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気さくな皇帝


「大丈夫かい君達?おーい?」


突然知らない男の人の声で私たちは目が覚めた。

その男の人は私が探していたあの精霊樹にオーロラ魔道石をはめたあの杖を持っていた。


「その杖!!」

「この杖?」


私は思わず飛び起きてまじまじと見つめた。

間違いない、わざわざ私の名前のイニシャルを掘ってもらった物なのだ。


「それ、私が、無くした杖なんです…」

「ええ!?そうなの?じゃあこれ君の名前?」

「はい…フルブラント・S・セレシアン・レア・ドミニクです。」


すると男の人は杖を何も見返りなしに返してくれた。


「すっごく安く売っててさ~、思わず買ったんだよね!」

「いいんですか?」

「いいよいいよ」


そしてようやく私は相手の顔を見たのだ。

背丈は170ほどで、髪色は紫でオールバックにしており、瞳も綺麗なアメジスト色をしている。

服装は上級貴族だろうと思われる気品溢れる服装だ。


「で、レアちゃん?その奥の子達は?何があってここにいるの?」


不思議そうに聞いてくる相手にカインの警戒心はマックスだったようでお兄さんを睨みつけていた。


「この子がカイン、この子がケイト、この子がクシュシュ、みんなフルブラント王国の子です」

「随分と遠いとこから来たんだね~」

「あのっ…!」


突然クシュシュさんが声を出した。何かと思ってみると私以外の三人が不安そうだった。


「あなたの、名前を教えていただけませんか?」

「あー!失敬失敬!うっかりしてたよ~」


本当にすっかり忘れいていたようでニッコリ微笑み改まってお辞儀をした。


「わたくしはリンシャント帝国からまいりました。S・グレイシス・リトル・リンシャントと申します。リトルが名前です。リトちゃんとお呼びください」


で、結局何があったの?とリトちゃんが聞いてきたので、すぐそこの森にフォメットがいて命からがら逃げてきた話をした。


「おお~フォメットかぁ~そりゃびっくりしたね~」

「びっくりしたね~ってレベルじゃないです」


カインがげんなりしてツッコミを入れている。

リトちゃんはウィンクしてフォメットぐらいでへばってちゃ女の子を守れないぞ?とカインに言っていた。

いや、へばって当然じゃないかと私は思う。


「そうだ、ここじゃどうせ危険だしさ~うちの帝国に来なよ!リトちゃんが話通しといてやるからさ!」


確かにとてもじゃないがここは危険だ。

状況も理解できていない上に疲労が溜まっている。

リトちゃんも悪い人じゃないと思うのもある。


「リトル様こんなところにいらっしゃったんですか?」

「おお!噂をすればセイダーちゃん!ねね、この子達がフォメットに追われてフルブラントからこんなとこまで来ちゃったらしいからさ~帝国でしばらく預かってもいいよね?」

「はあ、随分と遠いですね。」


突然現れた魔導師だと思われる女性、セイダーちゃんにリトちゃんがまくし立てている。

私とカインはリトちゃんがリトル様と呼ばれたことに少しだけ違和感を覚え、ケイトくんとクシュシュさんも不思議そうに見つめていた。


「申し遅れましたセイダーと申します。リトル陛下の有能な右腕です」

「そうそう!有能な右腕!」

「陛下!?」

「帝王様!?」


目の前にいるリトル様がリンシャント帝国の皇帝様だとは誰も思いもしなかった。

思うはずがない、だってこんなに気さくな皇帝など聞いたこともない。


「陛下がよろしいのでしたら問題ないのでは?」

「だよねー!よし、じゃあセイダーちゃん!転送よろ~」

「かしこまりました」


私たち抜きで話を進めるリトル様とセイダーさんに私たちはお互いに顔を見あったりするぐらいしかできなかった。

と、なんの前触れもなく体が浮く感覚がして、気が付いたらお城の中にいた。

フルブラント王国よりも全体的に物の装飾が多く、うるさいイメージがある謁見の間。

その謁見の間にある玉座もギラギラとした装飾が施されており、そこにドカリとリトル様が座って笑った。


「ようこそ我が帝国へ、俺には妻も子供もいないから部屋はガラ空きなんでね、自由に使ってくれて構わない」

「案内は私セイダーがさせていただきます」

「……」


とんとん拍子でついていけない。流されるようにお城の案内をされ、結局四人とも城で女部屋と男部屋もらい、お小遣いまでもらってしまった。

なんというか…


「すごい人だったね」

「そうだね、びっくりしちゃったよぉ」


クシュシュと私は不安に思うべきなのか安心するべきなのかがもう分からなくなっていた。

ここはフルブラントじゃない、ないけどどこか安心する。

でもクラスメイトたちはどうなったんだろうと思うと不安になって、そして私はアルフレッド父様とルミニア母様、クリス兄様にエメスト兄様、マリーもロレッタもユーリスもリッシュも…そしてアーサー兄様も置いてきてしまった。

不安だ、何もなきゃいいんだけど。


しかし焦ったところで何も変わらない、今は生きてる。それを喜ぶ。

部屋に使用人さんがやってきてご飯を用意したからおいでとリトル様が言っていたといい、去っていった。

お腹も空いていた私たちはお言葉に甘えて食事に向かい、リトル様と一緒に豪勢すぎる食事をした。

そのあとはセイダーさんに私とクシュシュは捕まり、風呂に直行。

カインとケイトもリトルさんにつかまって風呂に連れて行かれた。

洋服はこの帝国で流行ってるデザインの服に着替えさせられた。

黒と青のゴスロリドレスというのが早いかもしれない。

異様に素足が見えるこのドレスはなんだか落ち着かない上に、肩にマントまで羽織っているのでフルブラント王国との趣味嗜好の違いが垣間見えた。

服にも装飾がゴテゴテで少し重い。

クシュシュは初めてドレスを着たらしく目を輝かせて喜んでいた。

しかし私から言わせれば、クシュシュはゴスロリ服よりも丈の長いドレスの方が似合いそうだ。

私は精霊樹の青白い木の色と髪の銀のせいで結構似合っていると思っている。


「レアちゃんもクシュシュちゃんもめっちゃかわいいじゃん!」

「ありがとうございますリトル様」

「リトちゃんだってば」


ちなみにカインとケイトはというと、悪魔で羊じゃないあれの漫画に出てきている少年のような見た目になっていて、カインは黒い髪に黒い服なものだから真っ黒になってしまっていた。

似合っているかと言われると、顔が美形なだけあって似合っていた。


「レア、よく似合ってるね」

「ありがとうカインもね」


私が褒めると照れくさそうにカインが笑った。

ああ、あまり感情を出さない子が笑うと何て綺麗なんだろう。


「さてと、明日はお城の周辺を案内して、フルブラントに向かう行商人を探そうね!帰りたいっしょ?」


リトちゃんが笑ってそういうので皆が同意して頷いた。

帰りたいのは嘘じゃない。


「でもここからフルブラントに行くのって、最低でも2年はかかると思うから」

「1年!?」


ケイトが驚きのあまり声を上げた。しかし他の三人も同じ気持ちであることは変わらない。

リトちゃんはさらに追い討ちをかけるように「早くてだから」と念を押し、最高はその倍近くかかる可能性が有るといった。


「もっと早く行く方法はあるけど危険でね、避けて行った方がいいと思うんだ」

「その道ってどんな道ですか?」

「魔の樹海を突っ切るって方法だよ」


魔の樹海。魔の森の数百倍の大きさを誇る地上最古の魔の森だ。

A~S、時にはSSランクのモンスターが数千体かそれ以上住んでいると言われている危険な森だ。

SSランクがいるという証拠に、天候がすぐに変わる。

エンペストスピアローが2匹以上いるとこうなるのだとか…。


「しかもそこを突き進んでも最低半月、そうなれば安全な道を行くべきでしょ?」


その言葉にも四人で同意した。魔の樹海を突っ切るなんて不可能だ。

次こそ本当に死んでしまう。


「じゃあ最低1年ルートの行商人を明日探そうか、だから今日は城の中で遊んでてね?」

「わかりました、何から何までありがとうございます」

「いいよいいよ~」


ちなみにこのドレスもくれるそうだ。

私はクシュシュと部屋に戻り、今日あったことを互に話して眠ることにした。


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