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7 インスタント美少女と服選び

 かもめは制服しかもっていないようなので制服のままで、俺は今ある服の中からかもめがチョイスしたものを着て家を出た。

 家を出た瞬間、冬の風がビューっと吹き付けてくる。


「寒くない?」


「うん大丈夫! 八雲君のおかげであったかいよ」


 そう言ってかもめはマフラーに顔を埋めた。

 セーラー服では寒いのでトレンチコートを着てきていたが、下はミニスカだしさすがに寒いだろうということでマフラーを貸した。あとカイロも。


 女子高校生はつくづく大変だなぁと、他人のように思う。実際女子高校生じゃないし。

 夏はうらやましいなと思うのだが。


「手、つながない?」


 ポニーテールが揺れる。

 一日かもめは彼女なんだし、相手から言ってきてくれているのでここはつなぐべきか……いや、願望で言ったらめちゃくちゃつなぎたいですはい(食い気味)。


「じゃ、じゃあ……」


 ポケットから手を抜き出して、かもめの手にそっと触れる。

 一瞬かもめはびくっとしたが、そのまま指を絡ませて、絶対に離れないようにと恋人つなぎをしてきた。


「冷たいな……」


「私末端冷え性だからさ。でも、八雲君の手はあったかい」


「内側が冷たい人って確か指先は温かったよね」


「じゃあ八雲君はオールあったかいなんだね! 幸せだ!」


 にこっと優し気な笑顔を向けてくる。

 ほんと、何度可愛いなと思わせれば気が済むのだろうか。

 

「さっ時間はないから早くいこ!」


「ちょ、か、かもめ?」


「ほら! 私の手掴んで離さないでね!」


 運動不足の俺にしては速いスピードで駆けだす。

 

 酸素を補給するために息を吸って吐けば、息が白くなって白い雲に溶けていく。


「(雪が降りだしそう)」


 そう思わせる空の色。

 でも俺の目の前で楽しそうに走っているかもめの髪は晴天の空よりもずっとエネルギッシュで、透き通っていた。


「頼むからスピード落として……」


「もぉー普段から運動してないからだよ?」


「すみません……」


 ちゃんと運動しようと思った。





「これとかどうよ! 結構カッコいいんじゃない?」


「お、俺に似合ってるかなこれ……」


 最寄り駅のル〇ネにて今日遊園地に着ていく服を選んでいた。

 というのも、ほとんど俺を着せ替え人形としてかもめが遊んでいる感じで、今着ているもので試着十回目だ。

 

 今ならリ〇ちゃん人形の気持ちがよくわかる。

 これからはみんな時々休憩を入れてあげた方が良いと思うぞ。


 笑顔を絶やさないリ〇ちゃんとはいえ、体力にも限界があるしな。


「うん! いかにも冬らしくていい! これにしよ!」


 かもめが選んだコーデは、グレイのチェスターコートに黒のパーカー。そしてブラウンスラックスのズボン。

 俺としては、俺がこんなおしゃれな服を着ていいのか? と思ったのだが、かもめは気に入っている様子なのでいいとしよう。


 値段は総額二万と決して高くはないが、物欲がなく昔から貯金ばかりをしていた俺にとってはためらうほどでもなかった。


「じゃあこれ買おうかな……」


「おっけい! すみませーん。このまま着て帰りたいんですけどー」


「かしこました。ではこちらに……」


 もともと着ていた服を袋に入れて、レジに行く。

 俺が会計をしている後ろで、上機嫌に鼻歌を漏らしながらかもめがニコニコしていた。


「今からデートですか?」


「えっ?」


「はいそうです!」


 すかさずかもめがそう答える。

 その言葉に店員さんはにこやかな笑みを浮かべた。


「そうなんですね。お似合いな二人ですから、少しいいなぁと思ってしまいました」


「そうなんです。私たち、お似合いなんです!」


「ちょ、かもめ……」


「ふふっ。今日は雪が降るみたいなんで、楽しいデートになるといいですね」


 天気予報を見ていなかったが、やはりそうだったのか。

 奇跡に奇跡は重なるもんなんだな。


「では、いってらっしゃいませ」


 店員さんに見送られて店を出る。

 

 お似合い……。

 まさかこんなにも美少女であるかもめとお似合いだと言われるとは思っていなかった。

 でも思い返せば周りから「なんであいつが?」というよりかは「ほほえましい」といった視線を向けられていたような気がする。


「じゃあ次は私! 可愛いの選んじゃうね!」


「お、おう……」


 現在の時刻は十一時。

 あと何時間だなんて考えなくていいや。


 今は楽しむことだけでいいや。


 そう思って、またかもめと手をつないで次の店へと向かった。


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