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4 インスタント美少女は眠たい

 夜九時になった。

 もう二時間経ったのだと思うと、楽しい時間は過ぎるのが早いんだなと感じる。


「お風呂……どうする?」


「ど、どうする?」


「そ、そりゃ、私今日、八雲君の家に泊まるけど……」


 頬を赤らめて視線をあっちこっちに飛ばしている。

 しかし四方八方に飛んでいる視線は俺の方に向くことはなく、照れているんだなということがわかる。


 そこから察するに、「お風呂を一緒に入るか?」ということなのだろう。


「(ま、まぁ今は付き合ってるって設定なわけだし、そういう展開になってもおかしくない……というか、至って普通……だよな)」


 でも、お風呂一緒に入ろうもんなら理性が吹き飛ぶ気がする。


「い、いや……さ、先入ってきていいよ! う、うちの風呂……せ、狭いし!」


「そ、そっか! う、うん! わかった! じゃあ先にいただいちゃうね!」


「う、うん! いってらっしゃいませ!」


 風呂場に向かっていくかもめを見届ける。

 どこかかもめの背中が悲し気に見えたのは、気のせいだろうか。

 いや、きっと気のせいだな。


 しばらくして、火照った風呂上がりのかもめが出てきた。

 風呂上がりのかもめは一層魅力的で、色っぽさがある。

 

 それに寝間着は女の子がいかにも来ていそうだなと思うもこもこしたもので、純粋にあったかそうだなと思う反面、可愛いなと思った。

 冬バンザイと、リトル八雲が言っている。


 一緒に入らなくてよかったと、心底思った。


「お先にいただいちゃいました! 気持ちよかったー」


「そ、そうか。じゃあ俺も入ってくる」


「おっけー」


 逃げるように風呂場に行く。

 あんなの直視していたら俺の理性が警戒レベル5になるだろう。

 戦略的撤退とカッコよく言ってみるが、実際はただただ恥ずかしかった。


 しかし浴槽に浸かろうと思ってふと脳裏をよぎる一つの事実。


「(これ、かもめが入ったあとなんだよな……)」


 美少女の残り湯……とか思ってしまう時点で、俺はほんとにダメだなと思った。





 何とか浴槽で体を温め、風呂から出るとかもめがテレビを見ながら笑っている姿が見えた。

 こう見ると、ほんとにただの女子高校生にしか見えない。

 でも、ほんとは違うのだろうか……いや、考えるのはやめよう。


「八雲君ずいぶん長かったね。もしかして、私の残り湯を堪能してたとか?」


「ちがっ……違う」


「妙な間があったけど?」


「な、い」


「またあった」


「く……」


「あはははは!」


 恥ずかし可愛い死んじゃうわっしょい。

 風呂上がりにこうやって会話する人がいるだけ豊かになるものなんだと、彼女の存在の大きさに気づいた。


「さ、寒くない?」


「今は大丈夫だよ?」


「まぁでもこれからさらに冷えるから一応……」


 風呂上りは体が冷えてしまうため、念のため暖房をつけておく。

 「気配りできる男が将来笑顔になる」とベッドからあまり動かない父さんに言われたことをまたもこうして守っている。


 父さんから得たものがこうして役に立つとは思ってもいなかったけど。


「……八雲君って、優しいよね」


「そ、そんなことはないよ。ただ俺は常識的な行動を……」


「小さい気配りができる人は、カッコいいよ」


「……ありがとう」


「そうやってちゃんとお礼を言えるところとかもね」


「…………」


 こう立て続けにほめられると、やはりうれしい。

 嬉しいよりも、恥ずかしいの方が勝っているけど。


 かもめがベッドに座っているので、俺はさりげなく距離を取ってかもめの隣に腰を下ろした。

 すると急に俺の方に体を寄せてきて、俺の肩にこてっと頭をのせてきた。


 ポニーテールはほどいていて、そのせいか余計に甘い香りが鼻孔をくすぐった。

 それに俺と同じシャンプーを使ったので、かもめから同じ匂いがしてきて、それもまた心にくるものがある。


「私そろそろ眠くなってきちゃった」


「そ、そうなんだ……」


「電気……消してくれない?」


 かもめにそう言われたので、かもめの頭を動かさないように近くにあったリモコンを手に取って、電気を消す。


 急に訪れる二人の空間。

  

 かもめの姿はよく見えないけど、小さな息遣いとか、肩から感じるぬくもりとか。

 かもめをより意識する要素ばかりが鮮明で、胸の鼓動が早くなっていくのを感じる。


 小さな吐息が漏れる。



「今夜は……私、八雲君の彼女、だよ?」


 

その言葉に、俺の理性が駆けだした。




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― 新着の感想 ―
[一言] 彼氏は草。痛恨の誤字なのか、実はなのか!
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