絶縁宣言
アルフレッド父様の執務室にアルフレッド父様とルミニア母様、アーサー兄様とクリス兄様にエメスト兄様、それからマリーと私が集まっていた。
アルフレッド父様とルミニア母様はとても厳しい目つきをしていて、クリス兄様とエメスト兄様は憐れみと安堵、アーサー兄様は平常心を装いながらも厳しい目つき、マリーは何が起きているのかわかっていないかのようにキョロキョロとしていた。
「それはダメだ」
「なぜです?私が皇女だからですか?」
話の議題はこの前の事件で発覚した私が冒険者をしていることについて。
アーサー兄様から陛下の許しが出るまではダメだと言われたので交渉中だった。
「皇女だからというのもそうだ、それにレアはまだ学生で学院3年、経験が浅い」
「剣術中級で魔法も上位の私に足りないのは実践です。経験が浅いと仰るなら経験させてください」
「ダメだ」
「なぜですか」
さっきからこの言葉の繰り返しだった。
私が皇女だからという理由だけでダメだと言われる。
私は確かにまだ経験は浅い、危険も回避できない。
しかしそれは学ばないとわからない、自分にはそれこそ魔法がある、一応自分の身は自分で守れる。
舐めてかかっているわけではない、私は冒険者として未熟で、それをリッシュに教えてもらっていただけなのだ。
今回は確かに師がいない中で起きたことなので対処はできなかったが、あれと遭遇したのは別に私の技術がないからでも、カインが弱いからでも、私が皇女だからでもない。
だというのにあれがあってからダメだと言い張るのだ。
「下級貴族や一般国民は冒険者を目指すそうです。私が皇女だからという理由のみで反対するのはおかしいと思います」
「どんな親でも娘は大切に思うものなの、それは変なことではないわ」
ルミニア母様もそんなことをいうものだから理解してくれない。
アーサー兄様はああ見えて父様と母様の味方なので助けてはくれない。
クリス兄様は諦めたほうが早く終わると思うといってくれた。
エメスト兄様はそしたらまた隠れてやればいいと言ってくれた。
しかし、そんなことをアーサー兄様が許すわけがない。
絶対あの時みたいに冒険者ギルドの入り口で待ち構えて連れて帰られたりするのだ。
「今回は私のミスでも私が自分を過信していたわけでもなく、自然災害の一種です。それでもダメなのですか」
「ダメだ」
「なぜですか」
「私の娘だからだ」
言い切った父様を見て私はげんなりした。
「私は父様の娘です。そんなの言われなくてもわかってます」
「なら冒険者は諦めてくれ」
「いやです」
これだけは譲れない。
「いい加減にしないか!」
「わかりました、では絶縁いたします」
私がそう言い切るとあたりはしんと静まった。
アーサー兄様もクリス兄様もエメスト兄様も驚いていた。
父様も母様も信じられない言葉を聞いたかのようだ。
「姉様どこかいっちゃうの?」
不安そうなマリーの声が聞こえ、振り返る。
「マリー、姉様はねいっぱいお勉強したいの。なのにお父様は許してくれないの」
間違ってないことを妹にいうとマリーはぷんっと怒ってアルフレッド父様を見ていた
「姉様いじめてるならマリーも許さないもん!」
「いじめてない…」
結局アルフレッド父様は許してくれなかった。
アーサー兄様もそれには賛成らしく、今まで味方だったアーサー兄様に裏切られた気分で悲しくなった
「そうですか、でも私はやめません。ではごきげんようアーサー魔導師様」
去り際に無表情で言い放つ。
なんでわかってくれないのかなと私はひとり悲しくなった。
今回のことは私が悪いわけではない、確かに何も言わなかったことは悪い。
それについてはしっかり謝った。
法律には皇女は冒険者になってはならないとはなかった。
下級貴族や一般国民は冒険者になるのだから誰でも何歳からでも登録はできた。
私はちゃんとランク相応のクエストしかしていなかった。
ちゃんと強い人がいる時しか危険なことはしていなかった。
お城では自分の腕を試すことができない。
いざという時に自分を守るためには経験が必要だ。
経験は座ってるだけでできるわけがない。
私はこの与えられたオーロラの力をなるべく人のために使いたい、私が強くなるだけで守れる人が増えるならそれの方がいい。
そう思わない陛下が、王妃が、アーサー魔導師が、どう考えても理解できない。
クリス兄様とエメスト兄様は私の気持ちも陛下と王妃の気持ちもわかるそうだ。
隠れてクリス兄様に聞いてみたら少し悩んでから口を開いた。
「マリーが冒険者になりたいって言ったらどうする?」
「マリーが?」
マリーは魔法は使えない、剣術もまだ習っている途中でそこまで強くもない。
年齢もまだ6にも満たない。
私にはリッシュがいてくれたが、マリーにはいてくれるだろうか。
いざとなったら自分のことを守れるだろうか…
「力があるのなら私は認めます」
「うーん…そうなるときっと根本が違うのかもね。僕なら止めるから」
「…?」
兄様は要するに愛してくれているんだといってくれていた。
「ではなぜ私は止めないんですか?」
「それはね、僕はレアが変な判断をすると思えないからだよ」
僕やエメストは陛下や王妃よりもレアを知ってるからね、と笑った。
「では、なぜアーサー魔導師様は止めるのでしょう…?」
私のことを知っているはずなのだ。知っているはずだし教えてるはずだからわかってくれるはずなのに。
「アーサー魔導師は冒険者より過酷な環境を知ってるからね、きっと連れて行きたくないんだよ。」
「なぜ…?」
「うーん…」
「簡単だよ。俺やクリス兄さんがレアを守れないのと同じ、アーサーさんがレアを守れないからだよ」
突然ひょこっと現れたエメスト兄様が悪戯っぽく笑う。
クリス兄様も私もびっくりしたら悪戯が成功したとにやにや笑って満足そうに行ってしまった。
「まあ、そうだね。僕やエメストはレアを守れない。でもレアなら平気だと思ってるけど…」
「けど?」
一呼吸おいて兄様は困ったように笑った
「アーサー魔導師はダークスピアローレベルの敵と戦うことが多い、それで何人もの部下を失ってきてるし本人も危険な目にあってきている。そんなところにかわいい妹を連れて行きたくないし来てしまったとしても守れる自身がないから諦めて欲しいんだよ。」
さすがにここまでしっかり言われれば理解はできるが、それでも私は守られるだけのお姫様でなんか居たくない。
陛下や王妃から愛されているのなら嬉しいけれど、その愛し方は嬉しくない。
私は自分の力で立って歩きたい。
私が強くなって亡くなる人が減るのならそれは本望。私は人の役に立ちたいのだ。
「まあ、レア落ち着きなよ、今はダメだってだけなんだから」
「今はダメなだけ?」
「うん、だってレアはまだ8歳でしょ?そんな急がなくていいよ」
8歳とは言われても、学院では自分の身は自分で守れるぐらいには教育される。
周りはこれからくる後継者争いに備えて人を殺す気でいる人もいる。
そんな中で8歳なんだからと言われても私にはわからない。
まだ子供なんだからという意味なのはわかるが、だからと言ってじっとしてるのは私ぐらいなものだ。
「じゃあ冒険に行く日だけ僕に教えてよレア、そうすれば僕が場所を知ってるから何かあったらすぐに行くよ」
どうしても諦める様子のない私にクリス兄様は言った。
それぐらいならと私は承諾し、私は結局冒険に行くことを諦めなかったのだった。




