いざ首都へ
次の日、私とカインとクシュシュとケイトは馬車に運賃を渡して乗り込んだ。
銀貨10枚とはいえ相乗り馬車で、知らない貴族も商人も冒険者もみんな大きな馬車に乗り込んでいく。
馬車とは名ばかりで、車を引くのはDランクモンスターのシェンフォースだ。
おとなしく、利口で、生き抜くために人間に従う馬型のモンスターだ。
命の危険さえ感じさせなければ何でもするので、よく馬車に使われる。
それでもDランクなのは暴れると後ろ蹴りが炸裂し、最悪死んでしまうからだ。
相乗り馬車に上級貴族の衣装を着込んだ四人の11歳子供が乗っているのはやはり目を引くのか、チラチラといろんな人がこちらを見てくる。
「なあ、あんたがオーロラの姫君かい?」
「はい?」
知らない冒険者が私を指差してそんなことを言った。
オーロラの姫君なんて異名がいつついたのだろうか。
「確かに、姫君という冒険者ネームではありますけど」
「やっぱりな!」
何がやっぱりな、なんだ。
私のことを知らない人が知っている。
…皇女だから当然か、と冷静な考えに至るのでそこまで気にしなかった。
「俺はゲイル、冒険者ネームは覇王、ランクはAだ」
「どうも」
自信満々に覇王といい切るあたり、わざとその名前にしたんだろうなと推測する。
ゲイルさんはその後も冒険者ギルドの噂を聞いてもいないのにペラペラと喋って勝手に笑っていた。
たしか、イナイリカから首都ハウトディアまでは約3日かかる。
その3日の間をこの人とともに過ごすのかと思うと今から心が折れそうだ。
「姫君って本名はあるの?」
ゲイルさんがあまりにもせがんでくる。
そういえば私は死んだことになっているのだろうか?
「フルブラント・S・セレシアン・レア・ドミニクが本名ですが、登録時はレアとしか記入してません」
しれっと言い切ると馬車の中にいた全員が勢い良く振り向き私を見た。
この様子だとやっぱり死んだことになっているようだ。
「なら、馬車は降りた方がいいかもな…今の城はそれどころじゃないぜ?」
ゲイルさんが厳しい顔で言ってくるので、知っていると答えた。
ルミニア母様がご乱心なんでしょう?噂には聞いていますよ、と。
「知ってても行くのか…すごいお姫様だな」
「自分の身内のことですから」
「まあ、そうっちゃそうか、強いな~」
何が強いのかわからない、精神のことだろうか。
精神でいくならば伊達に40年も苦悩の日々を送ってないぞといいたいが、それは前世の話だからやめておいた。
といっても今世のレアも相当の苦悩だ。
まだ11にして何度命の危険にさらされてきたことか。
私を見る馬車の中の人たちがゲイルさんと同じように感心して涙をぬぐったりしている。
どういう状況ですか。
カインもクシュシュもケイトも理解していないようで、とりあえず首都に行けばわかるだろうと安易に思い、今日はもうゲイルさんを無視してカインに寄りかかり眠った。




