10 インスタント美少女は最高に可愛い
「ほんとあっという間だったし、終始流れについていくので精いっぱいだったよ」
「そう? でも八雲君すごい楽しそうだった。そんなに私のこと好きなんだなぁって思ったよぉ~」
「そ、そんなんじゃないから……」
「照屋だなぁ。うんうん可愛い可愛い」
美少女に可愛いと言われてる日が来るとは思いもしなかった。
というか俺可愛くないから、絶対からかいの意味で言ってるんだろうな。
実際ものすごくにやけてるし。
「でもほんとによかったの? マフラーまでもらっちゃって」
「全然いいよ。まだ雪降ってるみたいだし、今日の夜は冷え込むらしいからね」
「……いいとこあんじゃん」
「急にツンデレ?」
「私はツンツンしてませんー。でも、ほんとありがとね」
「気にしなくていいよ」
「うん……わかった」
もうすぐでかもめとの関係も終わる。
だけど自然と悲しくはなくて、もう悔いはなかった。
それにかもめが残してくれたものが、ちゃんと心の中にある。
だから寂しくなんてなかった。
「よし。じゃあそろそろ行こうかな」
「うん」
どこへ? だなんて聞く必要はない。
もうインスタント美少女にすがる理由はないから。
俺の初恋は、もう幸せな形で終わっている。
「あっ、最後にっ」
かもめが急に俺の懐に入ってきて、頬に唇を寄せた。
そしてまた離れて、にっと笑う。
それが可愛すぎるんだよな……というか、これはファーストキスに入るのか⁈
って俺今キスされたよな⁈ めっちゃ柔らかかった……女子の唇ってあんなに柔らかいんだ……。
「これからも強く生きろよ~‼ 八雲君っ!」
「う、うん……わかった」
「んふふ。じゃあばいばい! 八雲君っ!」
「おう!」
やがて大きく振られた手は下がっていって、それと同時に俺から遠ざかっていく。
脳裏には、最後まで笑顔を絶やさなかった俺の初恋の少女が焼き付いていた。
インスタント美少女——
最後までよくわからなかった。
だけど、一つだけ声を大にして言えることがある。それは——
インスタント美少女が、最高に可愛いってことだ!
「まったく、何当たり前のこと言ってんだろうな、俺」
踵を返して、自宅へと戻っていく。
もう振り返らない。
もうかもめに手を引いてもらわなくたって、前に歩いて行けるから。
あるいは走っていけるから。
「まずはランニングでもするかな」
インスタント美少女からもらった、インスタントでは収まりきらない未来。
俺はそれに向かって、一歩ずつ時間をかけてでも歩んでいく。
***
「おい八雲! もうすぐで新歓始まっちまうぞ!」
「お、おう! 今行く!」
あれから一年と少し。
俺は都内の名門大学に通う大学生になった。
三年生になってからは受験で死ぬかと思ったが、予備校でも高校でも友達ができて、あっという間に時間が過ぎていった。
ちなみに彼女は……。
「やばい見ろ八雲! あの人ちょー可愛いぞ!」
「マジか! どこだどこだ!」
この様子を見ればわかるだろう。
いません! 言わせるな!(言わせてない)
「ほらあそこを歩いてる人だよ! お前顔はいいんだし、ちょっと声かけて来いよ!」
「……俺にナンパは無理だっ!」
「意気地なしが!」
「お前が行けばいいだろうが!」
「顔に自信がないということに自信があるんだよ俺は!」
「どんな自信だよ!」
……ん? でもなんだかあの人見たことあるような……。
スラっとしていてスタイルが良くて、青髪のポニーテールで……あのシュシュ……。
「ま、まさか……」
「ちょ、八雲! 急にやる気出したのかよ!」
あのシュシュ、間違いない。
あれは俺があげたシュシュと同じものだ。
そのことに気づいて、俺はいつの間にか駆けだしていた。
「あのっ!」
そう声をかける。
わずかな可能性。
奇跡に奇跡は重なって、必然となる。
もしかして俺は、本当にラブコメの主人公にでもなったのかもしれない。
完
完結しました!
十話と短いものでしたが、自分好みな作品を作ることができました。
この物語をこれからの作品に生かしていきたいと思います。
ありがとうございました!




