フルブラント・S・セレシアン・レア・ドミニク
目を開けるようになった。どうやら本当に赤ん坊になっているらしい。
ではあの夢は夢じゃなかったのかと不思議な気分になる。
母親はピンクゴールドのゆるくカールした髪をしていて長さは胸下ほどまである、瞳はローズクオーツのような透き通った桃色、美しい女性だった。
父親はシルバーの髪を中程で一つに結んでおり、シャープな印象の顔によく似合う。瞳はブルーサファイアのように深く鮮やかな青をしている。
両者ともに20代ほどに見え、とても若い。
服装はどことなく中世のヨーロッパを思わせるレトロなものだった。
まあ、その時代のものよりは幾分か最新に見える。
不思議なことに、言葉が理解できた。
もしかしたら神がくれた”全能”のおかげかもしれない。
両親が美男美女なので”容姿”も期待できるし、その容姿は確実に”3K”の高身長もあるので美人になるのだろうと期待できる。
数日すると名前もわかった。フルブラント・S・セレシアン・レア・ドミニクというかなり長い名前だ。
レアは生前もそうだったので覚えやすい。
それ以外はさっぱりわからないが、名前なのだからしっかり覚えることにする。
母親はレア・ドミニクの部分がルミニアに変わっただけ、父親はアルフレッドに変わっただけだ。
私には兄が2人いるらしく、長男はクリスで次男がエメストだ。兄弟もとても喜んでくれていた。
最近は色々な人が会いに来る。立派な髭の人から腹が立派な人も。化粧が濃い人から本当に綺麗な人。それらは全て私の誕生を喜んでくれいるようで、なんだかとても嬉しい。
嬉しい思いが溢れてニンマリと笑った。するとそれをみた人もぱっと明るい笑顔になった。
小さいうちにたくさん体を動かしてみた。
筋肉のない体では将来太ったりして大変だと思うからだ。
どうせ寝転がることしかできない。無心で手足をバタバタさせる。
すると父であるアルフレッドが覗き込み、ガラガラを手渡してきた。
せっかくだからとダンベル代わりにもらい、ブンブン振る。
「ルミニア、レアがとても楽しそうで可愛いからおいで」
すると待っててと遠くから声が聞こえ、少し小走りに母がやってきて覗き込んだ。
「まあ、ご機嫌なのね」
母親の笑顔がはじけてとても眩しく見える。
父親はそんな母親の肩を抱いて寄せ、とても幸せそうだった。
こんな幸せな家庭に生まれたのだから、と生前のことを思い出す。
そうすると少し寂しくなる。
別に母さんが嫌いだったわけではないし、恩返しもまだ何もしてなかった。
そういえば父さんはどうなったんだろう、もしかして泣いたかな。
でも、いまさら思い返しても意味がない。
「あうぅ~」
「あら、どうしたのレア」
「笑っちゃって…ご機嫌だなレアは」
前回満足にできなかった親孝行をし、前回できなかった自分の幸せを必ず掴んでみせる。
そう心に誓ったのだった。