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3 インスタント美少女のあ~ん

我慢できなくなったので一日二本投稿解禁します


「で、私に何かしてほしいことあるかな、八雲君?」


 にっこりと、天真爛漫という言葉が似合いそうな笑顔を浮かべるかもめ。

 正直今俺の目の前に起こっていることは信じ難い。


 でも、いつまでも現状を疑っても何の意味もない。


 俺は意を決してこの状況に身を投じることにした。


「してほしいこと……かぁ……」


「うんうん! 私、頑張っちゃうよぉ~?」


「うーん……」


 このインスタント美少女を購入するときに見た詳細を思い出す。

 

「(あれ、思いっきり童貞卒業できるって書いてあったよなぁ……)」


 ちらりとかもめの方を見る。

 かもめはきょとんした顔で俺の方を見ていた。


 確かにかもめはスタイルがいい。それも俺の同学年の女子たちとは比べ物にならないくらい。完成された美少女だ。


 かもめの方をじろじろ見るのもなんだか恥ずかしくなって、自分から向けておいて視線をそらした。


 言わなくてもわかると思うが、俺はもちろん童貞だ。それもスーパーとかハイパーとかが上に付くくらい。

 しかしそういう欲求があるのは男として当然で、実際かもめとできるならしてみたい……というのが本心だ。


 だけど……自分好みで初対面の美少女に手を出せるほどの度胸は俺にはなく、俺が手を出してしまえばかもめの笑顔が崩れてしまうような、そんな気がしたのだ。


 だからとりあえず、ライトな、もし俺に彼女がいたらしてほしいことを頼んでみることにした。


「俺、実はまだご飯食べてないんだ。だから、夕飯を作ってくれると嬉しい……」


「そんなことでいいなら! 張り切って作っちゃうぞ~」


 ふんふん~とどこかで聞いたことがあるような歌を鼻歌しながら、スクールバッグからピンク色のふりふりが付いたエプロンを取り出す。


「よしっ! じゃあ八雲君はくつろいで待っててね!」


「わ、わかった」


 再度鼻歌をしながら、キッチンへと向かった。

 そんな姿を見て、俺は一息ついた。


「怒涛の展開過ぎんだろ……」


 ここまで非現実的なことが自分の身に起こるなんて思ってもいなかった。

 自分で「ラブコメが起こってもおかしくない」と高をくくっていたが、いざそうなるときょどるもんだ。


 まぁそんな思考は今すべて投げ捨ててしまおう。

 たった一日だ。現実くらい忘れて非現実的な世界に身を溶かしてもいいだろう。


 ふと、かもめが料理をしている姿が見たくなった。

 というのも、彼女がキッチンで料理をしているのを見るというのは夢であり、見たいという理由で頼んだ節がある。


 キッチンは廊下に面していて、俺は恐る恐る廊下が見えるように体をずらしていく。

 別にいけないことをしているわけではないのだが、妙な背徳感があるのだ。


 ちらりと顔を傾ければ、ご機嫌に料理をしているかもめの姿が見えた。


「(可愛すぎだろ……)」


 ルンルンで、青い髪のポニーテールが揺れる。

 これは俺の趣味なのだが、青髪のポニーテールで明朗快活な女子が可愛いと思う。

 あの三人の中ではドンピシャだった。


 たぶん運をすべて使いきったと思う。


「八雲君、ちらちら私のこと見てるでしょ?」


「っ……⁈」


 まさかのノールック。

 驚きのあまり机に頭をぶつけてしまった。


「やっぱり~。あとちょっとだから我慢しててね~」


「お、おう……」


 なんだこの会話。新婚夫婦かよ。

 妙にむずがゆさはあるけど。それは俺が女子に慣れていないのが所以か。


 しばらくたった後、机にほやほやと湯気を立てる炒飯が置かれた。

 そのおかずとしては最高の「にっ」という笑顔を添えて。


「うまそう……」


「冷蔵庫に入ってたもので作れるのはこれかなって。手の込んだものじゃなくてごめんね」


「い、いや……絶対うまいと思う。だから、ありがとう……」


 素直に礼を言う。

 これは父さんから「女性には常に紳士でありなさい」と母さんに膝枕をされながら言われたことを守った行為。

 

 いや。せっかく作ってくれたのだから、礼を言うのは普通か。


「かもめは食べなくていいのか?」


「私はお腹すいてないから大丈夫! それに今私ダイエット中だからさ」


「…………」


「そ、そんなにじっと見ないでよ! 八雲君のばかっ」


 腹を手で隠しながら、俺に背中を向ける。

 なんだこの完成された可愛さは……破壊力がすさまじい。


「じゃ、じゃあいただきます……」


 一口ぱくり。


「う、うまぁ……なんだこれ。俺が作ったのと全然違う……」


「ほ、ほんと⁈ よかったぁ。実はちょっと心配だったんだよね。八雲君の好みに合うかなって」


「ドンピシャだよ。ほんとにおいしい……ほんと、うまい」


 スプーンを口に運ぶ手が止まらない。

 かっ〇えびせんなど敵ではないほどに、やめられなくて止まらなかった。


「そんなにおいしいって言われると照れちゃうなぁ……」


「ほんとうまぁああだえわだどあだ」


「ちゃんと飲み込んでからでいいよ? んふふ……なんだか可愛いなぁ」

 

 そういいながら俺の頭を優しくなでる。

 その時に伝わるかもめのぬくもりが、じんわりと頭越しに伝わってくる。


「私があーんしてあげよっか?」


 撫でられながら言われたその言葉。

 撫でるという動作と「あーん」という言葉が相乗効果を発揮して可愛さ爆弾。

 

 でもこんな機会を逃せば一生あーんなんてしてもらえないかもしれない。

 老いて看護師にあーんしてもらうのが最初で最後になるなんて嫌だ。


「お、お願いします……」


「おっけい!」


 俺からスプーンを取り、炒飯をすくい上げる。


「はいっ、あーん」


「あ、あー」


 ぱくり。

 口いっぱいに、この上ない幸せが広がった。


「おいしい?」


「めっだぐあいよじょあs」


「飲み込んでからでいいよ?」


 少し叱るような、だけどどこか優し気に指摘するかもめは、やっぱり可愛いなと思った。



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