ミラさんに怒られた。そして、弟子入り
翌朝、簡単な朝食を食べた後ココアを連れガッデスは冒険者ギルドへと向かう。
「よう、ミラちゃん久しぶりだな。今日は、森で取れたモンスターの素材を売りに来たぞ。あと、このお嬢ちゃんも森で保護したんで連れて来た。」
ガッデスはミラにそう言い、一緒に付いてきたココアを紹介する。
「ココアさん、昨日森へ行ってたんですか?無理しちゃダメって言ったじゃないですか。怪我とかはしてないですか?」
ミラは少しだけ怒った口調でココアを心配し、傷の有無を確かめる。
「お、ミラちゃんもお嬢ちゃんの事知ってるんだな。なら、話が早いかもな。ちょこっと怪我はしてたみたいだけど、ポーションで治る程度の傷だったぞ。ゴブリンを数体倒して、その程度の怪我で済んでるから優秀かもしれんぞ。」
ガッデスがココアの代わりに返事をした。
「一体何と戦ったのですか?スライムとかだと傷はつかないし・・・ ゴブリンの1匹くらいなら大丈夫だろうし・・・」
ミラは、ココアに問いかけながら考え込む。
「えっとですね… ゴブリンが6匹です・・・」
怒られそうなので申し訳ないと思いつつ、小さな声でココアは答える。
「ゴブリンが6匹!!!どうして、そんな無茶をしたんですか!」
ミラは怒ったように大きな声を出し、周りの人間の注目を集めてしまう。
ゴブリンが6匹と言えばソロで倒すにはかなり困難なモンスターであり、数人がかりで倒すのが普通なのだ・
「コホン、大きな声を出してすいませんでした。でも、よく無事で帰って来てくれました。」
少し涙目になりながら、ミラがココアに言った。
本当に彼女が心配してくれたのがわかり、ココアは本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「ミラさんごめんなさい。少しくらいなら大丈夫だと思って森の少し奥まで入った所で襲われたんです。もう2度無茶はしません。」
ココアは頭を下げて、ミラに謝った。
そこにしょうがないなぁといった感じでガッデスが続ける。
「無事に帰った事をまず喜ぶほうがいいな。お嬢ちゃんも懲りたみたいだしな。」
「そうですね。ココアさんが無事で本当に良かったです。」
ミラはそう言ってこの件に関しての話を終わらせた。
「話も終わった所で、今回の素材の買い取りを頼まあ。」
ガッデスはそう言って、素材をカウンターの上に出し鑑定してもらう事にした。
ミラは一つ一つ丁寧に素材を確認し、紙に金額を記入していき合計額を出す。
「合計で10金貨と7銀貨になりますよ。それでよろしいですか?」
計算した結果をミラはガッデスに伝え、了承を取る。
「おう、その辺りは信用してるからそれで構わねーよ。それで相談なんだが、俺がお嬢ちゃんを鍛えるってのは問題ねーか?」
ガッデスは、ミラに質問する。
「Bランク冒険者であるガッデスさんがココアさんを鍛えて上げるのはいいと思いますが、彼女が使う武器は違いますよね?」
ミラは返答する。
「そうだな。とりあえず、別室で話しても大丈夫か?あまり、人前で話したい事でもないし出来れば頼むわ。」
ガッデスがミラにお願いをする。
「わかりました。今、部屋が空いているか確認して来ますので少し待っていてくださいね。」
ミラはカウンターを立ち、別室の空室状況を確認し部屋を押さえてくる。
「では、こちらの部屋へどうぞ。」
ミラに案内され、ガッデスとココアは別室でミラと話し合う事とする。
「たぶんミラも知ってると思うが、お嬢ちゃんはスキルを持ってないよな。俺は、お嬢ちゃんに冒険者としてのイロハを教えてやろうと思っている。武器に関しては、俺の知り合いが来た時にでも基本を叩き込んで貰ってやるよ。」
ガッデスはミラに告げる。
「ガッデスさんが冒険者としての基礎を教えてあげるのは、私としても助かります。彼女は、スキルなしっていう事なので他のパーティーに紹介する訳にも行かなかったのよ。私が信用している人間にしかお願い出来なかったので良かったわ。」
ミラが安堵した表情でガッデスに感謝を伝える。
「それでだ、お嬢ちゃんのステータスを俺に教えてくれるかな?」
ガッデスはココアに問いかける。
「はい。では、ステータスボードで今のステータスを表示しますね。」
ココアはガッデスに返事をしてステータスボードを操作し、現在のステータスを表示する。
名前:ココア
HP:D(30)
MP:D(32)
力 :D(57)
魔力:C(79)
体力:D(30)
速さ:E(16)
幸運:B(279)
経験値:1250
保有スキル:なし
登録ギルド:レーズン冒険者ギルド
更新ギルド:なし
上記の通り表示され、二人は確認する。
「ええ?また、経験値がすごい数値になってるわね。ココアさん、ゴブリンを6匹倒しただけですよね?」
「お嬢ちゃんの経験値の入り方おかしくねーか?何が起きてるんだ?」
二人は、通常では考えられない経験値の取得に驚きを隠せないでいた。
「その事についてなのですが、私が知った事実を少しだけお話してよろしいですか?」
ココアは恐る恐る二人に話しかける。
「どんな事でしょうか?経験値が多く入る事についての話だとは思うのですが。」
サラが話を促す。
「私が気を失っていた時の事ですが、その時に私は至高神さまに遇えたようなのです。そこで私がスキルのない理由を説明頂いた訳ですが、私に強い加護を与えてしまったのが原因であるようなのです。それに加え、異次元収納魔法と経験値獲得増量の力まで与えて頂いたようなのです。」
ココアが至高神から聞いたことを二人に説明する。
「俄かに信じがたい話なんだが、証明する手立てはあるのか?」
ガッデスは半信半疑の状態であったのでさらなる説明を求めることにした。
「経験値獲得増量の力は、私の獲得経験値を10倍にする効果があるようです。異次元収納魔法については、見て貰ったほうが早いかもしれませんね。お詫びと言う事で幾許かのお金を頂いているそうなので。」
ココアは二つの能力を説明し、異次元収納魔法を行使する事とした。
そうすると、目の前の空間から白金貨が数百枚と金貨が数千枚床に現れる。
『え?これって、多すぎじゃないの・・・』
ココアはそう思ったのだが、時はすでに遅かったのであった。
二人は大量の貨幣を見て、ココアの言っていた事を納得するしかない状況になった。
「とりあえず、この貨幣をしまっておいて貰えるかな?目に毒だわ。」
サラがココアに言い、異次元収納魔法を使い貨幣を収納する。
「これだけのお金を持っていれば、冒険者をする必要はないんじゃないのかな?」
サラは自分で感じた事を言う。
「そうだな。それだけの金があれば、一生食べていけそうなんだがな。」
サラに続いて、ガッデスも言う。
「私は、極力このお金を使うつもりはありません。自分で稼いだお金で暮らしていきたいのです。このお金の事は今初めて知った訳ですし、自堕落な生活をしたいんじゃないのですから。」
ココアは二人に言い、冒険者として暮らしたいことを熱弁する。
「詳しい神の加護も知りたいが、聞くのが怖いから聞かない方がいいかもな。まぁ、俺はココアに冒険者のイロハを教えると決めた訳だし、その約束を守るとするか。」
ガッデスは、自分の決めた事を守る事を宣言する。
「まずは、ガッデスさんの下で修業して冒険者の基本を身に着けてください。修行の状況は、ガッデスさんから定期的に報告して頂けると有難いです。でも、ココアさんの件について一度ギルドマスターに相談させて貰ってよろしいですか?」
サラはギルドマスターの確認も取り、今後の話をきっちりと決めたいようであった。
彼女一人が抱えきれる話ではなかったのである。
「今からギルドマスターに話して参りますので、お二人はこの部屋でお待ちください。」
サラはそう告げて、部屋を退出しギルドマスターの元へと向かう。
ギルドマスターの部屋をノックし、サラは入室許可を得る。
「マスター、ご相談したい案件がありまして直接お伺いさせて頂きました。この度、冒険者登録したココアという女性についてなのですが・・・」
サラはギルドマスターに事情を説明し、指示を仰ぐ。
「ふむ。私が直接会って話を聞き、それから判断するものとする。もう少し、私も詳しい話を聞きたいものだしね。」
ギルドマスターはサラに言い、連れ立ってココアたちが待っている部屋へと向かう。
「待たせたな。私は、ギルドマスターのメリッサというものだ。サラから事情は聴いたが、もう少し詳しい話をして貰えるか?」
ギルドマスターは自分の名前を名乗り、ココアにさらに詳しい話を聞くことにした。
「おう、メリッサ。久しぶりだな。元気そうでなりよりだ。」
ガッデスが話に割って入り、マスターに挨拶をした。
「ふん、ガッデスか。お前も元気そうでいやお前は元気だけが取り柄だったか。」
笑いながらメリッサは返事を返す。
「メリッサ直々のお出ましとは、よほどお嬢ちゃんに興味を持ったと見えるな。」
ガッデスはメリッサの嫌味を流し、マスターが興味を持った事を強調する。
「どの程度まで話していいかわかりませんが、先程の話より詳しい話ですよね。私は、とある貴族の娘として産まれました。この年齢までは育てていただけましたが、スキルなしという事で家を出されました。そして・・・」
ココアは自分が元貴族の娘である事を明かし、至高神と話した内容を少しだけ詳しくメリッサに説明していく。
「ふむ。では、ショコラ伯爵家の・・・いやこれは失言だったかもしれんな。それで、冒険者として生活して暮らしたいという事だな。」
メリッサはいろいろな方面からの情報を得ていて、思わずココアの生家の名前を出してしまったのだった。
ココアの話を聞き、ガッデスに冒険者の基礎をきっちり教える事を約束させると共にたまに自分が剣の扱い方を教える約束までしてくれるのだった。
ただし、冒険者の基礎と剣の腕が一定になるまではクエストを受けない事も約束させられる事となった。
その日から、彼女はガッデスの小屋へ毎日通い弓と冒険者の基本などの講義を受ける事となる。
彼女は、砂が水を吸収するように冒険者の基本を身に着けて行き弓の腕前もかなりの物となっていく。
メリッサが時間がある時は、ギルドの練習場で剣の基本を教え込まれて行く。
剣の構え方そして振り方、多数を相手にしたときの注意点など多岐に渡り覚えていく事が多い。
他の冒険者からは特別扱いされてると見られていたが、メリッサの容赦ない指導について行っている彼女に感心するようになっていく。
盾の扱い、魔法攻撃の対処なども教えれれるが、相手との力量差を見極める事が一番大事だとガッデスとメリッサに教えられ彼女は更なる成長を遂げていく事になる。
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