アーサー魔導師目線/希望を信じて
体が思うように動かない、暗く、静かな部屋。
一目見たときから心が締め付けられるような気持ちになり、これが恋なのかと錯覚した。
実際には、錯覚だった。
あのときの俺は、あの女性に…釘付けだった。
けれど理性のどこかで、私はその思いを否定していた。
彼女のことを忘れられたのは、レア殿下と一緒にいるときだけだった。
レア殿下と一緒のときはたのしくて、忘れてしまっていた。
そのことが、彼女にばれたのか、軽い洗脳をされたかのような浮いた状態になり、本領が、発揮できなかった。
レア殿下が、危険だとしり、普段の私なら戦えるはずの相手に、二人掛かりでも勝てず、とても悔しい思いを、した。
あのとき空から降ってきた槍は、違うことなく、レア殿下の、神、属性の魔法で、寿命を使わせてしまう失態を犯した。
体が、意思が、自由じゃない、この感覚がとても嫌だった。
そして、冒険者をする、レア殿下に私は、賛成だった。
彼女は強い、その力があれば、誰でも救うことができただろう。
みんなの、光になっただろう。
けれど、私の意思を捻じ曲げて、レア殿下の思いを否定した。
否定して、嫌われた。
レア殿下は、私と会ってくれなくなった。
あの女の思うツボというわけだ。
支えが消えた俺を落とすのは容易かった。
無理に結婚をこじつけ、妻になった。
その夜から、眠れたためしはない。
こんなに、嫌な女は初めてで、サキュリリスかと疑ったが、額に宝石がなく、人間なのだと思った。
人間なのに、こんなに嫌なのは、もっと初めてだった。
次第に体は正気と精気と魔力が奪われ、体力が落ち、ストレスから、髪色が、銀になっていった。
彼女から、レア殿下は事故に巻き込まれ死んだ、と聞いた。
もう希望など、どこにもなかった。
日に日にやつれるのは、手に取るようにわかり、いっそ死んだほうがマシだと、強く思った。
けれど、死ななかった。
神属性の特徴として、目の前にあるものだけに使える他の11属性とは違い、遠くでも、効果が出る。
光が、私を包み、今、理性を繋ぎ止めている。
私の、希望が、帰って来ると、信じてやまなかった。
ふとあのときから結ばれたままの髪の毛を見る。
三つ編みを束ねた髪飾り。
バラの、装飾がしてある、もらいもの。
これだけは、守り抜いた。
これが、支えだった。
あの女は私だけでなく、クリス殿下と、エメスト殿下も虜にし、使い込んでいた。
この国を支えていたアルフレッドも、弱り、この国はあの女の手に、おちていた。
けれど、助けが来ると信じてやまなかった。
彼女は生きていると思っていた。
夢の中で、神様が、教えてくれたのだ。
その都合のいい夢を、私は信じていたいんだ。




