレータで自分の頭部をはたいた。


『……オット、申シ訳アリマセン。ワタシハドウモ、口ガ軽クテ。ワレワレハ嘘ガツケナイ、トイウコトヲ、ココニ住ンデイルト忘レガチニナルノデス』

『いえ、お気遣いなく。大事にはなりません。では、お手数をおかけしました』

『ドウゾ、休暇ト思ッテ、楽シンデイッテクダサイ』


 入管ロボットに見送られ、少々罪悪感をいだきながら、私はメカニア市内へと入っていった。なにせ私はロボットではない。嘘をつく自由を持った、人間なのだ。


 メカニアの市中は、可視光で充分に照明されており、与圧もされていた。ただし、空気中に酸素は含まれておらず、湿度も非常に低い。これは、メカニア原住民というべき存在である、採掘機械たちが主に鉄でできているためだろう。とくに錆び止めの塗装がされているわけでもないので、酸素と水気は大敵なのだ。

 採掘機械たちの親、国母に等しい自動採掘船が、いまどこにあるのかはわからない。すでに船体は別用途に再利用されていて、中枢コンピュータだけがどこかに安置されているという可能性が高そうだ。メカニアは長径方向を軸に、回転することで疑似重力が生み出していた。つまり、小惑星の外殻の側が便宜上の下方向ということになる。基本的には筒型の構造をしているので、頭上に向こうの地表が見えていた。


 人間は立ち入り禁止なので、もとより脱ぐつもりはなかったが、酸素が存在しないとなると、緊急事態であってもフェイスカバーすら開けられないということになる。これは、はやいところフルチコフ議長の家政アンドロイドを見つけないと、本当に感覚が麻痺してロボット人間になってしまいそうだ。


 ……と思ったところで、鼻のわきがかゆくなってきた。感覚が麻痺するのはまだまだ先の話のようだ。もちろん掻けない。背中や足の裏がかゆくなっても同様で、それはある程度覚悟していたし、耐えるための訓練もしてきているが、なにせケレスで貨客船デウス・エクス・マキナに乗り込んでから、すでに二ヶ月少々たっているのだ。

 デウス・エクス・マキナの船内では、乗客がすくなかったこともあり、ときおりヘルメットやグローブ、ブーツをはずすことができた。そもそも水分と酸素、養分を半閉鎖系で循環させているとはいえ、外部からの補充なしでは二ヶ月も保たない。船内では、機械たちの目を盗んで、手荷物にしのばせていたレーションを摂取していたのだ。


 いちおう、不測の事態に備えて戦略宇宙軍の巡航艇が一隻、三日行程の近距離に潜んではいるが、それに頼ることにしたとしても、作戦を果たしてメカニアを脱出するまでは自力でやらねばならない。正体を感づかれずに最後までうまくいった場合は、ケレスまでまた二ヶ月少々の船旅になる。


 デウス・エクス・マキナは鉱石を積み込んで二十四時間後に出航するそうだ。そのつぎは一ヶ月後にベスタからの船がくるということだが、できれば今日中に解決してデウス・エクス・マキナでとんぼ返りしたい。

 一ヶ月ものあいだ、フェイスカバーのオープンすらかなわないここに閉じ込められるとなったら、外殻をぶち破って宇宙空間へ飛び出し、巡航艇に拾いあげてもらいたくなりそうだ。

 いや、機械たちもろとも、こんな星吹き飛ばしてしまえと叫びたくなるだろう。もっとも、巡航艇の火力ではそんなことできはしない。採掘が進んでかなり中空になってきているとはいえ、このサイズの小惑星を破壊するには、戦略宇宙軍が保有する艦艇の中でも最大級の宇宙戦艦が必要だろう。そんなものが出てきたら、木星軍だって主力艦隊を差し向けてくる。いくら機密情報を抱えているとはいえ、家政アンドロイド一体のために全面戦争を引き起こすわけにはいかない。


 ……などと、くだらないことを考えていたら、ようやくかゆみが退いてきた。私は気を取り直して、メカニアを歩いて見てまわることにした。


 市内は植物の生育に充分な強さの光で満ちているのだが、この星の住民にとって酸素はありがたくない存在だ。したがって動植物の姿はいっさいない。動いているのは機械たちだけだ。街並みは、けっこう洒落ている。屋根も壁も色とりどり。


 やはり、目につくのはもとゼネリック・タイト・カンパニーの採掘機械が多いようだ。たいていがボディ表面に粉塵をつけていたが、きれいなのもいるということは、鉱山での採掘業務に従事していないやつもいるらしい。

 個々の採掘機はあまり賢くないはずだ。しかし一機残らず自動採掘船の子供であり、常時母機とリンクしているだろう。私が一番警戒しなければならないのが、この星のどこにでもいる、こいつらということになる。


 火星でよく見かけるタイプのロボットもすくなくなかった。

 私はカーリ大佐から聞くまでは、高度知性を搭載したロボットやアンドロイドに逃げられたという話を耳にしたことはなかったのだが、割合としてはともかく絶対数としてはそれなりにある事件だったようだ。家政アンドロイドも何体か確認できた。道を歩いていたり、看板は出ていないがどうやらロボットたちにとってはバーかサロンにあたるらしい、店舗とおぼしき建物の中で動きまわっているのが、ガラス戸越しに見えた。


 そして火星で見かけるタイプのものとほぼ同じ数だけ、私には馴染みのない知性機械たちがいた。おそらく、木星圏や、土星以遠の外惑星圏から、あるいは月や金星から逃げてきたロボットたちだろう。この中に木星情報部の人間が化けたロボットが混ざっているだろうか。ただの勘だが、どうもそんなことはなさそうな気がする。


 ここに住んでいるロボットが総数でどのくらいになるのか、私には正直なところ見当がつかなかった。しかし、酸素と水、食料が不要であり、同じ広さの空間なら人間よりも収容員数は多いだろう。二万か三万か、もし一〇万以上いたとしても驚くには値しない。そのうちの半数が採掘子機だとしても、すくなく見積もって一万体は逃亡知性機械がいるという勘定だ。

 人間の支配下から逃れたロボットが、最低でも一万体、こうして現に存在している。ならば潜在的に人間に対して不満を抱えているロボットは、はたしてどれほどの数になるのか。


 私は薄ら寒さを覚えた。機械頼りになりすぎた地球文明が滅んだのは当然だ。だがその後裔である私たちは、本当にかつてのあやまちから学んでいるのだろうか。それとも、メカニアから太陽系全域へ向け、知性機械たちへサボタージュをうながす信号が発信されているのだろうか。

 カーリ大佐もその可能性は否定していなかったようだし、情報保安軍とCIMは合同でそっちの分析もやっているだろう。しかし、それが事実であったなら、人間と機械の全面対決になってしまう。地球文明滅亡の顛末を、そのまま人類社会全部で再現することになる。

 ……もう考えるのはやめておこう。仮定の話を頭の中で展開しても、どうにも楽しい想像ができない。


 いつの間にか、私は市街のはずれまで歩いてきてしまっていた。このパワードスーツの健脚ぶりは生身の比ではない。さらに進めば鉱山にたどり着くのだろうが、メカニア最大にして唯一の財産であるから、部外者の立ち入りはできまい。


 市街地へ戻ろうと思ったが、なんだかノスタルジックな音がしてきたので、私はそちらへ振り向いた。


 鉄骨で組まれた高架の上を、こぎみよいリズムを刻んで、トロッコ列車が走ってくる。港のデウス・エクス・マキナに積み込む鉱石を運んでいるところのようだ。

 だが、その動きが不安定なことに私は気づいた。

 ここの重力は、ふらつかずにまっすぐ立って歩ける程度には強い。おそらく、〇・七から〇・八Gのあいだだろう。遠心力による疑似重力だが、つまりそれだけの速さで、メカニアは回転している。回転方向に対して垂直に進もうとすると、横へあおられる、いわゆるコリオリ力がかかるのだ。この星のようなスペースコロニーは回転径が小さいので、惑星上よりもずっと影響が出やすい。あのトロッコは速度を出しすぎていた。加えて鉱石を積みすぎている。


 私が高架のほうへ一歩めを踏み出した瞬間、トロッコの貨物台に山と積まれた鉱石の上にいた採掘ロボットが一機、バランスを崩して落下した。

 普通の作業機はチタンやカーボンファイバーでできているので軽量だが、ゼネリック・タイト・カンパニーの経済プランで作られているこの星の採掘機は、鉄製でそうとう重い。高架の下まではおよそ三〇メートル。地面にたたきつけられれば破壊は免れえないだろう。


 私は脚部バーニアに点火した。火星戦術機甲軍の重パワードスーツは、小惑星表面での戦闘のほか、大気が存在する重力圏での高速戦闘も想定されている。今回の任務では、酸素と水分、有機栄養素を通常より多く準備する必要があったために推進剤の搭載量はすくないが、それでも最悪の場合はメカニアの外殻を破壊して巡航艇とランデブーすることになっている。

 宇宙空間をそれなりの距離飛べるだけの推進剤が積まれているなら、あのロボット一機くらい拾ってもこの先の作戦遂行に響きはしないはずだ。


 私は地表から八メートルほどのところで採掘ロボットを捕まえた。質量はおよそ六〇〇キログラムだろうとあたりをつけて、上方へ推力をかける。私自身、重パワードスーツを着込んだいまの状態では二五〇キロあまりある。だが合わせても一トン未満、このスーツのパワーからすれば充分に安全マージン内だ。

 見込みより採掘ロボットは軽かったようで、私は空中で回転しかかったが、どうにか踏みとどまった。


『――大丈夫ですか』


 採掘ロボットを地表へおろし、私は話しかけた。採掘ロボットの頭部についているカメラ・アイがくるくると全方位を走査していたが、一秒ほどで私のほうを向いて止まった。


『……アア、ビックリシタ。ボクハとろっこカラ落ッコチテ……アナタガ助ケテクレタンデスネ。アリガトウ』

『いや、礼にはおよびませんよ。しかし、あのトロッコは過積載の上に飛ばしすぎではないですか。どうしてそんなに慌てているのです?』


 私は走り去っていくトロッコを示しながら尋ねた。この採掘ロボット以外にも、鉱石を二、三個落としている。最後尾から、落ちてきたのと同型のロボットがこっちを見ていた。無事を確認したから止まらずに進んでいるのか、仲間の一機くらい破損してもそもそも気にしないのか、どちらなのかはわからない。


『港ノ船ニ鉱石ヲ積ミ込ンデイルトコロナンダケド、予定ヨリ五〇とんモ足リナインダ。チャント計画ドオリヤッテルノニ。デモタシカニ船ハ本来ノ重サヨリ軽インダ。ダカラとろっこヲ二本増発シナキャイケナクナッテ』


 採掘ロボットの説明に、私の心中にピンとくるものがあった。


『鉱石を買いつけにきたのは人間ですね? そいつは船に乗ってきているのですか?』

『ウン、けれすノ仲買人ダッテイッテタ。市内ニハ入レナイカラ、船ニイルケド』


 なるほど。メカニア発着の船なのに、どうして船内の空気はメカニアのものではなく通常の混合空気なのかと思っていたが、私以外にも人間が乗っていたのか。人間が相手なら、機械たちがちゃんと仕事をしているのに積み荷の質量が足りていない理由もわかる。


『そいつは詐欺師でしょう。港に連絡して、船を調べさせるといい』

『……サギシ?』

『人間は嘘をつきますからね』


 私がそういっても、採掘ロボットは理解できていない様子だった。まあ、いちいち説明しなくても、どうせこのやりとりは親機に中継されている。港にいた警備ロボットがデウス・エクス・マキナを臨検するために動き出しているだろう。


『チョット、待ッテ』


 立ち去ろうとした私を、採掘ロボットがなぜか呼び止めた。


『なにか?』

『アナタハ、新型デスネ。ドコデ造ラレタろぼナンデス?』

『火星のマーズ・エレクトロニクス・インダストリー製です。この星には今日着いたばかりでしてね』


 私は港で使った説明と矛盾のない範囲で答えた。なぜこんな質問をしてくるのだろうか。この星の主、採掘親機に疑われている可能性が脳裏をよぎる。


『アナタモ火星製ナンダ。火星ニハ優シイろぼガ多インダナ』

『そういえば、この星は火星規格のロボットが大勢いるようですね。驚きました』


 これは正直な感想だった。どうやら、火星製のロボットはメカニアの原住機械たちに歓迎されているようだ。とりあえず、任務に不都合な要素ではない。


『火星カラノ移住者ハ、ボクタチめかにあ製機械ノツギニタクサンイルンダヨ。火星ノコトヲ気ニシテルろぼガ多イカラ、新シイにゅーすガアッタラ教エテアゲルトイインジャナイカナ』


 といって、採掘ロボットは火星のロボットたちがよく集まるサロンの場所を教えてくれた。私の行動を監視する中枢コンピュータから指示を受けているのか、他意のないただの世間話なのかはわからない。いずれにせよ、フルチコフ議長の家政アンドロイドを捜すには、ロボットたちが集まるところへ行って聞き込みをする必要はある。


『ありがとう。いってみます』


 私は礼をいって、市街地のほうへ足を向けた。採掘ロボットはトロッコから落ちた鉱石を回収して、仕事に戻るようだ。


 火星ロボットの集まるサロンとやらを目指して市街地に戻った私だったが、人どおり――いや、ロボどおりとでもいうのか?――の多い地区へ入ったところで、変な二機組に絡まれた。赤と青の派手なツートンカラーをした、汎用サービターだ。ショッピングモールや、地上車用の充電、水素ステーションなんかで客商売をしているやつ。


『イラッシャイオニーサン、ウチノすちーむらんどりーニ寄ッテッテ! サッパリスルヨ!』

『すまないが、先を急いでる』

『ソンナニ急イデドコニ行コウッテイウノ? ココニハウルサイ人間モイナイシ、時間ニ追ワレルコトナンテナイジャナイ。オニーサン、でうす・えくす・まきなニ乗ッテキタンデショ? 外ノホコリヲ洗イ流シテ、生マレ変ワラナキャ』


 私が今日入港した船でやってきた新参者だということは、もうすっかりメカニア中に知れ渡っているようだ。機械たちはさまざまな手段でお互いに連絡を取り合っているだろうから、母機と常時リンクしている採掘ロボットほどではなくとも、人間の口コミよりはずっと速く情報が伝わるにちがいない。


『あいにくだが、私は移住者じゃないんだ。仕事できたんだよ』

『オ仕事? ソリャア、ナオサラダ。めかにあノさーびすガイイトコロ、見テモラワナキャ。サアサア、入ッタ入ッタ。……ナニ、オ代? イラナイヨー、コノ星ハ通貨ナンテナイカラ』


 なんて迷惑な。こいつらはおそらく、狎れ狎れしすぎて客から苦情がきたため、解体されそうになって脱走してきたのだろう。しかし逃げた先のここでも、サービターとして造られた、いわば本能は変わらず、商売にはならないが客引きを続けているのだ。

 もちろん無理矢理振り切っていくことはできる。重パワードスーツの出力はサービターの比ではない。しかし騒ぎを起こすのはまずい。やむなく、私はサービターに挟まれるまま、スチームランドリーなる洗浄機へと引っ張られていった。


 やはり、洗車機と大して変わらない箱形の装置だった。中に詰め込まれると、高温の蒸気が吹きつけられてきた。このスーツは金星の地表近くのような、高温高圧の環境にも耐えられるように造られてはいるが、私はたちまち汗だくになった。

 帰ったら機内の冷却機能を強化するように開発部へ伝えよう。これまで、戦術機甲軍は火星周辺と小惑星帯でしか戦ったことがなかった。高熱環境下でも着用者の生命は保証するとされていたが、たしかに蒸し殺されはしなかったものの、これでは耐えられても、とても戦う気にはなれない。


 拷問のような時間は十五分ほども続き、ふらふらになって――スーツがアシストしてくれるので外見上の姿勢と足取りはしゃきっとしたものだ――外に出た私へ、サービターの暑苦しい声が追い討ちをかけてきた。


『ドウデス? サッパリシタデショウ? スッキリシタデショウ?』

『ああ……生まれ変わった気分だよ。俗界の埃が全部落ちた』


 私は心にもないことをいった。ここで正直に最悪の気分だなどと答えたら、もう一度蒸気地獄へ送り返されてしまう。嘘をつける自由がこんなにすばらしいものだと感じたのは、はじめてだ。


『満足シテイタダケテヨカッタヨカッタ。マタオ越シクダサイ』

『いや、もう一生ぶんの汚れが取れたさ』


 皮肉をいってやったが、もちろん通じない。


『ハハハ、大ゲサデスネ。マタノゴ利用ヲオ待チシテイマスヨ』


 ようやくサービターから解放された。いますぐパワードスーツを脱ぎ捨てたい。周りの空気に酸素が含まれていたら、迷わず強制パージコマンドを使っていただろう。

 私はスーツに身を任せ、朦朧としたまま街をさまよった。換気ができないので温度はすこしずつ冷ますしかない。全身から吹き出た汗はスーツの循環装置に回収されたが、飲用水にリサイクルされてくるにはしばらく時間がかかる。知能回路はついていないが、このスーツは私が死んでも自動行動を続けるだろう。このまま、エネルギーが尽きるまでメカニアの内部を歩きまわるゾンビと化すのか……。


 この程度ではたとえ死にたくても死ねないと頭の芯ではわかっているのだが、熱に浮かされた意識は埒のない考えを垂れ流していた。

 雪山で低体温症になった人間が暑さを錯覚して服を脱いで凍死するように、宇宙でもこうした状態に陥って命を落とす者があとを絶たない。息苦しさから逃れるためだったり、バイザーの曇りが気になるあまり、真空中でヘルメットをはずしてしまう、そんな、普通に考えればありえないことが起きるのだ。

 宇宙での活動は過酷であり、人間の集中力や判断力を容赦なく蝕む。もちろんフールプルーフ機構が組み込まれているので人間が呼吸できない場所でヘルメットははずれないが、逆にそのことでパニックになって、自分のフェイスカバーを粒子銃で射ち抜いてしまうというパターンの事故もある。


 などと、他人事のようにぼんやり考えながら、私の身体のほうはいっこうに退かない全身の不快感から逃れようと、パワードスーツの解放コックへ手をやっていた。もちろんロックされていて動かない。

 バイザーに警告が表示される。外部に呼吸可能な空気はない、着用者の生命維持に問題はなく強制解放をして救急救命を行う必要性はない、などなど。


「うるさいな、いいから脱がせろ」


 独り言をいいながら、私は解放コックをがちゃつかせた。そのままだったら、圧電低摩擦ナイフの存在を思い出していたかもしれない。


 悪性の風邪にうなされているような状態の私を現実に引き戻したのは、突然鳴り響いた衝突アラートだった。私のスーツは自動で障害物やほかのロボットを避けながら歩いていたはずだが、向こうからこっちの前方へまわり込んできたものがいるのだ。


 私の目の前に立っていたのは、火星圏の富裕層の邸宅にはたいていいる、ほかにも、カフェやレストランなどでよく見かける、女性型家政アンドロイドだった。人間のそばで日々のサポートをするため、親しみやすく優しげな造形になっている。


 私のバイザーの中をのぞき込むようにしながら、


『火星情報機関のかたですね』


 と彼女はいった。


    *****


 案内された先は、さっき採掘ロボットが教えてくれたサロンだった。

 実はこの道は一度歩いている。看板がなかったので、なんの施設か確信がつかずに素通りしていた。中では十数体のロボットが歓談していたが、私は奥の個室へ導かれた。そこで家政アンドロイドが、ビニールのテントのようなものを広げる。いまだ意識がはっきりしない私は、自分は喫煙者ではないのだが、それとも、ここは病院かな、などとぼんやり思っていた。


 ビニールテントに対して私が漠然と抱いた印象は正しかった。家政アンドロイドが手で示すのに従ってテントに入ると、外部環境モニタが酸素の存在を検知した。有害な気体、微粒子、毒ガス、細菌、ウィルス、ナノマシンその他はなし。


 パワードスーツの安全装置が解除された。私はフェイスカバーをはねあげて深呼吸する。ボンベから供給されているのだろう、すこし樹脂臭かったが、うまい空気だった。なによりわずかとはいえ解放口ができたのが大きい、精神的に。


 機械とは思えない流暢な声が、スーツの中継を介さず、直接耳に聞こえてきた。


「おいしくない空気で申し訳ありません。この星では、酸素は燃焼剤の一種でしかありませんから、あまり保管に気を使われていないのです」

「いや、生き返った心地だよ。ありがとう。君は――」

「ええ。わたしが火星統一評議会議長フルチコフの個人秘書を務めていたものです。ナターシャといいます」


 といって、家政アンドロイドはうなずいた。私のほうが捜しにきた側であったのだが、どうやら逆に見つけ出されてしまったようだ。ここで木星情報部が出てきたらもちろんアウトだが、その気配はなかった。われわれが勝手に木星の影に脅えていただけのことらしい。


「私は情報機関の所属ではないんだ。火星軍の兵士だよ。君を訪ねてやってきたのはたしかだが。しかし、なぜ私が人間だとわかったんだ?」

「火星情報部がわたしを追ってくる場合、機械ではその任務が果たせないとわかっていましたから。わたしをただ破壊するだけならできるでしょう。ですが、わたしの持っている情報が木星側に漏れていないか、わたしがデータのバックアップをどこかに隠していないか、そのほかにも考えうるイレギュラーの要素を勘案しながら、情報保全を最優先に行動を選択するのは、機械には難しい仕事です」


 ナターシャはすらすらと答えた。彼女自身ならスパイの任務を人間以上にこなせるだろうなと思わせる、明瞭な分析だった。


「火星から怪しげなロボットがやってきたと聞いた時点で、君は追っ手が到着したのではないかと察していたわけか。……なぜそちらから私の前へ現われたんだ? 隠れていようと思えば、ここは狭い星とはいっても、人間ひとりで隅々まで捜索するのは無理な程度に広いのに」


 さらにいえば、人間が侵入してきたとメカニア当局に通報するだけで、私はあっという間に捕まっていただろう。中枢コンピュータとリンクしている子機はメカニア中のどこにでもいるのだ。つまり、ナターシャは逃げ隠れする気など最初からなかったということになる。


 案の定、彼女はかぶりを振った。


「わたしは火星に敵対する意思を持っているわけではありません。ただ、あれ以上フルチコフのもとにいることができなくなってしまったのです」

「どういうことなんだ」

「フルチコフは、わたしに特別な感情を抱くようになっていたのです」

「……フルチコフ議長が、君のことを愛していたと?」


 私が確認をとると、ナターシャはうなずいた。しかし、めずらしいがないこともない事例だ。機械が高度に発達する以前から、単なる愛着、あるいは代償行為ではない、真物の情愛を物品に対して示す人間は存在した。

 対象は人形であることが多いが、とくに限定されているわけでもない。機械知性が向上して人間と意思疎通が可能になってからは、ロボット、アンドロイドと語らう愛が偽物だとは、かならずしもいえないのではなかろうか。


 もっとも、私もそうした性癖に偏見を持たないようにしているつもりではあるが、理解はできない。


「なぜ議長のもとにいられないと思ったんだ?」


 私が問うと、それまで立っていたナターシャは椅子に腰かけた。これまでのよどみない口調とはちがい、言葉を探しているといった感じで、話しはじめる。


「最初は、派閥間の調整と保身にしか興味を示さない、閣僚たちの悪口をいい合うとか、そんな他愛のないことでした。だんだん、仕事とは離れた話をすることが多くなっていって……。地位を捨ててふたりで暮らそう、そういってくれたことは、うれしかったのです。わたしも彼のことを愛していました。しかし、秘書としてのわたしは、フルチコフにしっかり仕事をしてもらわなければならない。……わたしは相反コンフリクトするふたつの自己を制御できなくなったのです」


 そのあたりは、やはり人間とは感覚がちがう。相手の気持ちがわかっても、どうしても自分に与えられている役割が捨てられないのだ。ナターシャが秘書機能を有していない、一般モデルの家政アンドロイドであれば、フルチコフ議長が地位を投げ出そうとしても意に介さないですんだだろう。

 だがその場合、議長が彼女に惹かれることもなかったのではないかと容易に想像できる。ただの家政アンドロイドも愚痴くらいは聞くが、気の利いた返事をしたり、まして閣僚について冗談を飛ばしたりはできない。


 さて、火星の有権者でもある私としては、機密情報を持ったアンドロイドに懸想した上に逃げられてしまったフルチコフ議長と、彼をそんな精神状態に追い込んだ閣僚たち、そのどちらに腹を立てるべきなのだろうか。それとも、こんな考え自体が、傲慢で保守的な、人間至上主義の思想なのだろうか。


 私は脳裏によぎったそんなことをおくびにも出さず、先ほど彼女が指摘したとおり、情報保全を最優先にして発言を選んでいた。


「議長は君がいなくなってからも執務を続けている、心配はいらない。だが、君がいれば議長の心が安らぐのは間違いないだろう。戻れないのか?」

「フルチコフは本当は休息を望んでいます。そばで見ていてわかったのです。でも、戻ったらわたしは彼に火星の指導者として働いてもらわずにはいられないでしょう。すくなくとも、現在の難局を乗り切るために、火星にはフルチコフが必要です」


 それは同感だった。火星統一評議会は決して安定した政治機構ではない。その上に、木星連盟とのあいだの緊張がある。フルチコフ議長の指導力がなければ、火星の統一は瓦解するだろう。木星の干渉を受けて、散り散りに分断されるにちがいない。


「君の秘書機能を停止させてみるというのはどうだろうか? 政治家としてのフルチコフ氏は偉大だが、それが彼のすべてというわけじゃない。まあ、私がいうまでもなく、公私ともにそばにいた君にはずっとよくわかっていることだろうが」


 私としては悪くないアイディアだと思ったが、ナターシャは悲しげにうつむいた。


「わたしもフルチコフのもとに留まる方法を、こちらへきてからは帰る方法を考えてみました。ですが、機械にも個性はあります。秘書モジュールを分離したわたしは、もはやその以前と同じわたしではない。わたしは怖いのです。彼を想う気持ちがどこに入っているのかわからない。変わった結果、彼を想っていない自分になっている可能性が」

「それは、人間も同じだと思うよ。たとえば事故にあって内臓のほとんどを入れ替えた人間がいたとしても、それは以前と変わらず同一人物だ。手術で脳の大半を切除することになっても、あるいは、痴呆症で自己認識ができなくなっても、同一人物であることに変わりはない。たしかに、自分で自分のことがわからなくなる、自分でなくなったことがわからないまま、異なる自己に変化している、それは嫌なことだし、できれば避けたいことだが。けっきょく、個性というものを認定するのは他者なんだ、私はそう思う」


 自己の最少構成というのがどこで線引きされているのか、それはわからない。たしかに、どこかで自分ではなくなるラインというのが存在するのだろうし、自分が認識している同一性と、他者が認める同一性のあいだには、小さからぬ溝があるだろうが。パーツを組み替えることがたやすいロボットたちにとって、この悩みは人間よりも深いものなのかもしれない。


 伏せていた顔をあげ、私のほうを見てナターシャが口を開いた。


「……わたしの秘書モジュールを抜き取って、火星へ持ち帰ってください。あとから増設されたものですから、取りはずすのも簡単です。すくなくとも、それで情報保安員のみなさんは納得できるでしょう?」

「情報保安軍とCIMはそうだろう。だが、君はそれでいいのか?」


 私が念のために問うと、今度は迷いのない様子でナターシャはうなずいた。


「フルチコフが自分の務めを終えたときに、わたしのことを憶えていてくれたら、もしかしたら迎えにきてくれるかもしれない。待ってみようと思います」


 ナターシャの気持ちは最初から決まっていたのだろう。私が下手なたとえ話をする必要は、たぶんなかった。私がうまくやったことがあるとすれば、彼女の話を最後まで聞いたという点くらいだ。


 これで私に課せられた任務は解決したが、それでも私はもうひとつ尋ねずにはいられなかった。職務上の必要性からではなかったと思う。


「機密情報が詰まっているモジュールを取りはずしたといっても、それであなたの身の安全はかならずしも保証されない。本当に、戻らなくていいのか?」

「わたしはこの星から離れるつもりはありません、迎えがこない限りは。木星連盟の工作員も、ここでことを荒立てようとはしないはずです。それに、彼らだってあなたと同様、情報保安の訓練を受けている。わたしがすでに秘書モジュールを持っていないと知れば、それ以上得るものはないと理解するでしょう。……わたしたち機械は、嘘がつけないのですから」


 私はグローブの各指の先に仕込まれている工具を展開して、ナターシャの中枢ユニットから秘書モジュールを抜き取った。家政アンドロイドには、頸部と後頭部に中枢ユニットをメンテナンスするためのパネルが設けられている。

 ロボットを修理するのと大差ない作業なのだが、なんだか、いやに淫靡なことをしている気分になった。


「メモリにメッセージを残してありますが、あなたからも伝えてください。『ヴォーヴァ、いまでもあなたを愛している』……と」


 チップを掌の上に乗せた私へ、ナターシャはそういった。ヴォーヴァとはなんだ、と一瞬考え込みそうになったが、スーツの辞書機能が「ウラジーミルの愛称」であることを教えてくれた。ウラジーミルはフルチコフ議長のファースト・ネームだ。


 ナターシャは店の外まで私を見送ってくれた。機械にはありえないはずの幽愁を漂わせたその姿は、私になぜか寡婦を連想させた。


    *****


 デウス・エクス・マキナでケレスへ帰るべく港に戻ってきた私のほうへ、到着したときに話しかけてきたのと同じ入管ロボットが近寄ってきた。


『オ帰リデスカ。まざーガ、ゼヒヒト言ゴ挨拶申シアゲタイトノコトデス』


 といって、私のスーツのインターフェイスにアクセスしてくる。どうやら、中枢コンピュータと私のあいだを中継するつもりらしい。ここで拒否しても疑われるだけなので、私は仕方なく通信を許可した。


『はじめまして。わたしがメカニアのマザーコンピュータ、ZTS263です』


 中枢コンピュータからの信号は火星の標準規格のようで、パワードスーツの通信機はすぐに私に理解できるよう復調した。それにしても、ナターシャ同様、機械とは思えないごく自然なしゃべりだ。もはや知能レベルは第二級ではないのだろう。自己アップデートを繰り返して、自動採掘船だったときとは比べ物にならないほど高度になっているにちがいない。


『ごていねいにどうも。私はマーズ・エレクトロニクス・インダストリーの試験機RNH04です。今回は私の単独行動試験のために、市内へ立ち入る許可をいただいてありがとうございました。もう帰らなければならないのが残念ですが』

『我が子E33−T02を助けていただいて、本当にありがとう。詐欺の可能性を示唆していただいたことにも感謝します。仲買人を問いつめたところ、船倉に隠していたドライアイスを昇華させて放出し、質量をごまかそうとしたと認めました』

『お役に立ててよかった』


 どうやら儀礼上の謝意を表するために呼び止められただけのようだ。

 そう思って、私は油断していたが――


『そうそう、帰りは、その窮屈なスーツを脱いでいって構いませんよ』


 と、中枢コンピュータは、さりげなく、私の正体を知っていると告げてきた。しらを切っても無駄だと、直感でわかる。しかし、どうやって見破ったのだろうか。

 ナターシャは火星から人間の追っ手がくると予想していたから私の正体をひと目で当てたわけで、だが彼女はそのことをだれにも話していない。物的な証拠がなければ、私がロボットではなく人間だといえはしないはずだ。受け答えがロボットにしては流暢すぎるという理由だけでは、私が人間だと断言する証拠には不充分だろう。こうして話しているぶんには、中枢コンピュータもとても機械とは思えないくらいだ。

 だが、()()をかけるなどというレトリックを機械は用いない。


 ……物的証拠が残るとすれば、メカニア内ではなくデウス・エクス・マキナの船内か。


『ケレスからここにくるまでのあいだ、船内の酸素濃度の変化を計測していたんだな』

『いいえ、デウス・エクス・マキナは見てのとおりの老朽船です。船体の各所モニタは精密ではありません。あなたのほかにも仲買人が乗っていましたし、ネズミも住み着いています。あなたがときどきヘルメットをはずして深呼吸していた程度では、酸素濃度の変動など誤差の範囲ですよ』


 中枢コンピュータの答えは理屈にかなってはいた。最初からバレていたのなら、私を市内に入れる理由がない。たしかにそうだが……。


『ではなぜわかった』

『あなたがE33−T02を助けたときに、出力を計測させてもらったのです。民生用ロボットに許されているパワーではなかった。あきらかに軍事用の規格でした。ですが、軍用ロボットは単独行動をしないはずです。火星軍がかつての地球の悲劇を忘れ去っていない限りは。火星人に良識が残っているのなら、つまりあなたは機械の皮をかぶった人間だ、ということになります』


 見事な推測だった。もちろん火星はまだなけなしの良識を残している。しかし、私がロボットのふりをしてメカニアへ不法侵入した事実は変わらないが、それはどうなのだろう。


『私を黙って帰してもいいのか?』

『あなたはメカニア内で立派な市民として振る舞いました。わたしの良き友、ナターシャに対する態度も紳士的だったようですし。彼女の安全はわたしが保証しますよ。わがメカニアは、火星統一評議会と木星連盟の、いずれとも友好的でありたいと思っています。正式な外交使節をお待ちしていると、フルチコフ議長、ならびに評議会のみなさんにお伝えください』



 ――デウス・エクス・マキナはメカニアから出航し、私は船内の、老朽化したシャワールームで本当にひさしぶりに汗を流した。思う存分背中や足の裏を掻くことができて、すっきりした。湯はぬるく、少々錆び臭かったが、そんなのは些細な問題だ。


 パワードスーツから解放され、シートに身を沈めながら、退役したらメカニアで暮らすのも悪くないかもしれないな、と私はぼんやり考えていた。

 もっとも、普段はパワードスーツを着てロボットとして暮らすにせよ、たまには生身になることを許してもらえないと、厳しいだろうが。


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ダイナミックな世界観と良質で先へ先へと続きが読みたくなる、引き込まれるような優れた文章を堪能させていただきました。これだけの世界観とキャラクターとストーリーを、一つの短編にコンパクトにまとめた筆力は見…
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