時が経つのは早いもので
杖を無くしてから1年たった。
私はまだ悲しくて冒険者ギルドに行けていない。
カインも心配そうにしてくれているが、冒険者ギルドに行っていた話をここでしたら私もカインも良くない。
だからカインはそっとしておいてくれていた。
代わりにロイはたくさん話しかけてきた。
私のことを知らないからだろうけれど、なんだかんだと心配して側にいてくれたことが嬉しかった。
今日は授業でモンスターのことについて学ぶために冒険者ギルドの魔法機器を先生が教室に持ってきた。
これからここに授業の一環として入るので、先生の後に続くようにと言われた。
生徒たちは戦えるようにと剣を腰に下げて先生に続き入っていく。
私も浮かない気持ちのまま転送装置に入った。
転送装置の先は小さめの魔の森で、ツノのあるEランク程度のモンスターがいる森だった。
その森でもしものことがあった場合の対処を訓練した。
言われなくてもわかっているという思いと、杖の行方のことでぼうっとして話を聞いていた。
授業はしばらくすると終わり、再び教室に戻ってきた。
今度これを使った合同キャンプがあるそうだ。
魔法学院生徒の同い年の子と上位貴族学院の生徒との合同キャンプだ。
その際のためにいろいろ準備が必要だとかなんだとか、何かあったら先生にどうだとかこうだとか。
私はぼうっと聞いていた。
気がつくと授業は終わっており、教室にはロイと私だけが残っていた。
ロイは私が遠くの一点をみつめてぼーっとしていたことを見て声をかけてくれていたそうだ。
ぜんぜん気がつかなかった。
「悩み事ですか?」
「うん、まあね…」
そして杖のことはなにも言わず、ふうっとため息をついた。
どちらにせよ今どこかに行ってしまうのは良くない。
私はロイと途中まで一緒に歩いて帰り、城へと帰宅した。
すっかり元気が無くなった私をみたクリス兄様が慰めてくれた。
15になったクリス兄様はあの時出会ったアーサー魔導師様より背は低く、やはり子供っぽかったのでアーサー魔導師様が異常だったんだなと確信して少し笑った。
エメスト兄様はこんな時でも陽気で、13にもなったのにいたずらをしていた。
髪の毛は最近バッサリ切ったせいで男っぽくはなったが、それでも目が丸いことがあり女の子っぽい。
そのことを言うと少し不機嫌そうにして髪の毛をぐしゃぐしゃにされるので言わない。
マリーは6歳になったので勉強のことをたくさん話してくる。
勉強でこうだったあーだった、お友達がこうだったあーだった。
とても楽しそうに笑いながら話していた。
そのあと子供っぽいエメスト兄様とマリーがはしゃぎながらかけっこを開始し、城の中で騒ぐなとデルダさんに叱られても止まらなかった。
私が知らないで放置した幸せを平気で堪能していた。
なんだかやるせない気持ちだった。
アーサー魔導師様が城に最近来るのかどうかをクリス兄様に聞くと、結婚してから忙しいみたいで来ていないと言っていた。
そっか、結婚したんだっけ…なんて失った2年間のことを考えていると悲しくなった。
次あったらごめんなさいって言えるだろうか。




