救出
容赦ない雨がじわじわと体温を奪う。途中までは私は約束を優先していたが、よく考えなくてもそんな状況じゃないからとカインを側に寄せて障壁を作った。
最初はカインも驚いていたけれど、こういう時だからか安心して隣にいてくれた。
岩と岩が重なり合い、洞窟のような隙間がある暗い場所に二人で隠れていた。
時折聞こえる稲妻の音とスピアローたちの足音にびくびくと怯え、より密着した。
私は障壁やらなんやらで生きて帰れる自信が少しはあるが、カインはそうはいかないらしく震えていた。
大きな足音がして覗き見るとエンペストスピアローがおり、そいつは気に食わない岩を踏み砕いて歩いていた。
いつかここも壊されてしまうのではないだろうか。そんな不安が胸の中に広がった。
カインは今にも泣きそうで、私は彼の頭を抱き寄せて頭を撫で、平気だよ平気だよと声をかけてあげた。
嵐は弱まることなく辺りはさらに暗くなり、夜になりつつあることがわかった。
こんな場所で安心して眠れる訳もなく、私とカインは縮こまっていた。
けれど、寝ないと体力も持たない。
私は魔法を少し強く使い、障壁を強化した。
強化して強化して強化して…
と、近くでエンペストスピアローの咆哮が聞こえた。
刹那まばゆい閃光が辺りを一瞬で明るくし、私たちもその眩しさに目をつぶった。
「ーーー…ー…!」
遠くで聞こえた神言は聞き覚えのあるもので、それにはカインも驚いて嬉しそうにしていた。
あの声はリッシュだった。
「ー…ーー!」
そしてリッシュよりもより短い神言が聞こえた。
これにはカインは首を傾げていたが、私にはわかった。
アーサー兄様だ。
エンペストスピアローは夜はあまり得意ではない。代わりにダークスピアローが夜は活発だ。
しかしアーサー兄様は夜にエンペストスピアローを討伐する作戦に出たのだろう。
容赦ない魔法が打ち込まれているのがわかる。
私はカインの背中をさすりながらもう平気だと言った。
「だから、寝てていいよカイン。何かあったら私が守ってあげるから」
ようやく安心したのか疲れ果てたカインは私に抱きかかえられながら眠った。
私は岩陰から覗き見て、アーサー兄様とリッシュを確認すると神言を口ずさんだ。
「ー…ー…」
それはおまじないみたいなもので、自動回復力と総合的な能力を高めるものだ。
ついでにもう一つ魔力を分け与える魔法を唱え、私はここで休憩した。
魔力切れを起こすと目の前の障壁も崩れかねないからだ。
「アーサー様もリッシュも、その他の方も、どうかこの戦いで死にませんように…」
小さく祈りを捧げると魔力が少し削れ、私は胸が苦しくなった。
しかしその胸の苦しさもすぐに収まり、私は疲れて眠ってしまったのだった。




