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喪女ですが不本意ながら聖女になりました  作者: 川音
第1章 喪女、異世界転移する
13/32

13. やった! 無一文から脱出した!


 いーやー! 

 わたし鹿せんべい持ってないから!


 逃げても逃げても、ユニコーンは奈良公園の鹿のようにぐいぐい寄ってくる。

 ついさっき少女を突き刺した凶器が迫ってくるのだから恐ろしくてしかたない。

 こんな熱烈にストーカー行為されたこと、人間相手はもちろん動物にだってないよ!


 修道女たちは神聖な生き物に手出しできないのか、おろおろしているだけで助けにこない。

 ガイアスは巨体を丸めて腹を抱えて笑っている。


 こうなったら自分でなんとかするしかない。

 わたしは闘牛士のように身をひるがえし、ユニコーンの背中に両手をついた。


「どー、どー!」


 白い毛並みの背中を思いっきりわしわし撫でまくる。

 するとユニコーンの青い瞳がうっとり閉じて、わたしがいるのとは反対側に倒れてしまった。


 え? いったい何がおきた?


 一角獣が石畳に四肢を投げ出して無防備に寝っ転がっている。

 わたしはそれを呆気にとられて見下ろした。



「すごいな、ショーコ!」


 面白がって見ているだけだったガイアスが拍手してきた。


「ユニコーンは処女に抱かれると眠ってしまうと聞いたことがあるが、一発で寝かしつけちまうとはさすがだな! ウォルフにも懐かれていたし、爺さんにも動じねえし、ショーコには魔物使いの才能があるんじゃないか?」


 え、本当に?

 いままで動物に嫌われる人生だったのに?

 なんだかよくわからないけど、褒められるのは気分がいいわ。



――そして。


 ユニコーンが寝てしまったので本日の受付は終了となった。


 わたしよりうしろに並んでた人ごめんなさい……。

 でも誰からも文句は言われなかった。 

 ユニコーンは日によって気分にムラがあるので、受付期間を7日間と長く設定してあるらしい。

 確かに受験者全員を1日で審査しようと思ったら大変だもんね。




「本日の合格者を対象にした説明会を行いますので、別室にご移動ください」


 そう言われて、わたしたちは修道女のあとについていく。


 案内されたのは地味めのチャペルだった。

 部屋の中央を走る通路の先には祭壇があり、通路の両側には木製の長椅子が並んでいる。

 座席は少女とその保護者たちでほとんど埋め尽くされていた。


 本日最後の合格者だったわたしたちは、かろうじて空いていた最後列に腰をおろした。

 するとすぐに入ってきた扉が閉められた。

 ここまで案内してくれた修道女がヴァージンロードを歩き、壇上に立つ。



「皆様、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。これより1次選抜試験についてご案内いたします」


 修道女がエレガントにお辞儀する。


――そこから怒涛の説明がはじまった。



「いまから受験カードをお配りします。こちらを紛失された場合は不合格となります」


「試験開始は6日後の朝8時からです。余裕を持ってお集まりください。遅刻した場合は不合格となります」


「集合場所は大聖堂入口前の広場です。必ず受験カードをご持参ください。忘れた場合は不合格となります」


「走ったり跳んだりしますので、試験当日は動きやすい服装でおこしください」


「1次試験は魔力測定、身体測定、体力測定、学力測定を行います。ここで基準に満たない者は即不合格となりますので、できれば保護者の方は1次試験の結果が出るまでお近くにご滞在ください」


「1次試験開始まではお近くの宿屋にご滞在ください。宿泊費は教会負担となります」


「銀貨5枚の日当は本日から支給いたします」


「受験カードに総支給額が記録されます。冒険者ギルドのギルドカードと同じ仕組みです。教会の窓口にカードを提示していただくことで、お好きな金額を引き出せます」


「ご質問がなければ案内は以上となります」


「ご清聴ありがとうございました。6日後にお待ちしております」



…………


 ワイワイガヤガヤ――



 説明会が終わり、参加者たちが後方の扉に殺到している。


 わたしは席に座ったまま、説明途中に配られた白い受験カードをしげしげ眺めた。 

 表面に『モリ・ショーコ』

 裏面に『助聖女選抜試験/1次試験選考前』と書いてある。


 ガイアスは立ち上がって熊みたいに伸びをして、わたしのつむじを見下ろした。


「とりあえず支給金の引き出しに行ってみるか?」

「どうやって?」

「一度やってみればわかるさ」



――というわけで、大聖堂内にある教会窓口にやってきた。

 銀行みたいにカウンターが並んでいる部屋だ。


「すみません。引き出し、おねがいします」


 事前にガイアスに習ったとおりに、窓口に座っている修道女に声をかける。

 修道女はわたしから受験カードを受け取り、手元にある半球体の水晶玉にそれをかざした。

 すると水晶玉の断面にカード内の情報が浮かびあがった。

 いったいどういう仕組みになってんだ?


「ただいま銀貨5枚ございます。いくら引き出しますか?」

「全部おねがいします」


 わたしは500円玉サイズの銀貨を5枚受け取った。


――やった! 無一文から脱出した!


 ぎゅっと銀貨を握りしめ、部屋の後ろで待っているガイアスのもとへ走って戻る。

 わたしの脳裏では「はじめてのおつかい」のテーマが再生されていた。

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