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ある肌寒い4月の話

「さてと、玄関の掃き掃除はこれくらいでいいかな」


4月も半ばに差し掛かろうとしているが、ここは少し肌寒い日が多い。これは寒がりの私には少しばかり酷である。

私がここ京都に来てもう半月が経とうとしているが、今の生活にも少しずつだが慣れてきたと思いたい。そう思いを巡らせているとき、急に後ろから声がした。


彩夏(あやか)さん、行ってきます」


振り返るとそこには金髪にロックテイストのシャープな服といった派手な見た目をした若い男―川端(かわばた)が丁度自転車に跨がっているところだった。


「川端くん、行ってらっしゃい。今日は帰りが遅くなるのかしら?」


「いや、今日は研究室に用があるだけなので6時前には帰ろうかと思います」


「そう。でも帰りが遅くなる時は連絡を入れてね」


「分かりました。あっ、そろそろ出発しないと」


そう言って川端は自転車に乗って角を曲がっていった。

ところで今の会話だけで見てみると同棲しているように見えるかもしれないが、それは早計である。


ピコンッ!


「あっ、LINEが来てる。えぇーと、これは佳澄(かすみ)ちゃんからね。何々…今日はサークルの飲み会のため、晩ごはんは要らない…と」


実は半月ほど前から私こと恵那彩夏(えなあやか)は、ここ京都にある京町屋シェアハウス久遠荘(くおんそう)の管理人として住み込みで働いている。

先月付けで前職の給食施設を退職した時は昨今の不景気もあり転職は困難を極めると思ったが、2か月前に前にこの久遠荘を管理していた父方の祖父が他界したことにより、管理人が急遽必要となった。

この当時は4つ離れた妹は就職で東京に行くことになったこともあり、他に跡を継げる人間が居ないと少ない親戚中で慌てたのだが、丁度良いことに近々仕事をやめる予定だった私に白羽の矢が立ったのであった。


私は短く了解の旨の返信をしてから、引き戸を開け戸口の中へ入っていった。

―今日の晩ごはんは5人分になるな―と、考えながら。


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