だから、Sランク…
目を覚ました私たちは、ベットを綺麗に整えてから再び階段を上った。
どれほど上ったかわからないぐらいになってようやく踊り場にでた。
もちろん扉もあり、開くと予想通りキッチンだった。
食料を保存しておく、いわば冷蔵庫のようなものの中には食料が入っており、まだ新鮮で使えそうだった。
クシュシュと私で料理をし、四人で思いっきり食べた。
しばらくキッチンで休憩したら再び上りだした。
上りに登って足がパンパンになってきた頃に再び踊り場に出た。
そこにもやはり扉があり、開くとそこはリビングだった。
大きなソファーに四人で座り、足の疲れを癒した。
そしてその日はそのソファーをベット代わりにして眠った。
次の日目が覚めたら干した牛肉を食べ、階段を上った。
たどり着いた踊り場にはやはり扉があり、開くと書斎だった。
書斎にたどり着いた私たちはとりあえず本を開いて情報を集めた。
しかし、本はどれも古代の言葉で読むことが叶わなかった。
書斎を後にし、いよいよ五階の客間へ向かう。
客間の扉を開くと、そこには入れたての紅茶が机に置かれていた。
それよりも驚いたのは、人がいたことだった。
「ようこそ、こんな辺鄙な処へ」
其の者、輝く青の髪をもち、其の者、深い闇の目を持つ。思いは誰よりも高く、心は誰よりも清く、其の者、神に愛され生をうけ、其の者の右に出るものはいない。
彼こそがリッシュ、リッシュ・ルイスだった。
リッシュって生きてたのか!!
「そうだね、死んでいないというよりは生死を繰り返して生きているね」
「心をさらっと読みませんでしたか?」
「ふふふ、ごめんね」
「ほん…もの…ですか?」
「偽物なんているの?」
絵本で何度も読んだ伝説の魔法使いリッシュがそこにはいた。
絶対に本物だと信じて疑わないし疑えなかった。
「師匠も変な家を建てたよね、階段辛くなかったかい?」
「とても、辛かったです」
だよねと言い笑うリッシュさん、残りの三人も驚いているらしく、これが夢なんじゃないなという思いの方が強かった。
しかし、リッシュさんが夢じゃないよと笑うので私たちみんなが驚いて立ち尽くした。
「まあまあ、座りなよ。大体のことはわかってるからさ」
促されてソファーに座る。
足に溜まった疲れが今更になってじわじわと痛みに変わっていくのがわかる。
「でさ、君たちは帰りたいわけでしょ?でもここから先大変だよね?もうここで暮らしちゃう方が早くない?」
にっこりと笑うリッシュさん、なぜか否定する気持ちが出てこない。
クシュシュも同じらしく確かにと小さく言っていた。
それになぜかカインとケイトが否定的で、私はなんでだろうな?と首をかしげた。
「二人は賛成してくれてるし、ここは多数決かな~?じゃあ決まり!ここで生活しよう!」
階段は嫌だけど、リッシュ様と一緒に居られるのならどうでもいい気がしてきた。
クシュシュも同じらしく、同じようにリッシュ様の魅力にうっとりしていた。
カインともう一人の男の子が何か言っている気がするけど、なんだかぼやけて聞こえない。
「せっかくだし二人とも僕の隣においでよ」
リッシュ様の隣に座れるなんて、すごく光栄なことで嬉しい。
クシュシュも同じ気持ちらしく、うっとりとしている。
でも私の方だけを見てほしいなリッシュ様
「平気だよ、ちゃんとレアのものだからね?」
男の子二人が剣を抜いた。リッシュ様めがけて斬りかかる
「危ない!」
私はとっさにリッシュ様をかばった。
そういえばこの男の子二人はなんでここにいるのかな?
クシュシュも戦闘態勢に入る。
私も得意の武器を握りしめて…武器?
ふと手元を見ると白く輝くオーロラ魔道石がはめられた杖を持っていた。
この杖って誰からもらったものだっけ…ええと。
「アーサー…兄…様」
ハッと我に返った。
背中に突き刺さるようなこの視線はきっと化け物から発せらてるにちがいない。
「くそっ…」
私の目の前で悔しそうに奥の化け物を睨みつけるカイン。
私は杖を握りしめて…打ち消しの魔法を自らにかけながら振り返った。
「どうしたのですか?レア様」
そこには目覚しいゴールドの髪にガーネットの瞳を持つアーサー兄様がいた。
「惜しいね、アーサー兄様は私を”レア殿下”って呼ぶのよ?」
クシュシュにも打ち消しの魔法を唱えて正気を取り戻させた。
「おや、残念ですね…」
その後は四人で連携を取り相手を追い詰め、首を掻っ切った。
見た目はアーサー兄様そっくりなものだから、なんだかとても嫌な気持ちになった。
ふと見れば崖など存在しない平坦な地面に戻っていた。
食べたものも幻だったのかお腹が妙に減った。
四人で無言のまま干し肉を喰らい、また歩き出した。
後でカインに聞いたところ、きっとカースインキュリットだと教えてくれた。
サキュリリスの男バージョンというのが早いが、その手口はサキュリリスよりも凝っていて、まずは肉体疲労で脳が冷静な判断が取れなくなるまで待ち、その後思わずしばらく凝視してしまうような光景を生み出し、見つめさせて洗脳するのだとか。
もちろん男には効かず、女にしか効かないらしい。
全然進んでいないのにとんでもなく疲れてしまった私たちは障壁を張り、今日はいつもよりも早く眠ったのだった。




