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喪女ですが不本意ながら聖女になりました  作者: 川音
第1章 喪女、異世界転移する
12/32

12. やっぱりモテ期なの!?


 わたしたちは金属製の立派な門の前までつれてこられた。

 海に立っていることで有名な厳島神社の鳥居くらいの大きさの門だ。


 まだ若造に見える兵士が冷めた目つきでわたしを見くだす。


「受験者はその小娘か」


「そうです。推薦状はこちらです」


 ガイアスはへりくだった態度で封蝋されている推薦状を提示した。


「で、おまえは?」


「私はこの娘を大聖堂まで無事に送り届けるクエストを教会から受注した冒険者です。ギルドカードはこちらに」


 ガイアスは運転免許証サイズのカードを兵士に差しだした。

 兵士は不遜な態度でそれを奪い取り、ハッと鼻で笑った。


「Eランクか! その年齢としでまだEランクだなんて情けないおっさんだな! その図体はでかいだけか!?」


「はい、お恥ずかしい話です。私にもその若さで帝国兵士になれるような才覚があればよかったのですが……」


「……ふん。まあせいぜい身の丈にあった仕事で頑張るんだな」

 

 自尊心をくすぐられて気分を良くしたらしい兵士は、手のなかで弄んでいたカードをガイアスに突き返した。


「よし、通れ」


「ありがとうございます」


 わたしたちは兵士に礼をして、そそくさと門の下をくぐり抜けた。



――あーあ。

 バカだな、この兵士。

 たぶんガイアスって足止めされてる人たちのなかで一番通しちゃいけない人だったのに。


 もちろんあんな失礼な態度のやつに教えてあげる義理なんてない。

 わたしは心のなかで「あっかんべー」をした。




 壁のなかは中世ヨーロッパのような街並みだった。

 わたしたちは大聖堂をめざして話しながら歩いていく。


「ガイアスさんってEランク冒険者なんですか? あんな物騒なもの召喚できるわりに低くない?」


「上から目をつけられたくないから最高でもBランクどまりになるよう調整してたんだ。5年前に事実上引退して、クエストを受注しなくなったら自動的にEランクまで落ちていた」


「ふーん。冒険者ギルドってのがあるの?」


「ああ。どの街にも支部があって誰でもすぐに登録できる。最高はSランクで、最低はFランクだ」


「ガイアスさんの本当の実力ならSランクになれる?」


「はは、それはどうだかな」


 ガイアスははぐらかすように笑った。


 でもわたしにはわかってる。

 ガイアスが『祖国を出奔したあと実力を隠しながら冒険者になり、引退後は田舎でドラゴンたちとスローライフを満喫していた最強系おっさん』だってこと、ばれてるんだからね!




「お、見えてきた。あれが大聖堂だ」


 ガイアスが指さしたのは、誰が見ても一発で大聖堂だとわかる荘厳で神々しい巨大建築物だった。

 入り口前の石畳の広場に、10代の女の子とその保護者と思われる人だかりができている。


「俺たちも行こう。試験の受付は昨日からはじまってるんだ」 

「あ、そうなんだ」


 わたしたちはアーチ状に開いた大聖堂の入り口に近づいた。

 そこでわたしは目撃した。


――白い毛並みの馬。

 額の中心から螺旋状に筋の入った長くて鋭い角をそびえ立たせた処女厨ユニコーンの姿を――。


……うーわー……。


 処女であることに1ミリの嘘もないはずだけど……。

 いざ審査されるとなると「あれ? わたしって本当に処女だったっけ?」と不安になってくる。

 あとはユニコーンの好みでブスやババアは跳ねられるんじゃないかという疑念もわいてくる。



 わたしたちはユニコーンが待ち受ける列に並んだ。

 まるで閻魔大王の裁きを待つ亡者の気持ちだ。

 ていうか、ガイアスの前で処女を証明されるってどんな羞恥プレイなんだ!?


 わたしはドキドキしながら受付の流れを観察した。

 受付係はユニコーンと10人程度の修道女。

 保護者が修道女に推薦状を見せ、ユニコーンが少女の匂いをくんくんかぎ、OKだったら大聖堂のなかに案内される――そんな流れだ。


 今のところNGだったものはいない。

 わたしが第一号になったら嫌だなあ……と思っていたら、「キャーッ!!」という悲鳴があがった。

 なんとユニコーンの鋭利な角が少女の肩を刺し貫いていた!


「大丈夫ですか!?」

「至急手当を!」


 修道女たちが石畳のうえにうずくまる少女に群がっていっせいに小回復ヒールを唱える。

 肩を貫通するような深い傷は、1回や2回のヒールでは治らないのかもしれない。


 少女の傷はすぐに塞がったが、身につけていた白いドレスは血に染まっていた。

 石畳にも血溜まりができている。


 少女は怒りの形相で受付係たちを睨みつけ、そして絶叫した。


「わたしに助聖女選抜試験を受けさせろよおおおォッ――!!!!」


 ひとりの修道女が冷静に切り返す。


「できません。ユニコーンの判定は絶対です」


「なんでだよ! 小さいころから聖女になるのが夢だったのに! ちょっと男の人に茂みに連れこまれて悪戯されたくらいで! どうしてわたしの夢が潰されなくっちゃいけないのおオ――ッ!?」


「……同情いたしますが、処女性を失ったものに助聖女の職務は勤まりません」


 少女につきそいの保護者はいなかった。

 えぐえぐと大号泣する少女は、修道女に肩を抱かれてどこか見えないところに連れていかれた。




 その光景を目撃していたわたしはドン引きして鬱になった。


 可愛い子だったのに――。

 可哀想に……。


 こんな警察もいない世界で、若くて可愛い女の子が純潔を守るのは想像以上に難しいことなのかもしれない。


……もしかして処女であることって、ものすごく幸せなことだったんじゃない?


 誰にも尊厳を踏みにじられてない。 

 誰にも人生を奪われてない。


 処女である人生を選んだのは、誰でもないわたし自身なのだから――。




「では、次の方ー」


――せっかく喪女が悟りを開きかけてたのに無情にも順番が呼ばれてしまった。


 空気読めよ!

 ていうか心の準備ができてないよ!


 そして何故か、いままで一歩もその場から動かなかったユニコーンがのそりと歩み寄ってくる。


 なんでだよ!?

 いやあー! 刺されるー!!


 わたしは身を硬くして目を閉じた。




――すりすり


 は?



 ユニコーンの長い首が、わたしの腰に擦りつけられていた。



「えっ!? な、な、なに!?」


「まあ素晴らしいわ! ユニコーンがこんなに懐くなんて!」

  

 先ほどまでの鬱々とした空気とは一転。

 修道女たちは華やいだ表情でわたしをとり囲む。


 は!? 意味わからん!

 やっぱりモテ期なの!? モンスター限定の!?


 わたしはユニコーンの荒い鼻息を腰に感じながらボーゼンと突っ立っていた。


いま流行りの要素をつめこんだおっさん(´・ω・`)

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