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喪女ですが不本意ながら聖女になりました  作者: 川音
第2章 喪女、助聖女選抜試験をうける
20/32

20. よーし! 出陣じゃい!


 助聖女選抜試験

 1次試験当日の明け方――


 わたしはホテルのベッドのなか。

 まんじりともせずに心臓の鼓動を聞き続けている。


……ヤバイ。眠れない。

 人生を決める大事な試験の前なのに……。


 とりあえず目は閉じておこう。

 仮に一睡もできなかったとしても、目を閉じて横になっていれば身体の8割は回復するって聞いたことがあるから。




 ガイアスと別れてから――


 わたしは一度もウォルフを召喚していない。

 おそらく今後も、よっぽどガイアスと連絡をとりたいときでなければ喚び出すことはないだろう。


 だって向こうの都合も考えずにいきなり召喚したら迷惑じゃない?


――もしかしたら食事中かもしれない。

――もしかしたらトイレ中かもしれない。

――もしかしたら魔物と戦闘中かもしれない。


 無駄に想像力が豊かなせいで、いつも相手に遠慮してしまう。

 思い返してみれば退職する同僚と連絡先交換をしても、こちらから連絡したことは一度もなかった。

 さすがにガイアスには試験に落ちたあと連絡するつもりだけど……。



 はあ……。


 なんとしても1次試験はとおりたい……。


 1次で落ちたらガイアスの弟子になればいいじゃん――なんて逃げを考えたこともあったけど。

 でもやっぱり光魔法は使えるようになりたい!


 だって小回復ヒールをつかえたら。

 こんな喪女わたしでも誰かの役に立てるじゃない?


 まだ20代後半で『どうせ結婚できないし手に職つけないとヤバイ』と焦っていたとき――。

 まっさきに思い浮かんだ職業は看護師だった。

 看護師なら給料は良いし就職先にも困らない。  

 でも資格を取るには時間もお金も覚悟も必要になる。


 無駄な想像力はここでも働いた。

 自分の耳にピアスの穴をあける勇気さえないわたしが、他人の腕に注射針を打てるはずがない。

 父親以外の男性器を見たことがないわたしが(それも子供のときだ)、男性のシモの世話なんかできるはずがない。 


 あれこれ理由をつけて看護師になる選択肢は削除した。

 でも看護師という職業への憧れは消えなかった。

 結局、非正規社員という安易な道を選んで。

 雇用の調整弁として使い捨てにされているわたしにとって、看護師は聖職だったから。


 もしも小回復ヒールをつかえたら。

 人生をやり直せる。

(都合よく見た目も若返ったし)


 そんな気がしてるんだ――……




「ショーコ様、朝ですよ。起きてください!」


――ハッ!


 わたしは客室係の女性――アンナさんの元気な声で目を覚ました。


 よかった。少しは眠れたみたいだ。


 アンナさんには朝6時に起こしてほしいとお願いしてあった。

 眠い目をこすりながら布団から這い出し、浄化リフレッシュの魔法をかけてもらう。


「試験、頑張ってくださいね!」


 他にも起こさなければいけない客がいるのだろう。

 アンナさんはわたしを激励して、あわただしく客室から出ていった。


 彼女も3年前に助聖女選抜試験を受けたそうだ。

 惜しくも2次試験の途中で落ちたけど、そのとき浄化リフレッシュを覚えたおかげで現在いまの職にありつけたらしい。


 経験者の話を聞くと俄然やる気がわいてくる。


 わたしは真新しい『布の服』に両手両足をとおした。

 なんてことはない生成りの長袖長ズボンだ。

 ズボンがずり落ちないよう、ウエストの前でひもを結ぶ。

 

 くつは履きなれた黒のバレエシューズ。

 くつしたは新しく買いたした。

 これも生成りで、上端をヒモで結ぶタイプ。


 一次試験は走ったり跳んだりするらしいので、髪の毛もうしろで一本に結んでおく。


 そして絶対忘れちゃいけない受験カード入りのストラップを首から吊り下げ――。


 ここでいったん鏡の前に立って全身チェックをしてみる。


……うーん。地味。

 ナチュラルをとおりこしてビンボーくさい。

 弥生時代の農民みたいだ。

 でも動きやすい服装でこいって指示なんだからしかたないよね。

 この世界にはオシャレなスポーツウェアなんてないんだし……。


 トートバッグの中身は、お財布巾着とハンカチ。

 それにホテルの人にもらった鉛筆とメモ帳。

 筆記用具持参の指示は特になかったけど、受験や面接のときに持っていくのが日本人の嗜みだ。


 

 トートバッグを肩に引っかけ、勢いよく客室の扉をあける。


 よーし! 出陣じゃい!


 本当の出発は食堂で朝ごはんを食べてから――だけどね。

 腹が減っては戦はできぬ!




 腹八分目で、ホテルから出た。


 フロントマンに鍵をあずけたとき、

『その服装で行かれるのですか……?』と聞かれたことが気にかかる。

『動きやすい服装でこいとの指示なので……』と答えたら、

『なるほど……』と納得してくれたけど……。


 え? この服装ダメなの?

 これって下着じゃなくて普通の服だよね?

 ガイアスは初心者冒険者用の服だって言ってたけど?



 ホテルから大聖堂までは歩いてすぐの道のりだ。


 集合場所の入口前広場には、すでにたくさんの少女とその保護者たちが集まっていた。


 みなさん色とりどりの綺麗な服装で……。

 七五三みたいに着飾って……。


…………


 えっ!?

 なんで!? 

 

 動きやすい服装でこいって言ってたじゃん!!

 まさかあれは、面接選考の『平服でお越しください』的な罠だったのかよ!!(血涙)


開幕ネガティブでしたが、

1章みたいなテンションで突き進んでいくと思いますので

おつきあいしていただけたらうれしいです

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