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獅子龍と覚悟


7日目になり、今日も硬いパンを削り食べた。

何かあったらすぐでも駆けつけられるようにと首輪を外した状態で四人それぞれが武器を身につけていた。

この魔の樹海にはサキュリリスだけでなくSランクもSSランクのモンスターもいる。

魔の樹海だと決めつけるのが早いわけではなく、樹海にしか生えていない特殊な蔓植物があったので断定したのだ。

冒険者はかなりの手練れなのか、そう恐れる事もなく突き進んでいるようにも見える。

私やクシュシュとケイトは窓から応戦もできるのでまれにモンスターに追撃をしている。

カインは何もできる事がないと悲しそうにしてたので、魔法使いが三人もここにいる方がすごいんだと言っておいた。

本当に普通じゃありえない事だからね?


油断できない道無き道を馬車が行く。

モンスターとはそこそこ頻繁に会うがSSクラスやSクラスのモンスターとはそうそう合わない。

昨日のサキュリリスとの遭遇が珍しすぎるぐらいだ。

せいぜい会ってもBランク程度のタイガーライズだったり、それより少し大きいやつだったりと手練れが10人もいれば楽々だろうと思えるものばかりだった。


もしかして結構安全だと思って使ってる人が多いんじゃないかと思ったのはこの後だった。

たまたま別の行商人の馬車と出会い、軽く談笑をしていたからだ。

ここが魔の樹海だというのはどうやら間違いはないらしく、行商人たちはこの森を樹海と呼んでいた。

私たちだけが警戒しているらしく、全く平気といった顔をしている彼らを見ると不安に襲われる。


その後、談笑を終えて進みだした馬車は数時間に一回のペースで出会っていたモンスターと遭遇しなくなった。

さっきの人たちが倒していったのか、それともこれが嵐の前の静けさというやつなのか…

カインもケイトもクシュシュも警戒を募らせていた。


私の予感は的中した。

真っ白なたてがみをたなびかせ、体は龍の鱗で覆われた獅子が立ちふさがった。

タイガーライズなどの比ではないその巨体に神々しさ。

翼も生えており、純白の獅子龍というのはこれかと思い思わず息を飲んだ。


鋭い黄金の瞳がこの馬車を捉えた。

私たち四人はただ一つ、もう無理だと悟った。


刹那馬車がなぎ倒され、私たちも吹き飛ばされた。

その獅子龍が大きく息を吸い込んで、吐き出す。

真っ白の炎が馬車を燃やした。

私は持てる限りの力で障壁を張り、私を含めた四人を護ることに成功した。


「ひどい」


見渡すとさっきまでそこに存在した跡だけを残して馬車が消えていた。

あの冒険者は、足だけがそこに落ちていた。

獅子龍が私たちを両目で捉えた。

もう逃げられない、今の一回を護るだけで既に限界が近い魔力ではもう到底太刀打ちできない。


「母さんに会いたかったな」


ケイトがそう呟く。


「どうせ最後だから、言うね、私、ケイトのこと好きだったの」

「えっ」


クシュシュが泣きながらいうとケイトも動揺していた。


「…レアさん実は」

「まだ死ぬとは決まってないから諦めないで」


私は諦めていなかった。

諦めてなるものかと思っていた。

他の三人は諦めたとしても、私は諦める理由などなかった。


「絶対に、死なせない」


獅子龍は私達をとらえているのに襲ってこなかった。

理由は定かではないが、殺意を先ほどから感じるので様子をうかがっているだけかもしれない。


お願い、今だけでいいから目の前にいる獅子龍を倒せるだけの力が欲しい。

強く強く思うと胸が今まで以上に苦しくなった。

しかしそれはすぐにおさまり、ぐっと体が軽くなった。


今ならなんでもできる気がする。


私はすぐさま”絶対に壊れない障壁”を張った。また胸が苦しくなる。

獅子龍は咆哮を上げて突っ込んできたがそれは割れることは決してなかった。


次に獅子龍の動きを”完全に止める魔法”を唱えた。また胸が苦しくなった。

獅子龍は幾多もの白い鎖で縛り上げられ、咆哮すらあげられなくなった。


最後に私は獅子龍の鱗も貫く”最強の矛”を生み出し、アーサー兄様が投げた秒速500mの速さで打ち込んだ。

やはり胸が苦しくなった。

獅子が目を見開いて動かなくなる。

と、獅子の姿が光の粒子になり、その光が私の杖に吸い込まれるように消えていった。


どっと疲れが押し寄せてきて、胸が張り裂けそうなほとに苦しくなった。

それでも、ここの安全を確保したくて魔法を唱える。

“何が起きても安全に休める場所”胸の苦しさのあまりその後私は意識を失った。


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