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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

努力法-努力すれば報われる世界-

作者: 鬼京雅
掲載日:2019/08/11

 西暦2030年――全世界に「努力法」が発令された。


 現在の地球上では大規模な災害が多発し、地球に住む人々は史上最悪の時代を迎えていた。地球環境の大幅な悪化により、地球保全への道を余儀無くされた人類は本格的に宇宙へ進出していたのである。

 

 時に西暦2025年。星の海である宇宙への進出による開拓事業の人材を確保する為に、努力法が全世界首相の集まった地球連合政府合同会議で努力法は秘密裏に取り上げられた。その努力法は各国首相の七割以上の賛成により可決される事になった。


 努力法の中身はこうだ。

 現状を変えうる努力をせず、何もしない人間は地球と宇宙において強制労働をさせる。それを拒めば人体実験をされ、後に死刑になる――。


 これは勿論、大きな波紋を呼ぶ法律だ。

 いくら地球環境が最悪の状況で、宇宙開拓を早期に実現しないとならないとは言え、これは明らかに人が人を粛清するだけの殺戮法でしかないからである。


 努力しない人間が消えると、次は能力が低い者を淘汰する世界になるだろうというアメリカ、ロシア、中国などの反対国もある。かつての大国が主張するのは、努力法が実行された場合に今後人類に沸き起こるのは、法を逆手に取って人が人をむやみやたらに殺す事であるという事。


 世界各地で反努力法を掲げるテロが起こる中、一つの島国は一つの結果を示した。


 鎌倉――戦国――幕末――といった古来より血を好む民族性がそうさせるのか、日本は世界のどの国よりも努力法を再現して見せた。それにより、日本の環境は大幅に改善され、土地の環境だけでなく人間の身体も内面から浄化されるように健康になった。

 となれば、かつての大国達も黙って見過ごすわけにはいかない。世界の波に乗り遅れれば、努力法で開かれる宇宙開拓時代における自国の主導権が無くなるからである。


 そして、努力法は世界の正義となり、人類は宇宙に適応する為のネクストステージに上がると思い込み時代を進んだ。そうして、人は宇宙開拓を進め宇宙へ進出した。


 しかし、人類が宇宙で生きて行くからといって、人の心にも身体にも大きな変化は当然ながら無かった。


 反努力法の支持者達は宇宙に上がれば人は変わると思っていたようだが、むしろ彼等の意思が努力法を受け入れるという変化をもたらしていた。


 原始時代から人間の本質などは一切変化せず、ただ時代の変化に合わせて無理矢理自分達をアップデートして来ただけである。人類は宇宙に進出しても尚、人類こそが至高の存在であり、全ての生物や星は自分達が管理する為にあると思い込んでいる次の革新に辿り着けない生物だった。


 人は自分の欲を満たす為だけに、私利私欲の為に努力している。他人の為、親の為、子供の為というのは、あくまで自分と世間を納得させる為の口実であり、満足感と優越感を得たいだけだ。


 努力という酒は、人間を導き、人間を昇華し、人間を停滞させている。


 そして、努力法が発令されてから3年という月日を経て、努力をしない者、過去の栄光にしがみついた世界の愚物は強制労働や人体実験の末に排除された。

 たったの3年で世界から努力しない愚物が消えるのは、早いか遅いかで言えば早いだろう。これも努力の賜物だ。


 法の正義は絶対という大義が、優秀な人間達をハンターとして動かし、努力しない無能な人間達を社会的に追い詰めて殺したのである。


 その結果、人間の努力が同じ人間である「役立たず」を排除したのだ。

 こうして、人類は有能な人材のみが残った世界になった。こうした犠牲も有り、人は宇宙コロニーを手に入れ、新たなる大地を得た。努力という酒に淘汰されなかった人類は自分の行いに酔い痴れている。


 同時進行していた地球保全計画も順調に進み、満足感を得ているその「有能な人間」達の中にも、優劣があるのを多くの人間が気付いていない。それを問題提起した、かつての大国でさえもそれを忘れている。


 人は次に何を努力するのだろう?

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