32. 『モリ』と呼び捨てにしてください!
なぜか美少年がとなりの席に座ってきた。
たまたま電車や待合室でとなりになったとかではなく。
あ、え、て、わたしのとなりに。
う、うわ~!
顔が近い! 綺麗! 芸術品か!?
恥ずかしくて直視できない!!
ドックン、ドックン、心臓の音がヤバイ!
美形に免疫のない喪女には刺激が強すぎる!
「1次試験、いかがでしたか?」
「ビックリしました! まさかリアル脱出ゲームをやるなんて!」
とはいえ、相手は15歳くらいの坊やだ。
日本の同年代とくらべたら見た目も中身もおとなびてるけど、まだまだ子ども。
あんまり考えたくないけど、自分の子どもでもおかしくない年齢だし……(凹)。
BBAがアイドルでもない生身の少年にドキドキしたらまずいでしょ!
本人に気づかれたら気持ち悪いと思われちゃう!
意識しないように意識しよう!
Be cool!
自然体でふるまうんだ!
わたしはカラカラののどにオレンジ色の液体を流しこんだ。
「試験問題は簡単でしたか?」
「いえいえ! やりごたえがあって楽しかったです!」
「楽しかった、ですか……。私は試験問題の作成にたずさわっていた1人なのですが、貴女が我々の想定より早くクリアしてきたので、試験問題が簡単すぎたのではないかと心配になっていたところです」
「簡単すぎってことはないと思いますよ? わたしがクリアできたのはたまたまなので」
「運だけで突破できる試験ではないと思うのですが?」
「……まあ、そうですね。出題者の気持ちになって考えていったらクリアできた感じですかね」
「出題者の気持ち?」
「はい。出題者の人って、問題を解いてもらうために問題をつくりますよね?」
「それは、そうですね」
「今回の試験はトリッキーだけどアンフェアじゃないって最初に説明されてましたから。その前提で、自分ならどこにヒントや謎を隠すかな?って考えていったんです」
「なるほど。闇雲に探しはじめず、出題者の気持ちになって隠し場所を推理したと。それで貴女はすぐに床を這って椅子裏のヒントを見つけることができたのですね?」
「……はい。……もしかして見られてました?」
「ええ。その瞬間、にわかに試験監督席がざわつきました。以降、貴女の行動は常に監視されていました」
ぎゃあ! 恥ずかしい!
どこかで試験の様子を見てるんだろうな~とは思ってたけど、まさか自分がガン見されていたとは……。
わたしは巨大スクリーンと化している大聖堂の壁に目をやった。
現在注目されているのは縦ロールのお嬢様――ヴィクトリアのようだ。
場所は霊廟。
棺のなかで眠っているルキウスの幻影にふれようとして、空振りして、不思議そうな顔をしている。
「不快だ」
ルキウスが吐き捨てるように言った。
「むやみやたらに私の身体にふれないでほしい」
…………
あ、
わたしに言ったわけじゃないのね!?
思わずビクッとしてしまった。
ヴィクトリアの行動に対してのセリフだったみたい。
金色の長いまつげにふちどられたエメラルド色の瞳がわたしに向けられる。
「貴女は私の身体にふれようとしませんでしたね」
「は? いや、そりゃそうですよ」
喪女はパーソナルスペースが広いのよ?
モテ女みたいに、気になる異性にボディータッチする技なんて持ってないわ。
「……ですよね」
美少年が表情をなごませた。
切れ長の目が細まり、白い歯がこぼれる。
「貴女は先ほど、『モリ・ショーコ』と名乗られていましたよね?」
はうっ!
「私もショーコとお呼びしてよろしいでしょうか?」
ぐはっ!!(吐血)
美少年に『ショーコ』と呼ばれるたび、心臓が不整脈をおこす。
このままだと死んでしまう!
「いえ! わたしのことは『モリ』と! どーぞ呼び捨てにしてください!」
「モリー?」
「語尾はのばしません! モリです!」
「わかりました。……モリ」
美少年の頬がほんのり赤らんだ。
……え?
なんで頬を染めた?
どこにそんなポイントがあった?
つられてこっちの顔まで赤くなるわ!
短めでごめんなさい~




