あなたの言葉はいつも透明な瓶の中
あなたの言葉はいつも透明な瓶の中……
広い広い海を流れて
流星の青い光を吸って
白いイルカの背中に乗って
ぼくの住む多島海の砂浜に流れ着く
あなたの涙はいつも水色の瓶の中……
きらきら光る海流に乗って
ホタルイカの青い光を吸って
白い大きな山をキラリと映して
ぼくの旅する北国の海岸へ流れ着く
ぼくは透明な瓶から零れ出たあなたの言葉に涙して
水色の瓶から滴り落ちるあなたの涙に頬を濡らす
ぼくは知っている
ぼくが日ごと海に流す瓶を
遠い岸辺であなたが探し続けていることを
あなたはきっと知らない
あなたが夜ごと海に流す瓶を
ぼくが大切に拾い上げて涙していることを
あなたへの手紙を
透明な瓶に詰めて青い海に流しても
あなたを想う涙を
水色の瓶に詰めて群青の海に放っても
瓶の中の言葉も涙も
あなたの知らない海を、誰にも知られず漂い続けて
想いを伝えることができない
透明な瓶に水色の言葉を詰めて、海に流す
いつの日かこの手で
あなたの瞳からあふれたばかりの涙に触れたい、と祈って
いつの日かこの体を
あなたの優しい声で語られる言葉で震わせたい、と願って
初めて見つめ合ったあの日のように
あなたに心をときめかせて
この瓶を
今日も、海へ