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喪女ですが不本意ながら聖女になりました  作者: 川音
第2章 喪女、助聖女選抜試験をうける
30/32

30. 恋の予感なんてありえない!

リアルが大変で、ひさしぶりの更新になってしまいました(汗)


 目と目があう。


 わたしたちはおたがい見つめあったまま動かない。


 異世界転移してきた喪女。

 世界を破滅に導く、禁断の愛から生まれた美少年。


 そんなふたりの運命の出会い。



 もしかして――ロマンスの予感?



 NO! ありえない!



 光の神の化身(仮)が尻もちをついた喪女わたしを睥睨している。 

 長い金色のまつげにふちどられた碧眼が、磨き抜かれた剣のようにするどい光をはなっている。


 ひ、ひえ~!


 美少年の眼力めぢから、ハンパない!


 やめて! 対美少年の耐性はゼロよ!


 まさにヘビににらまれたカエル状態。

 足がすくんで立ち上がれないのは体力が尽きたせいか、それとも精神力を削られたせいか……。



 先に沈黙をやぶったのは、女のわたしよりも艶のある唇だった。


「おい」


「はひッ!」


 わたしの肩がビクッと揺れる。


「私になにか言うべきことがあるんじゃないか?」


 ヒエッ!

 冷たい視線!


 でもそうだ。

 まだ試験は終わってない。

 バルドル様に助けを求めなくっちゃ!

 

 わたしは両手の指を交互に組みあわせた。


「おねがい! 暗黒神を倒して、大聖堂から脱出させてください!」


「その願い、聞き届けた」 


 声変わり途中の美少年がかすれた声で承諾する。


 すると一瞬で場面が切り変わった。

 わたしたちは黒い煙がたちこめる大聖堂の入り口前に瞬間移動していた。


「え!? どうして!? 霊廟のなかにいたはずなのに!?」


 尻もちをついたまま目玉をギョロギョロ動かす。

 そんなわたしをスルーして、神様役を演じている美少年は剣をかまえ――上段に振りかぶった。


 黒い煙が霧散して、目のまえに3連の扉があらわれる。


「ふえっ!?」


 もしかしてこの扉から出たら脱出成功ゲームクリア


 わたしは扉まで這っていき、金属製の取っ手を思いっきり両手で引いてみた。



 扉をあけた先は――。


 神父やら修道女やら、黒ずくめの軍団が入り口を取り囲んでいた。

 その中心に、白い豪華な祭服を身にまとった教皇が立っている。


「コングラッチュレーション! 脱出第1号おめでとう!!」


 教皇が満面の笑みで両手を叩く。


 それに続いて、黒ずくめ軍団も笑顔で盛大な拍手を送ってくれる。


 そのなかにひとりだけ、無表情で両手を後ろ手に組んでいるカソック姿の少年がいた。

 教皇のとなりに立つ――ルキウスだ。


「えっ!? なんで!?」


 思わず人差し指でさしてしまう。


 なんでそこにいるの!?

 さっきまで一緒にいたはずなのに!?

 服装だって黒いカソックじゃなくて白い騎士服だったのに!?


「あ! まさか双子!?」


「フォッ! フォッ! フォッ!」


 教皇が愉快げな笑い声をあげた。


「ルキウスは双子ではないぞ? おぬしがさっきまで見ていたのは実体のない幻影じゃ。オリジナルはこのルキウスなんじゃよ」


 教皇が華奢な肩をポンと叩く。

 肩を叩かれたルキウスは説明を引き継いだ。


「はい。私の肉体は1つしかありません。幻影魔法でも使わなければ、数多あまたいる受験者の願いを同時に聞き届けることはできませんから」


「そういうわけじゃ」


……どういうわけじゃ?


 願いを同時に聞き届ける?

 ルキウスの幻影は他にもたくさんいるっていうこと?


 眉を寄せ、首をかしげる。

 頭のなかは疑問符でいっぱい。

 そんなわたしに、教皇は含み笑いを浮かべながらヒントを与えた。

 

「脱出の鍵はルキウスじゃったな? わしらは試験ゲームを円滑に進めるために複数のルキウスを用意した。では鍵を隠した霊廟はどうじゃろう? 時間はたっぷり余っておる。せっかくだから舞台裏の謎まで解いてみよ」


……?


 その言い方だと……霊廟も複数用意した?

 大天蓋のした――地下への階段を下りた先には1室だけしかなかったのに?


 でもたしかに、ゲームの進行を考えたら1室だけじゃたりない。


 他の受験者の姿が見えないから忘れがちだけど、この試験ゲームは1000人以上――いや、途中で3割くらい脱落したから700人近くが同時に挑戦プレイしている。


『霊廟で光の神の名を4回讃えよ』


 この謎を解いた受験者たちは霊廟に殺到するだろう。

 だけど不正防止のため、霊廟という名の密室で謎解きに挑戦できるのはひとりずつのはず。


 しかもこの試験ゲームには時間制限がある。

 霊廟が1つだけしかないなら、順番待ちのあいだにタイムオーバーになってもおかしくない。


 そもそも受験者たちは順番待ちの列をつくれない。

 順番を争うことさえ不可能だ。

 なぜならインビジブルの魔法をかけられて他の受験者の姿が見えないからだ。


 結論――試験ゲームを滞りなく進行させるため、霊廟は複数用意されていた。


 そういえば地下への階段をおりたとき、違和感を感じた。

 あそこになにか仕掛けがあったにちがいない。


「もしかして……階段の途中でわたしにかけた魔法に、霊廟の数も関係してるんですか?」


「フォッ!」


 教皇の目がおおきく見ひらかれた。

 口からもツバが飛ぶ。


「さすが脱出第1号! わしらの予想より早く脱出してきただけある! お察しのとおり、おぬしが階段をおりたタイミングでわしが空間魔法をかけたんじゃ!」


「……空間魔法?」


 教皇の興奮っぷりに呆気にとられ、オウム返ししてしまう。


「うむ! わかりやすく言えばワープじゃよ。あの瞬間、わしはおぬしを別の場所に飛ばしたんじゃ!」


「……霊廟の舞台装置セットを別の場所に用意してあったということですか?」


「そういうことじゃ! おぬしは見どころがあるのう! 名はなんという?」


 おっと、教皇直々に名をたずねられてしまった。

 これってかなり恐れ多いことなんじゃ……?


 内心ドキドキしながら名前を告げる。


「モリ・ショーコといいます」


「おお、ショーコ! おぬしならきっと助聖女になれると信じておるぞ!」


「こ、光栄です……がんばります」


 わたしはお礼を言いながら頭をさげた。


 ていうか、いきなり名前呼び!?

 それとも『ショーコ』のほうが名字だと思っているのかな?


……教皇に名前と顔をおぼえられてしまった。


 これが吉とでるか凶とでるか、いまのところわからない。

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